1 月末、報道関係者向けにシスコシステムズの2025年度事業戦略説明会が開催されました。当日は、私がプレゼンする時間も用意してもらい、シスコとSplunkがタッグを組んで、どんな世界を作り上げていくのかについて記者の皆様に発表することができました。
シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田 義之さんとは、よくお話しする機会があります。この業界の日本法人トップとしては珍しく技術者だけあって、知識の幅と深さが違います。営業出身の私とは得意分野が違いますし、誠実な人柄でコミュニケーションしやすいので、一緒に仕事を進める際に助けられることが何度もありました。
まずは、いまご紹介した濱田さんによる発表です。シスコの全体戦略を講演された中で、「組織をつなぎ、保護する」という言葉が印象的でした。多くをつなげることは、保護の難しさを伴います。しかし、いま私たちが働いている環境でつながることは必要不可欠です。つながった世界を保護するために、シスコはさまざまな投資をしていて、Splunkとの統合もそのひとつです。
「シスコはインターネット技術のパイオニアとして創業されました。現在はクラウドを含む幅広いソリューションを提供する企業になりましたが、その根底にあるネットワーク企業としての本質は変わっていません。進化する時代をリードするさらに超越したネットワーク企業であり続けることが、私たちの使命です。そして、ネットワークとセキュリティは不可分であり、優れたネットワーク企業は、卓越したセキュリティ企業でなければなりません。セキュリティを担保するためには優秀なAIが必要で、優秀なAIは洗練されたデータからもたらされます」
このお話は、確固たるネットワーク技術をベースに、シスコのビジネス領域すべてが結びついているという説明で、見事に腹落ちさせてくれました。
このお話で触れられたAI分野では、シスコは昨年9月にRobust Intelligence社の買収を完了させています。Robust Intelligenceは、ハーバード大学でAIの脆弱性について研究していた日本人の大柴 行人さんが、Yaron Singer氏と共同で設立した企業です。当日の発表会には、日本事業責任者が出席していて、プレス関係者からAI分野への質問があると、的確に回答されていました。
さて、濱田さんの次は、私の発表です。シスコ + Splunkの価値についてプレスの皆さんにお伝えしようと、まずは組織としてSplunkがどう進化したのかについてお話させていただくことにしました。
強くお伝えしたのは「これまで10年間Splunkで働いてきたけれど、ここまでイノベーションが急加速した1年間は初めてだった」ということです。シスコからSplunkに移管されたソリューションもあり、製品も人員も増えました。新製品や新機能は続々と出てきますし、既存機能の拡張も進んでいます。そのおかげで、パートナーと一緒に、いままで以上に付加価値提案型の営業活動ができるようになっています。
また価格体系も見直しています。従来のデータ量ベースではない、ワークロードベースの価格体系を選択するお客様も増えています。このライセンス体系でお得に拡張できる可能性については、また別のブログでご紹介します。
そのほかの最新状況として、以下のようなこともお伝えしました。まずは、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の登録を完了したこと。次に、Amazon S3やAmazon Security Lakeなどの外部データソースに対応し、セキュリティとオブザーバビリティの垣根を超えて全体を透過的に可視化するチャレンジがすでに一部結実していること。そして、既存のパートナー様と協業を深めることはもちろん、Cisco 360 Partner Programも活用し、エコシステムの拡充にも力を入れていくことです。
さらに、Splunk Cloud on Azureをリリースしたことも改めてお伝えしました。これは、Microsoft Azure上で、SaaSとしてSplunkを提供するという取り組みです。日本市場ではエンタープライズIT環境をMicrosoftで構成する企業が多く、意義の大きな発表ですから、追って詳しく説明します。
最後に、シスコとの統合でどのような世界を実現できるのかを具体的に解説するために、シスコ + Splunkのイメージを2つのスライドで紹介することにしました。
まずは、未来志向のSOCとAIセキュリティについて。AIが民主化されれば、AIのためのセキュリティが必要になります。生成AIであれば、生成AIを使った攻撃は出てきますし、生成AIを使うことで情報漏洩が起こることもあります。生成AIにおかしなことを教え込む攻撃も想定されます。AIはブラックボックス化しやすく、ガバナンスが効きにくいことが問題点で、それを防ぐSOCが必要になるでしょう。その仕組みを、シスコ + Splunkで実現します。
もう1つは、組織全体のデジタルレジリエンスについて。製造業などで基幹業務システムをSAP S/4HANAにマイグレーションしていても、その周辺で、その他の業務システム(製造業ならMES、流通業ならPOSなど)と有機的に連携しています。また、それらは複数のネットワークを介し、自社データセンターのオンプレミス、ハイパースケーラー、マルチクラウド環境となっているのが今日の一般的なシステム構成かと思います。
これらの重要なシステム群を、SaaSやネットワークを含めてエンドツーエンドに可視化・管理できるのはシスコ + Splunkだけです。説明会ではSAPを例に話しましたが、たとえばB2C企業ならユーザー向けのWebやモバイルアプリなどエクスペリエンスを中心にデジタルレジリエンスを考えることになるでしょう。シスコ + Splunkは、そうしたニーズに対してトータルにこたえられるソリューションを提供できるのです。
最後に、質疑応答の際に印象的だったお話があります。濱田さんが「新しいソリューションが続々と出てきてワクワクしています。すべてのソリューション領域において、Splunkとの統合は大きく寄与するでしょう」と話してくれたのです。Splunkで10年働いた人間としてうれしくもあり、同時に身の引き締まる思いでした。これからも、シスコ + Splunkは、より良い未来を実現するために、進化のスピードをさらに加速させて行きます。読者の皆様も、ぜひご期待ください。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。