共同執筆者:Harald Lukosz氏、Javier Stillig氏(Bosch Rexroth社)
Nec temere, nec timide - 軽率になるなかれ、臆病になるなかれ
Fortes fortuna adiuvat - 幸運は勇者に味方する
風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる(アリストテレス)
混乱に対処し不確かな状況を乗り越えるための心構えについて、人々は昔から多くの格言を残してきました。このブログ記事では、製造業のレジリエンス強化、新しい市場トレンドへの適応、運用モデルの転換を支援するためにSplunkとBosch Rexroth社が共同で構築した次世代ファクトリーについてご紹介します。
製造業界にとってレジリエンスは特に新しい概念ではありません。新型コロナウイルスのパンデミック後、景気はV字回復を遂げました。しかし、その後の需要低迷により、世界製造業PMI (購買担当者景気指数)は再び右肩下がりで、生産高、購買量、在庫量ともに減少しています。
PMIが50を超えると景気拡大、50を下回ると縮小、50だと横ばいと判断されます。
2024年を見据えると、製造業にとって状況は必ずしも良いとは言えません。最悪の状況も予想される中で、混乱の影響から回復して生き残り、成長を続け、新たな運用モデルをすばやく導入するための鍵は、やはりレジリエンスにあります。
「顧客はどの色でも自由に選べる。それが黒である限りは」。かつてヘンリー・フォードが新しいT型フォードのユーザーオプションについて述べた有名な言葉です。当時は大量生産の時代であり、まったく同じ製品を大量に生産して可能な限り費用対効果を上げるという、規模の経済ならではの考え方が根底にあります。
その後、製造業界の状況は大きく変わり、主要なKPIとしてOEE (設備総合効率)を重視するようになります。こうして、可用性、パフォーマンス、品質の最適化を通じて効率を追求する時代が数十年間続きました。
そして今日、「個性化」が市場のメガトレンドになっています。たとえば自動車では、消費者が好みのボディーカラーを作ったり、内装を自由にカスタマイズしたりできるようになっています。また、Nike社は、色や素材、独自のテキストやシンボルなど、顧客がカスタマイズオプションを選択してスニーカーのデザインをパーソナライズできるサービスを提供しています。
こうした仕組みを実現するには、製造オペレーティングモデルをモジュール型およびアジャイル型に転換することで生産の柔軟性を高めて、費用対効果の高いマスカスタマイゼーションを可能にする必要があります。「Lot Size One(一品生産)」は現実のものになりつつあります。小ロットサイズ生産によって常に変化する顧客のニーズに対応することで、高度に個別化された製品の提供が可能になり、製造業がかつて夢見た個別生産が実現します。また、単位原価、故障率、機械の交換頻度も、数十年前と比べて大幅に削減できるはずです。
このような困難な時代に柔軟な生産体制を導入することは、純粋なビジネスの観点からも理にかなっています。ドイツの自動車部品メーカー、Brose社の新CEOであるPhilipp Schramm氏は、次のように述べています(出典:ハンデルスブラット紙)。
「生産体制の柔軟性を高めることが重要です。
高度に自動化されたラインで特定の顧客の要求に応えるやり方では、
注文量が十分でないと採算が合わないことが明らかになっています」
Brose社CEO、Philipp Schramm氏
SplunkとBosch Rexroth社は共同で、OT、IT、AI/機械学習を活用した、製造業のレジリエンス強化、新しい市場トレンドへの適応、アジャイル型のオペレーティングモデルへの転換を実現しようとしています。
Bosch Rexroth社は、スマートな機能を備え柔軟性に優れた現場施設、Intelligent Factory Floorを開発しました。この施設では、屋根、壁、床だけが固定され、それ以外はすべて、新たな受注品、生産方式、ビジネスモデルに合わせて変更できます。そのため、要件に応じて簡単に機械を再構成したり、生産ラインを拡大または縮小したりできます。
マルチカラーLEDを使った視覚化により、通路を柔軟に区画分けして、セーフティゾーンと物流エリアを定義できます。このIntelligent Factory Floorでは、内蔵のセンサーによって重量や距離などのデータが収集されます。
これらの豊富なデータソースは、Splunkのデータプラットフォームに取り込まれ、AI機能を使って分析されます。これにより、生産パフォーマンスを最適化および迅速化すると同時に、IT/OTのサイバーセキュリティ対策を含むセキュリティ態勢を強化できます。また、Splunk Machine Learning Toolkitを使った予知保全や予測品質管理などの予測分析も実行できます。このようにして、工場全体でコスト効率の高い「Lot Size One」生産を実現できます。
さらに、いくつかの革新的なユースケースも取り入れることができます。たとえばサステナビリティのユースケースでは、Bosch社のセンサーからエネルギーに関するメトリクスを取得し、内蔵のSplunk Sustainability Toolkitを使ってGHGプロトコルのセクター別計算ツールのデータと相関付けることで、製造活動によるCO2排出量(スコープ1)を算出できます。
「製造業のお客様のレジリエンス強化を支援することがすべてです。
Splunkのデータ分析プラットフォームと
Bosch RexrothのIntelligent Factory Floorを組み合わせて、
次世代ファクトリーの高度な機能を提供し、ビジネスを後押しします」
Bosch Rexroth社Intelligent Factory Floorプロダクトオーナー、Harald Lukosz氏
SplunkとBosch Rexroth社は現在、ロンドンのSplunk Immersive Experience CenterにIntelligent Factory Floorを展開して、次世代ファクトリーを実演する準備を進めています。公開を楽しみにお待ちください。
製造業の未来についてさらに詳しく知りたい場合は、以下のリソースをご覧ください。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、前園 曙宏によるレビューです。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。