あるオンラインショップで、サイトの訪問者数は多いのに売上は期待したほどではなく、顧客が購入を終える前にサイトを離れているようです。何が起こっているのでしょうか。顧客はなぜ商品を購入せずにサイトから出て行ってしまうのでしょうか。
その疑問に答えるのがリアルユーザー監視(RUM)です。RUMでは、ユーザーのすべてのアクティビティを監視して、ユーザーエクスペリエンスに関する重要なインサイトを獲得できます。たとえば以下の点を確認できます。
この記事では、RUMを活用してサービスのパフォーマンスを向上させ、ユーザーエクスペリエンスを全体的に改善する方法について説明します。
リアルユーザー監視は、さまざまなテクノロジーやツールを包含するアプリケーションパフォーマンス監視(APM)の一部です。多面的なAPMテクノロジーの中で、RUMは特にユーザーエクスペリエンスに重点を置いています。Webサイトでのユーザーのアクティビティを継続的に追跡して、ユーザーがサイトをどのように利用しているかを分析します。
簡単に言えば、RUMは実際のユーザーインタラクションからインサイトを引き出すためのテクノロジーです。提供しているサービスについてユーザーがどのように感じているかを理解できれば、サービスの改善方法が見えてきます。
eBayやAmazonのようなeコマースプラットフォームを運営している場合、RUMを使って以下のようなユーザーインタラクションを監視できます。
これにより、ユーザージャーニー内のボトルネックを特定して、アプリケーションのパフォーマンスを最適化できます。
(Splunk RUMの詳細と製品ツアーは、こちらからご覧ください)
RUMの目的は現状を知ることです。実際のユーザーを監視して、サイトやサービスの機能に関するインサイトを獲得します。また、エクスペリエンスを追跡することで長期的な傾向を明らかにすることもできます。
一方、外形監視では、シミュレーションデータを使って実際のサイト環境の最適なパフォーマンスを探ります。こうすることで、リアルタイムのトラフィックがなくても短期的な問題を見つけて修正できます。
これらのアプローチが最大の効果を発揮するのは、2つを組み合わせたときです。これにより、ユーザーエクスペリエンスの全体像を把握できます。また、長期的な傾向と現在のパフォーマンスの詳細を併せて分析できます。
RUMのメトリクスは、ブラウザ、Android、iOSの3つのプラットフォーム別カテゴリに分類されます。RUMの一般的なメトリクスには以下のものがあります。
これらブラウザ固有のRUMメトリクスを追跡することで、Webアプリケーションのユーザーエクスペリエンスに関するインサイトを得られます。
適切なツールを使えば、RUMはすばやくシームレスに行うことができます。一般的なRUMソリューションの仕組みは以下のとおりです。
この体系的なプロセスを通じて、現在のユーザーエクスペリエンスの有効な改善策が明らかになります。
RUMを活用して重要な問題を効率的に検出して解決することで、Webサイトのパフォーマンスを向上させることができます。Webサイトのユーザーアクティビティを監視する主なメリットをいくつかご紹介します。
Webアプリケーションをコンポーネント単位で測定できるため、エラーを見逃さずに検出できます。つまり、パフォーマンスをコンポーネントごとに詳しく調査することが可能です。その仕組みを簡単に説明します。
RUMでは、ストリーミング分析によってユーザーセッションを詳細に分析します。具体的には、ユーザーがサイトにアクセスしてから離脱するまでのユーザーセッション全体を捉え、分析します。モバイルアプリケーションの場合は、クライアントに関する属性とイベントの詳細なインサイトを得られます。たとえば以下の情報を確認できます。
複雑な分散システムでは1つの問題に多くの要素が関連します。RUMなら、そのすべての要因を分析できます。
RUMでは、使用しているテクノロジーに関係なく、すべてのコンポーネントを測定できます。すべてのユーザーセッションを追跡し、ユーザーが使用したリソース(画像や経路など)とそのパフォーマンスを記録します。これにより、ページ全体のパフォーマンスを分析し、問題を修正できます。問題が発生したときは、原因(コード変更や更新など)を究明することも可能です。
RUMでは、以下のメトリクスに基づいてユーザーエクスペリエンスの全体的なパフォーマンスと健全性を評価できます。
これらの評価を参考に、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、Webやアプリケーションの全体的なパフォーマンスを改善できます。
価値あるインサイトを提供する一方で、RUMにはいくつかの課題と制限があります。これらは特に、大規模なテクノロジー企業や政府機関で問題になりがちです。
RUMが最も効果を発揮するのは、分析対象となるデータが大量にあるときです。Webサイトのトラフィックや、日々の訪問者数が少ない場合は、正確な結果が得られません。RUMを最大限に活用するには、ユーザーが増えるまで待つ必要があります。
ツールの導入と保守は、特に大規模な顧客基盤を持つ大きな組織にとってはコストがかかります。そのため、導入前に、予算枠と監視で期待できるメリットを比較検討することが大切です。また、RUMを効果的に使い続けられるだけの財務的余裕があるかどうかも考える必要があります。
まとめると、RUMはトラフィックが少ないWebサイトでは効果がなく、大規模な組織では財務的負担が大きくなるということです。
(関連記事:支出と予算における資本コストと運用コストの違い(英語))
組織に最適なRUMツールを選ぶことは非常に重要です。ツールの選定時には、以下のオプションの有無を確認するとよいでしょう。
カスタムイベントを作成できると便利です。カスタムイベントは、ユーザーインタラクションの理解とワークフローの問題の特定に役立ちます。
たとえば、モバイルアプリケーションで30日間のフィットネスチャレンジを企画したとします。その場合、ユーザーがこの企画をどのくらい利用しているかや、チャレンジ達成前に離脱する理由を知りたいでしょう。
カスタムイベントを使えば、1日あたりのログイン数、完了したワークアウト数、未達成のチャレンジ数を追跡できます。これにより、ユーザーがどこで興味を失ったり困難に直面したりしているかがわかります。その結果に基づいて、問題のある部分を改善し、ユーザーエクスペリエンスを最適化できます。
(関連記事:ITイベントの分析(英語))
ツールの機能をテストして導入効果を確認できるデモアプリケーションが付属しているRUMツールがお勧めです。ツールの機能をよく理解すれば、アプリケーションの中でパフォーマンスが悪く、ユーザーエクスペリエンスに影響を与えている部分を効果的に特定できます。また、アプリケーションへの変更をテストして、実際に適用する前に監視の設定を調整することもできます。
チームが問題をすばやく察知して解決できるようにするために、学習リソースは重要です。次の例で説明します。
ある企業のデータベース管理者であるエイミーは、組織のデータベースシステムを保守して最適なパフォーマンスを維持する責任を担っています。エイミーが使用するツールでは学習リソースが提供され、フィルタリングオプションと、以下を含む一般的なエラーについて説明されています。
エイミーは、ツールのガイドを読んで、これらのエラーの特定方法と見分け方を理解しました。こうして、各種の問題をよりすばやく修正できるようになりました。
以上の点を考慮のうえ、情報に基づいて意思決定を行い、組織のニーズと目標に合った適切なツールを選択しましょう。
RUMを活用すれば、Webブラウザ、Android、iOSで動作するアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。これにより、ユーザーエクスペリエンスを改善し、ゆくゆくは売上の増加と顧客満足度の向上につなげることができます。
ひとつひとつのクリック操作、ページの読み込み、ユーザーインタラクションがサービスの評価を大きく左右する今日、RUMはパフォーマンスを把握し、改善して、デジタル時代に成功を掴むために役立ちます。RUMを戦略的に使用して、訪問者のエクスペリエンスを向上させ、コンバージョン率をアップさせましょう。
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