リジェネロン社：科学の力とSplunkで患者の人生を変える治療薬を開発

主な課題

リジェネロン社の科学者は、実験の状況、機器の状態、品質管理プロセスをリアルタイムで可視化できる柔軟で信頼性の高い監視システムを必要としていました。

主な成果

Splunk Cloud Platformを利用してラボ環境内の重要データを包括的に可視化するダッシュボードを作成することで、患者の人生を大きく変える治療薬の開発を加速させました。

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患者の人生を変える治療薬の開発は一刻を争う

リジェネロン社は、科学の力を活用して、視力低下の抑制、がんの治療など、重篤な疾患を抱える患者のために革新的な新薬を創出、開発しています。同社にとって、科学者やエンジニアが実験機器の状態や実験の状況をリアルタイムで把握できるようにすることは非常に重要です。以前の監視システムでは、科学者は実験機器に直接接続されたPCでしか実験の状況を確認できませんでした。その間、別の作業を行えず、実験の効率が低下し、命を救う治療薬の開発能力が制限されていました。さらに、品質管理(QC)を担当する科学者がサンプル分析プロセスでの問題や遅延を把握できず、サンプルを廃棄せざるを得ない状況が生じ、さらなる遅延につながっていました。

リジェネロン社は、科学者がラボデータにどこからでもアクセスして、QCのボトルネックを完全に把握できるようにするために、信頼性の高いリアルタイムの監視ソリューションが必要だと判断し、Splunkの導入を決定しました。現在では、実験中でも科学者が部屋を移動できるようになったほか、サンプルを優先度の高い順にテストできるようになり、難病患者のための創薬のスピードが向上しました。

成果

0件

重大なデータ損失の発生件数

800時間

機器のダウンタイムの総短縮時間

ほぼ完璧

パッチに関するコンプライアンス対応状況

重要なラボデータをすべての科学者の手元に

それを実現するのが、Splunk Cloud Platformを活用した独自のダッシュボードです。社内の機器の状態を1つの画面で確認でき、リジェネロン社のチームでは「Health TV」と呼ばれています。仕組みとしては、まず、科学機器に接続されたPCにユニバーサルフォワーダーをインストールします。ユニバーサルフォワーダーによって、機器のログファイルが収集され、Splunk Cloudに送信されて、インデクサー層に保存されます。その後、保存されたデータに対してほぼリアルタイムで複数のサーチを実行し、フィルタリング条件と共通言語モデルに基づいて機器の現在の状態に関するインサイトを生成してから、機器の状態をマップに重ねて表示します。

「Health TV」によって科学者はどこにいてもラボや機器の状況を包括的に把握できるため、オフィスで電話をしたり、メールに返信したり、必要な作業をしながら、実験の様子を観察できるようになりました。実際、「Health TV」の導入以来、科学者やIT担当者の介入が必要なくらいPCが不安定になってデータを喪失するような深刻な事態は起きていません。「Health TV」のおかげで、実験が順調に進んでいることを確認でき、急ぎのテストが完了したことがすぐにわかるため、科学者は安心して仕事ができるようになりました。

「顕微鏡、スライドガラスやピペットなど、すべてのデータがSplunkに取り込まれます」とリジェネロン社のサイバーセキュリティ監視担当アソシエイトディレクターであるKeith Keimig氏は説明します。「『Health TV』では機器の状態やエラーのステータスに関する共通言語を確立し、それに従ってラボのマップ上に情報を表示しています。そのため、科学者は必要な情報を簡単に確認できます。また、自分に関係のあるアラートをテキストメッセージ、メール、そして『Health TV』上で受け取ることもできます」とKeimig氏は続けます。たいした時間短縮ではないように思えるかもしれませんが、機器の前にいなくても実験の完了やエラーの発生を即座に把握できることで、実験にかかる時間が全体的に短縮され、より多くの実験を行う余裕が生まれました。「科学者の生産性が向上し、新薬の市場投入や開発の促進につながっています」とKeimig氏は評価します。

科学者の生産性が向上し、新薬の市場投入や開発の促進につながっています

Keith Keimig氏、リジェネロン社サイバーセキュリティ監視担当アソシエイトディレクター

機器のダウンタイム防止が患者の人生を変えることにつながる

「Health TV」によって実験の効率が向上したことで、機器の使用率も向上し、投資からより多くの価値を得られるようになりました。「Health TV」でのインサイト獲得と迅速なエラー検出により、ジェノタイピングラボの機器のダウンタイムが800時間も短縮されました。「昨年は、科学機器に接続されたPCで『死の青い画面』(ブルースクリーン)が35件発生し、ドライバーの更新によって修正されましたが、『Health TV』の導入前だったらおそらく長時間気づかなかったでしょう」とKeimig氏は言います。セキュリティ面でもメリットがあります。「Health TV」を導入したラボでは、パッチに関するコンプライアンスがほぼ完璧に守られています。

さらに、アラート状態になるずっと前に計画的なメンテナンスについて「Health TV」から通知があるので、重要なラボ機器のダウンタイム防止にも役立っています。「ダウンタイムのリスクが低減されたのは、問題をプロアクティブに追跡して未然に対処できるようになったためです」とKeimig氏は説明します。「たとえば、データの書き込み先となるハードドライブはディスクがミラーリングされています。一方のディスクでエラーや障害が発生しても、もう一方で運用が続けられます。以前は、この状態になっても気づけませんでした」。今回のプロジェクトでは、ITチームがチケットシステムを導入し、ディスクドライブでエラーが検出されたときはすぐに技術者が駆けつけてディスクを交換するようにしました。これにより、コストのかかる障害を防止して多額の費用を節約しただけでなく、患者の人生を変えることもある創薬のスピードと効率を向上させることもできました。

科学(そしてデータ)に命を吹き込む

「Health TV」は、リジェネロン社のQC製造施設の科学者にも利用されています。この施設では、サンプルが受け入れに関する厳しいしきい値を満たしているかどうかを評価しています。以前は、受け入れ可能と判断される前に、サンプリングや品質分析における問題や遅延を可視化できていませんでした。Splunk Cloud Platformを通じて「Health TV」を利用することで、QCホールドタイムをリアルタイムで監視して、重大な遅延の発生をすばやく察知できるようになりました。

「製造施設では、ラボと工場の中央画面に『Health TV』が表示され、分析待ちのサンプル数、到着予定のサンプル数、サンプルのSLA適合状況が信号機のような表示でわかりやすく示されます」とKeimig氏は説明します。「サンプルによっては寿命が24時間しかない場合もあります。サンプルを時間内に評価できないと、廃棄せざるを得なくなります」

ここでサンプルを1つ失うだけで、全体の運用に大きな影響をもたらします。「全体のプロセスが24時間、または次のサンプルバッチの準備が整うまで延びることになります」とKeimig氏は言います。「リアルタイムでテストの優先順位を判断してサンプルを評価できるようになったことはまさに革新的です」。Splunk Cloud Platformで提供されて「Health TV」に表示されたデータのクイックリンクからサンプルの待ち時間を確認できるため、ラボの技術者はすばやく問題を特定して解決し、適宜サンプルを廃棄できます。

サンプル評価テストのスピードと効率が向上すれば、がん患者により多くの治療法を提供できますし、心血管疾患、希少疾患、感染症との闘いも前進します。

「Health TV」の今後

「リジェネロン社に入社したとき、私はCISOから『科学者にSplunkを利用してもらう』という課題を与えられました。5年経った今、Research ITチームとIOPS ITチームは、科学者が抱えている問題を明らかにしながらSplunkの潜在的なユースケースを日々発掘しています」とKeimig氏は言います。今後のユースケースとしては、まず、AIを活用して、温度変化と湿度に基づいて冷凍庫の状態を予測することを検討しています。また、業務サポートの次の目玉として取り組んでいるのがモバイル版「Health TV」のリリースです。実現すれば、科学者は重要な実験の状況にさらに手軽にアクセスできるようになります。