ハイパーパーソナライゼーション、アンビエント・インテリジェンス(環境知能)、生成AI。全米小売業協会が主催するリテール業界向けイベント、NRF 2025の来場者は、こうした今話題の言葉が飛び交うのを見聞きしたことでしょう。会場のテクノロジー展示をざっと見ただけでも、リテール業界の環境がかつてないスピードで進化していることを実感できます。新しいビジネスモデルの登場、顧客行動の変化、テクノロジーの急速な進歩は、今後の店員の役割やカスタマーエクスペリエンスに多大な影響を与えています。
ただし、これらのテクノロジーをビジネスにシームレスに統合し、信頼性とセキュリティを維持しながら運用するには、デジタルレジリエンスを考慮することが欠かせません。リテール業界では、ITが導入されて以来、イノベーションの推進や俊敏性の向上と、デジタルレジリエンスの確保とのバランスが課題になってきました。特に近年では、顧客の期待値変化により、リテール企業の成功にレジリエンスが重要な役割を果たすようになっています。NRFはSplunkにとって、リテール企業がイノベーションと進化のペースを緩めることなくレジリエンスを強化する方法を紹介できる絶好の機会となりました。
NRF 2025では、Cisco Storeのコンセプトを体感できるように、レジリエンスを中核に据えたデジタルファーストで拡張性の高いソリューションの数々を体験してもらいました。Cisco Storeは、シスコ、Splunk、パートナーのテクノロジーを統合した最先端のリテール環境であり、2カ所の実店舗、カンファレンスの出張店舗、グローバル展開のオンラインショップを展開しています。ネットワーキング、セキュリティ、オブザーバビリティなどの最新テクノロジーを紹介する実験的な店舗です。
このインタラクティブなブースの入り口では、ネットワークにアクセスするユーザーのエントリーポイントとして、Cisco Spacesのキャプティブポータルが設定されており、来場者はこの機能を介して店内のWi-Fiネットワークに接続します。ネットワークに接続したら、QRコードを読み取ります。すると、AIチャットボットが起動し、Webex Connectを通じて、デジタルメッセージアプリケーションからCafe Ciscoに自然言語で飲み物を注文できます。その後、Ciscoのクラウド管理型カメラであるMeraki Videoでのリアルタイム監視、ビルトイン分析(モーション検出、ヒートマッピング、入店者数)、Merakiダッシュボードとのシームレスな統合の様子を確認できます。
Webex Connectによるコーヒーのモバイル注文に関するリアルタイムのインサイト、および売上状況と運用メトリクス
次は、Splunk Cloud Platformです。NRFでSplunkはシスコファミリーの一員として、Cisco Storeのインフラやリテール向けのアプリケーションとサービスをSplunkプラットフォームに統合して、よりインテリジェントな運用を実現する方法を紹介しました。まずは、Webex Connect、Merakiインフラ、ThousandEyes、Shopify POS、Splunk Edge Hubなど、多数のソースからSplunkプラットフォームにデータを取り込みます。これらのデータを1つのプラットフォームに集約することで、Cisco Storeでは、ビジネスに関するすべてのリアルタイムデータを、Splunk Dashboard Studioで作成したカスタマイズ可能なダッシュボードにまとめて表示できるようになります。さまざまな情報が可視化されたこのダッシュボードで、売上状況や顧客行動に関するリアルタイムのインサイトを獲得したり、アラートをコンテキスト情報とともに受信したり、分散するリテールIT環境の全体的な健全性を把握したりできます。
すべてのチャネルで決済処理の信頼性とセキュリティが確保され、顧客がすばやく支払いを完了できているかどうかを確認するためのリアルタイム監視画面
オムニチャネルでビジネスを展開しているCisco Storeでは、Splunk IT Service Intelligenceを使って、実店舗とオンラインショップのKPIと各サービスを監視し、運用状況を包括的に可視化しています。また、ネットワークを介したエクスペリエンスの稼働率を維持するために、ThousandEyesのデータをプラットフォームに直接取り込んでいます。Splunkを導入したことで、Cisco Storeでは、AIドリブンのインシデント予測、検出、解決が可能になり、すべてのエクスペリエンスでIT関連の問題にプロアクティブに対応し、トラブルシューティングできるようになりました。機械学習を活用したインテリジェントなインシデント管理と予測分析によって、異常をすばやく検出し、動的しきい値によって、カスタマージャーニーに影響が及ぶ前に問題に対処できます。シスコの世界トップクラスのネットワークおよびセキュリティインフラと、Splunkの強力なデータ分析機能を組み合わせれば、このようなエンドツーエンドの可視化を実現できます。
Cisco Storeのオンラインショップと実店舗に関するSplunk IT Service Intelligenceのサービスマップと分析画面
そして、Cisco Storeツアーを締めくくるのはエネルギー消費監視です。これは、Merakiセンサーと、Splunk Edge Hubによる店内データのエッジ処理を組み合わせたものです。この2つのテクノロジーを組み合わせることにより、小売業者は実店舗の環境データ(室温、湿度、騒音レベル)をあらゆる面から監視し、サステナビリティの取り組みをはっきりと可視化できます。Splunk Edge Hubは、エッジでデータを処理して、運用に関するリアルタイムの価値あるインサイトを提供するハードウェアデバイスです。データを店舗側で処理し、重要なアラート、イベント、情報のみをWAN経由で送信するため、ネットワーク帯域幅の消費を抑えることができます。
各種デバイスの健全性、資産管理状況、電力消費量をエンドツーエンドで可視化し、実店舗全体のリアルタイムのインサイトを提供
NRF 2025を振り返ると、深く共感できる刺激的な議論や革新的なテーマがたくさんあった中で、1つはっきりしたことがあります。それは、リテール業界の将来は「従来の枠組みが一変する」変革の機会に満ちているということです。そして、シームレスでパーソナライズされた新たな時代のカスタマーエクスペリエンスを思い描くときに忘れてはならないのが、成功のための重要な基盤であるデジタルレジリエンスです。デジタルレジリエンスを強化すれば、エクスペリエンスの中断を回避し、機密データを保護しながら、進化し続けるビジネスニーズにすばやく対応するための俊敏性を獲得できます。これはセキュリティとオブザーバビリティの統合プラットフォームによって実現可能であり、リテール企業は自信を持ってイノベーションを推進し、リテール業界の新たな時代に成功を掴むことができます。
Splunkとシスコのリテール業向けソリューションについて詳しくは、Splunkのリテール業向けWebページとシスコのデジタルリテールソリューションWebページ(英語)をご覧ください。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、前園 曙宏によるレビューです。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。