IIoTは「Industrial Internet of Things」の頭字語で、製造業、輸送業、エネルギー業などの産業分野におけるコネクテッドデバイスと高度な分析の活用を表します。
General Electric社は2012年、イノベーションの第3の波を表す「インダストリアルインターネット」という言葉を生み出しました(第1の波は19世紀の産業革命、第2の波は1950年代から1990年代にかけてのメインフレームコンピューターの導入)。今日、インダストリアルインターネットは第4次産業革命、すなわちインダストリー4.0を象徴しており、スマートデバイス、高度なデータシステム、物理ネットワークと人的ネットワークを連携させて、企業が運用効率を高め、ビジネス上の意思決定と成果を向上させることを可能にしています。
IIoTは、IoT(モノのインターネット)と呼ばれる、相互接続されたデバイスで構成される大規模なシステムの一部です。IoTでは、インターネットに接続し、人間の介入なしで他のデバイスのネットワークと通信できるものであれば、コーヒーポットから自動車まで、あらゆる物理的な対象物が「モノ」になり得るとされています。
IIoTのメリットは非常に多く、幅広い業界でさまざまに応用されています。企業は多様なネットワークに接続することで、ダウンタイムとメンテナンスコストの削減、生産量の増加、職場の安全性の向上を実現し、多くの場合、業務の状況をより的確に把握できるようになります。この記事では、IIoTがデジタルトランスフォーメーションでどのように活用されているかを含め、一般的な概念について説明します。
IIoTテクノロジーを導入すると、自動化されたインストルメンテーション、データの収集と分析、レポート作成、意思決定を生産工程にもたらすことができます。これを可能にするのが、スマートセンサー、ゲートウェイ、ソフトウェアプラットフォーム、およびクラウドサーバーが相互に接続されたシステムです。機械に搭載されたセンサーがデータを収集してゲートウェイに送信し、ゲートウェイでコネクテッドデバイスと、データセンターやクラウド上で実行されているアプリケーションやサービスを接続します。収集されたデータには、コンピューターやモバイルデバイスからアクセスできます。
IIoTは非常にさまざまな形で活用されており、より多くの業界で採用されるにつれて、新たな産業用途が登場しています。特に、以下のような用途で広く受け入れられています。
IIoTは、製造、農業、輸送、エネルギー管理などの分野でイノベーションを促進しており、今後数年間で他の業界にもさらなる発展をもたらすことが期待されています。
IIoTとIoTの違いは、大まかに言うとそれぞれの目的です。IIoTはさまざまな産業プロセスの改善に重点を置いているのに対し、IoTは消費者の利便性の向上を主な目的としています。それぞれを使用してどのように目標を達成するのかということに焦点を当てると、その違いをより詳細に把握できます。
IIoTは業界のニーズに合わせてカスタマイズできるという点において、他のIoTテクノロジーと一線を画します。また、IIoTデバイスには何よりも、極めて高い信頼性が求められます。ライトレールや配電網、さらには航空会社の荷物追跡装置などがオフラインになると、重大な結果を招くからです。そのためIIoTデバイスは、移動中のデータと保管中のデータを保護しながら、接続性を維持し、長期にわたって利用できるように設計されています。
さらに、産業現場に導入されるデバイスには、ERP、EAM、CMMSなどのさまざまなビジネスシステムとの連携機能が必要なほか、1日にたくさんの人々が操作できる必要があります。また、さまざまなプロトコルやデータ形式を考慮する必要があるため、従来の管理テクノロジーよりもデータ分析が困難です。つまり、頻繁に通信を行い、機能的役割ごとに異なるアプリケーションを搭載し、さまざまなアクセス権限を付与できなければなりません。
IIoTの導入は、より的確で戦略的なビジネス上の意思決定を促進するための投資です。そのため、IIoTシステムを採用する組織は、メンテナンスコストの削減、効率の改善、生産性の向上といった形でROIを達成する必要があります。
製造業は、IIoTを最も積極的に採用している業界の1つです。その主な理由は、このテクノロジーを導入することで、業界のさまざまな効率化が可能になるためです。IIoTを利用すれば、機器をリモートで管理し、リアルタイムで監視して、プロアクティブに保守できます。また、製品の状態、場所、状況の追跡もはるかに容易になります。製品の使用パターンもIIoTでより簡単に特定できるため、人気のある製品の生産を増やし、組織に悪影響を及ぼす前に、人気のない製品の生産を中止することも可能です。
今日の製造業においてよく活用されているIIoTのユースケースをいくつかご紹介します。
IIoTがMES (製造実行システム)に取って代わるのか、それともMESを補完するのかという問題は、いまだに議論されています。一部の業界関係者は、IIoTがいずれはMESに取って代わる、あるいはMESの最新化を推し進めると主張しており、MESシステムのほとんどが時代遅れで、工場に設置されたセンサーからデータをリアルタイムに収集する機能を備えていないと述べています。また、MESはデータの長期的な保存、AI、分析に対応した設計にもなっていません。その結果、データが収集されたとしてもサイロ化してしまい、工場の運用を包括的に可視化し、機械の故障やその他の障害を予測し、プロセスを最適化する能力の妨げとなります。
IIoTとMESの2つのシステムが補完関係にあると主張する人もいます。その理由の1つとして、MESが生成する製品データや保守データをIIoTで利用すれば障害を予測できる、ということが挙げられます。このシナリオでは、MESはセンサーを搭載していないデバイスの代理として機能し、IIoTシステムと通信します。また、MESで運用に関する情報をマッピングして保存すれば、IIoTを利用した施設の自律的な運用が可能となります。
この問題はまだ決着していませんが、IIoTソリューションの導入を考えているメーカーは、近い将来にMESの使い方を見直すことになるでしょう。
IIoTは、インダストリー4.0の重要な構成要素の1つです。
インダストリー4.0とは、この10年の間に産業分野で受け入れられた技術的進歩や導入された新しいアプローチを指す言葉です。この期間は業界内で、製造業における「第4次革命」と呼ばれています。第1次は、蒸気機関を動力とする製造プロセスの機械化でした。第2次は組み立てラインの導入と電気の登場、第3次はコンピューターの台頭と産業プロセスへの自動化の導入でした。そして、第4次産業革命は、IIoT、CPS (サイバーフィジカルシステム)、CC (コグニティブコンピューティング)、M2M (マシンツーマシン)などのテクノロジーや新しいプロセスを産業インフラに統合することと定義されています。
IIoTプラットフォームとは、産業プロセスと情報システムを接続するために連携して機能する一連のハードウェアとソフトウェアです。この中間層はさまざまなコンポーネントで構成されますが、少なくとも、ベースとなるソフトウェア(多くの場合はSaaS)、IoTデバイス、およびその2つを接続する物理ゲートウェイが必要です。
ソフトウェアもハードウェアも、数多くの個々の要素で構成されています。ハードウェアとして一般的なのは、スマートセンサー、IoTデバイス、HMI (ヒューマンマシンインターフェイス)、エッジデバイス、産業機械などです。ソフトウェアには、オペレーティングシステム、ランタイムシステム、クラウドベースソフトウェア、アプリケーション開発環境、データ可視化ツール、データ保存ツールなどがあります。また、鉄道会社や電力会社などの業種に特化して設計されたIIoTプラットフォームや産業用アプリケーションもあります。
IIoTプラットフォームの主な目的は、接続されたすべてのマシンとプロセスを一元的に管理しながら、運用全体を可視化し、状況やニーズの変化に応じて最適化するためのインサイトを収集する手段を提供することです。
IIoTは産業ビジネスの未来である
IIoTは、産業環境におけるビジネスプロセスの最も重要なトレンドの1つです。また、市場のスピードが増し、テクノロジーの変革がより頻繁に起こる中、IIoTは企業が俊敏性と競争力を維持するのに役立っています。
IIoTは、予知保全によるコスト削減、自動化を活用した新たな運用効率、持続可能なエネルギー消費、安全の改善による生産性の向上など、産業運用のほとんどすべての側面を進化させることができます。さらに、一元管理とデータ分析の集約により、これまでにない可視性をもたらします。IIoTを導入すれば、あらゆる産業環境で、新たなレベルのパフォーマンスと収益性を実現できるでしょう。
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