ソフトウェアの開発分野には、オープンソースとクローズドソースという2つの主要ソフトウェアモデルが存在します。どちらのタイプにもメリットとデメリットがあるため、両者の違いを理解して、プロジェクトに適したソフトウェアモデルを選択することが大切です。
このブログ記事では、オープンソースを地域に伝わるレシピ本、クローズドソースを家族秘伝のレシピに例えて、両者の概念を分かりやすく説明します。
地域に伝わるレシピ本:地域で受け継がれているレシピ本があるとしましょう。誰もが自分のレシピを追加したり、既存のレシピにアレンジを加えたり、さらに美味しくする調理法について意見を書いたりできます。このレシピ本は、地域の人々の貢献によって徐々に内容が広がり、変化し、洗練されています。レシピをコピーすることも、自分の好みに合わせてレシピを変更することも、変更したものを他の人に紹介することも可能です。
オープンソースソフトウェア(OSS)も同じで、誰もが自由にソースコードにアクセスし、無制限に変更したり配布したりすることがライセンスによって許可されています。コードが公開されているため、開発者はさらに優れたコードを記述するよう奨励されています。そして、コミュニティでのレビューや目標の共有を通じてソフトウェアの品質は改善されていきます。
よく知られたオープンソースソフトウェアには、Linux、Mozilla Firefox、WordPress、Apacheなどがあります。
オープンソースソフトウェアは、個人の開発者と企業の両方に数多くのメリットをもたらします。主なメリットをいくつか紹介しましょう。
コラボレーションとコミュニティ:協調的なアプローチにより、さまざまなユースケースに対応した強力なソフトウェアが急速に開発されます。
透明性:ユーザーがコードの内容をチェックし、ソフトウェア製品の安全性と信頼性の向上に貢献できます。
柔軟性:オープンソースの自由な性質により、高額のコストや制約を気にすることなく、ソフトウェア製品を独自のニーズに合わせてカスタマイズできます。
コスト効率:ゼロコストで始められます。このため、誰にとっても利用しやすく、事業予算が限られている個人や企業にとっては魅力的な選択肢となります。
オープンソースには明らかなメリットがある一方で、次のような課題もあります。
サポートと文書:コミュニティによるサポートがあるとはいえ、正式なカスタマーサービスがないのが欠点となります。また、技術文書にすべての情報が含まれているとは限りません。
複雑さと断片化:コードの修正が自由なため、異なるバージョン間や派生製品間で断片化や互換性の問題が発生する可能性があります。
収益化に関する課題:開発者にとっては、ソフトウェアがオープンソースのままでは収益性の高いビジネスモデルを見つけることが困難です。
家族秘伝のレシピ:今度は、地域に伝わるレシピ本ではなく、家族で代々受け継がれている秘伝のレシピを思い浮かべてください。その材料や調理法を知っているのは家族だけです。家族の一員でなければ、調理法を変更することはもちろん、レシピを見ることすらできません。
その料理を振る舞われて味わうことはできても、レシピは厳重に守られたままです。
クローズドソースソフトウェアも同じです。ソフトウェアのソースコードは独占的な所有物であり、開発作業は個人または企業によって管理されています。ユーザーはソフトウェアを購入するかライセンスを得れば使用できますが、そのソフトウェアの設計を確認したり、変更を加えたりすることはできません。
よく知られたクローズドソースソフトウェアには、Microsoft Windows、Adobe Photoshop、Apple iOS、Splunkなどがあります。
クローズドソースソフトウェアの安全性と排他性は、企業と個人ユーザーの両方に次のような独自のメリットをもたらします。
安定性とサポート:クローズドソースソフトウェアは専任のチームやリソースに管理されているため、多くの場合、公式の更新プログラムが定期的に提供されます。また、通常は利用しやすい技術サポートが用意されています。このため、ユーザーはフォーラムや文書を自力で探し回らなくても、必要なときにすばやくサポートを受けられます。
ユーザーエクスペリエンス:使いやすさを重視して設計されているため、ユーザーの期待に沿った直感的なインターフェイスや機能が用意されていることが一般的です。
収益性の高いモデル:ライセンスやサブスクリプションが開発者の確かな収入源となります。これは、ソフトウェアの継続的なイノベーションとサポートにつながります。
このようなメリットの一方で、クローズドソースソフトウェアには、ユーザーと開発者双方のエクスペリエンスに影響を与える次のような課題もあります。
導入コストの高さ:ほとんどのクローズドソースソフトウェアで、ライセンスかサブスクリプションの購入が必要になるため、コストが高くなる傾向があります。
カスタマイズが困難:通常、オープンソースソフトウェアとは異なり、特定のニーズに合わせたソフトウェアの修正が簡単にはできません。
透明性と安全性:ソフトウェアのソースコードにアクセスできないため、セキュリティとプライバシーはベンダーに任せるしかありません。これが懸念となることもあります。
オープンソースソフトウェアとクローズドソースソフトウェアのどちらを選択するかは、予算、サポート要件、カスタマイズの必要性など、さまざまな要因によって変わってきます。どちらのソフトウェアモデルも開発の分野で独自の役割を持ち、さまざまなニーズや好みに対応しています。
オープンソースソフトウェアとクローズドソースソフトウェアのどちらを選択するかは、次の点を考慮して判断します。
ニーズに合わせて細かく調整できる柔軟なソリューションが必要な場合は、オープンソースソフトウェアを選択するとよいでしょう。一方、すぐに使用でき、安定して動作し、専用サポートが用意されている製品を優先する場合は、クローズドソースソフトウェアが適しているかもしれません。
オープンソースソフトウェアは、ライセンス料関連のコストを大幅に削減できるため、スタートアップ企業や予算が限られている組織にとって魅力的な選択肢となるでしょう。ただし、オープンソースプロジェクトによっては、カスタマイズとサポートに追加投資が必要となる場合があります。
一般的にクローズドソースソフトウェアでは初期費用が高額ですが、一貫したサポートを受けられるため、長期的に見ればコスト削減になる可能性があります。
(資本コストと運用コストの違いについては、こちらをご覧ください。)
クローズドソースソフトウェアの場合、ベンダーから専用のサポートやアップデートが提供されることが多いため、ITリソースが不十分な組織にとって優れた選択肢となります。オープンソースソフトウェアでは、コミュニティサポートや文書、それにセルフヘルプリソースを利用するしかありません。
開発者やソフトウェアのカスタマイズを検討している人にとっては、その柔軟性の高さから、オープンソースが最適な選択肢となるでしょう。これに対し、技術スキルがない場合や、特殊な機能を必要としている場合は、要件を十分に満たすクローズドソースソフトウェアを使用する方がよいかもしれません。
セキュリティアップデートの提供については、通常、クローズドソースソフトウェアの方がオープンソースより迅速です。一方、脆弱性の特定と対処という点では、コミュニティの協調的な取り組みと透明性が特長のオープンソースソフトウェアの方が迅速です。
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結局のところ、オープンソースソフトウェアとクローズドソースソフトウェアはそれぞれメリットとデメリットを抱えているため、選択にあたっては、組織特有のニーズ、リソース、好みを考慮して判断するのが一番です。
セキュリティと機密性が極めて重要な大企業の場合、管理された環境下でセキュリティ対策を調整できるクローズドソースソフトウェアが望ましい選択肢になるかもしれません。
一方、スタートアップ企業や予算が限られている組織の場合、コスト効率と柔軟性を活かしてカスタマイズや迅速な開発ができるオープンソースソフトウェアの方が適しているでしょう。
さらに、どのような業界標準やコンプライアンス要件に準拠すべきか調査することも重要です。以下に例を示します。
金融業界や医療業界では、機密データの管理を厳格化するために、クローズドソースソリューションが好まれる傾向があります。
テクノロジー系のスタートアップ企業や教育機関の場合は、協調的なアプローチや革新性からオープンソースが適しているかもしれません。
究極的には、どちらか一つに決めるのではなく、特定のニーズ、プロジェクトの要件、全体的なビジネス戦略に基づいてオープンソースとクローズドソースの中から必要な要素を個別に選択し、両者を組み合わせることもできます。
オープンソースソフトウェアは、地域に伝わるレシピ本のように、協力体制と透明性、および成果の共有によって進化します。開発者など、技術への関心が高い人にとって、オープンソースソフトウェアは学習、貢献、イノベーションの機会となります。この協調的なアプローチは、開発サイクルを加速させるだけでなく、知識を共有して改善に取り組む文化を育みます。
クローズドソースソフトウェアでは、家族秘伝のレシピのように、独占的に管理し、一貫性のあるエクスペリエンスを慎重に構築することが重視されます。サポートが保証された包括的なソリューションを求めている企業は、初期費用が高くても、クローズドソースソフトウェアに多くの価値を見出すでしょう。
さまざまなレシピを試すのが好きな人もいれば、家族で受け継がれた信頼できる伝統の味を好む人もいるように、どちらのソフトウェアも固有の役割を持ち、さまざまなニーズや好みに対応しています。
オープンソースソフトウェアとクローズドソースソフトウェアのどちらを選択するかは、革新性、管理性、コスト、安全性など、組織が何を優先するかによって大きく異なります。最終的には、組織の目標と価値観に合ったソフトウェアが最適な選択肢となるでしょう。
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