2024年セキュリティの現状:競争が激化するAIの活用
先進的なサイバーセキュリティ対策を推進する組織がどのように課題を克服し、AIを活用してイノベーションを推進し、デジタルレジリエンスを強化しているかをご確認ください。
FCRM(金融犯罪リスク管理:Financial Crime Risk Management)とは、不審なアクティビティの調査と分析、脆弱性の根絶、組織の被害リスクを低減するための対策実施など、金融犯罪にプロアクティブに対応するためのプラクティスを指します。
世界中のあらゆる業界の組織にとって、効果的なFCRM戦略がかつてないほど重要になっています。ほぼすべての組織がオンラインでビジネスを行っているため、攻撃対象領域が広がり、サイバー脅威やサイバー犯罪の標的になりやすくなっています。攻撃者は、重要な財務データにアクセスし、その痕跡を消すために、よりステルス性が高く高度なアプローチを取り入れています。
Kroll社が実施した経済犯罪および詐欺に関するグローバル調査(2023年)によると、調査に参加した役員のうち60%が今後12か月で世界的な金融犯罪が増加すると見込んでいます。こうした状況で各組織は、社内外の脅威からデータを保護し、規制法を遵守することを義務付けられています。組織が金融犯罪を特定して対処するために必要な措置を講じない場合、数百万ドルから数十億ドル規模の厳しい罰金を科される可能性があります。
この記事では次の内容を取り上げます。
また、金融犯罪の被害に遭うリスクを軽減するための保護対策を確立する方法についても紹介します。
金融犯罪とは、簡単に言えば、自身の利益のために他の人や組織から金銭や財産を違法に奪う行為を指します。
重大な金融犯罪としては、以下のものがあります。
これらの犯罪は、外部の攻撃者によって行われることもあれば、内部の従業員(幹部レベルを含む)によって行われることもあります。
金融犯罪には、比較的軽微な犯罪行為も多く含まれます。上記の重大な犯罪に比べればコストや法的な影響は小さいかもしれませんが、以下の行為も金融犯罪に該当します。
金融犯罪の加害者も、単独の窃盗犯から影響力の大きい世界的な犯罪組織までさまざまです。
金融犯罪コンプライアンスは、組織が、所属する業界と組織自体に適用される内外の基準、ポリシー、規制に厳格に準拠するためのプロセスです。
1990年に米国財務省は、FinCEN (金融犯罪取締ネットワーク部局)を創設し、以下に挙げる金融犯罪コンプライアンスの枠組みを定めました。
金融犯罪は組織の収益に重大な影響を及ぼしますが、コンプライアンスの維持にもコストがかかる場合があります。LexisNexis社が行った調査によると、金融犯罪のコンプライアンスにかかる全世界のコストは、2020年は2,139億ドルだったのに対し、2022年には2,740億ドルに達しています。わずか数年で全世界のコストが28%も膨れ上がっているのです。
(LexisNexis社の2022年グローバル調査のまとめ)
金融犯罪の増加を踏まえると、コストはさらに上がると見てよいでしょう。
テクノロジーの目まぐるしい変化、金融犯罪の増加、規制の拡大といった状況の中、コンプライアンスの維持には困難がつきまといがちです。その一例として、最近の傾向によりマネーロンダリング防止(AML)コンプライアンスがさらに一層難しくなっています。
国連の試算によると、マネーロンダリングされる金額は世界のGDPの2~5%を占めており、これは現在の米ドルで2兆ドルに相当します。こうした背景から、組織は厳格なマネーロンダリング防止(AML)コンプライアンスに準拠する必要があり、違反すると重い罰則が科せられる可能性があります。
ただし、以下に挙げるような理由から、AMLコンプライアンスの達成はますます困難になっています。
AMLコンプライアンスを達成するためには、以下のことが必要です。
金融犯罪リスク評価は、金融犯罪に対する組織の脆弱性を分析する体系的かつ段階的なプロセスです。金融犯罪リスク評価は、以下の手順で進めます。
リスクを特定する:組織の複雑さ、現在参入している市場、提供しているサービスと製品、オンラインビジネスの量に基づいてリスクを洗い出し、文書化します。また、組織内で過去に起きたインシデントや、市場での以下の金融犯罪の増加状況を調べて、各犯罪のリスクレベルを見積もります。
リスクを文書化したら、組織にとっての脅威の度合いに基づいてリスクに優先順位を付けます。
リスクを緩和するための保護対策を確立する:組織内で特に脆弱な領域を特定したら、内外の金融犯罪を防止するためのセキュリティコントロールとシステムを計画します。以下のコントロールについて検討します。
コントロールをレビューして改善する:監査を定期的に実施して、現在のコントロールが新たなリスクに対応していることを確認します。市場や全体の環境の変化に応じて、新たな問題に対処してコンプライアンスを確保するための新しい手順とポリシーを作成する必要があります。
監視を行ってレポートを作成する:コントロールの効果を監視して、不審なアクティビティと、問題を解決するために実行した手順を文書化することが欠かせません。さまざまなコンプライアンス規制で適切なレポートの作成が求められるため、必要な情報をすぐに利用できるようにしておくことが重要です。
FCRMツールは、潜在的な脆弱性のプロアクティブな検出、アクティビティの継続的な調査、継続的なリスク評価、不審なアクティビティの管理と対応に役立ちます。主に以下のメリットがあります。
FCRMシステムは2つの面から金融犯罪対策をサポートします。まずは、多くのノイズを排除して、アナリストが金融犯罪防止のための戦略実行とコンプライアンス確保に集中できるようにします。また、可視性を向上させ、インサイトを提供し、不審な行動を検出したときはアナリストにアラートを送信します。
一般的な犯罪への対処におけるFCRMテクノロジーのメリットは以下のとおりです。
法律は、組織内で起きる金融犯罪の防止および対処策の先例を示します。まず取り組むべきは、どの規定が自組織に適用されるかを知ること、法律の変更を注視すること、そして関連する法律に対する認識を組織全体で高めることです。
以下のベストプラクティスは金融犯罪の防止にも役立ちます。
FCRMソリューションを選択するときは、組織のニーズによって最適なプラットフォームがほぼ決まります。そのため、ツールの調査を開始する前に十分なリスク評価を行う必要があります。選定の際には、以下の点を確認することをお勧めします。
顧客は安全でリアルタイムなオムニチャネル体験を期待しています。eコマースやデジタルデータトランザクションは金融犯罪リスクの評価と管理に関する新たな課題を生み出しますが、導入はもはや不可避で、先延ばしにすることも得策ではありません。
規制当局は、外部者の犯行であっても、組織の監視下で発生した金融犯罪は組織の責任とみなします。FCRMソリューションは、こうした脅威の特定、対応、防止を効率化し、規制がますます複雑化する中でコンプライアンスを維持するために役立ちます。
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