マクロテクノロジーの動向は、リテール業界のあらゆる側面に常に影響を及ぼしてきました。カタログからの注文や現金のみの取引の時代から、パーソナライズされた常時接続のオムニチャネルエクスペリエンスを利用して当たり前のように非接触型決済を行う今日まで、リテール業界はその姿を大きく変えています。業界の中核的な構成要素にほとんど変わりがないものの、提供されるエクスペリエンス、アソシエイトの役割、消費者の期待は劇的に変化しています。そして再び、AIの時代を迎えている私たちに変化が訪れようとしています。
では、リテール企業と消費者は、この先の1年に何を期待できるのでしょうか。Splunkでは毎年、経営幹部や技術者が、ビジネス、セキュリティ、IT運用、エンジニアリングについて今後のトレンドを予測し、さまざまな考察をめぐらせています。Splunkによる2024年の予測は、エグゼクティブ編、セキュリティ編、オブザーバビリティ編の3つにわかれ、いずれもAIによる影響とその価値について考察しています。
リテール企業のリーダーが今後数年間のプレイブックを作成する役員会で、AIは瞬く間に主要なトピックになりました。効率と生産性の向上が何より重要であるというリーダーもいれば、提供するエクスペリエンスを差別化し、現代のビジネスモデルを大きく覆す新たな方法を見出すことが重要であるというリーダーもいます。リテール企業のビジネスや顧客に対するAIと機械学習の本格活用はまだ始まったばかりで、最初の一歩を踏み出したにすぎません。
Google Cloudは最近の調査で、リテール企業の意思決定者の81%がスピード感をもってビジネスに生成AIを導入する必要があると感じている、という結果を報告しています。そのユースケースは無限に存在しますが、意思決定者は、AIの導入によって今後1年間で最大の効果が得られると考えるいくつかの分野に焦点を当てています。こうした議論では、サプライチェーンの最適化、カスタマーサービスの自動化、店舗での作業効率化、不正行為の防止、パーソナライズされたエクスペリエンスなどのテーマが繰り返し取り上げられますが、その中でも特に重視されているのがビジネスレジリエンスです。IT部門の内外を問わずリーダーは、新たな脅威の台頭と、ビジネスを継続するシステムの重要性を認識しているため、レジリエンスは譲ることのできない優先事項となっています。
リテールのエコシステムは複雑で分散化が進んでおり、適切な商品を適切な顧客に届けるために多くのチャネルを利用しています。こうした多様な環境では、攻撃者がリテール企業に侵入する経路をAIが拡大してしまう可能性があり、攻撃対象が増加します。脅威が増えれば増えるほど、組織のセキュリティ態勢をさらに強化し、新しいAIツールを導入する必要性が高まります。その一方で、AIツールに反復作業や手間のかかる作業を任せることで、セキュリティ担当者をサポートすることができます。
業界で高い評価を維持しながら、ロイヤルティと顧客の信頼を築くことで、リピーターを増やすことができます。今後、AIによってプライバシーに関する懸念やセキュリティの問題が増えていくことを考慮すると、顧客のプライバシー保護は難しくなる一方でしょう。顧客データの漏洩は必ずと言っていいほど攻撃者の標的となります。AIはすでにディープフェイクやソーシャルエンジニアリング攻撃、なりすましなどの武器として利用されており、顧客は知らず知らずのうちに個人情報を不正行為者に渡しています。AIを使った「詐欺」のニュースが最近の見出しを飾っていることから、リテール企業は消費者が詐欺に遭わないように、クリックする場所、個人情報を提供するタイミング、購入する商品についてもっと注意するよう警告しています。
最後に、ランサムウェア、そしてリテール業界が近い将来に負うことになるかもしれない多額の費用についても触れておきましょう。1,000人を超えるリテール企業のIT部門の意思決定者を対象とした最近の調査では、回答者の54%が過去12カ月間にランサムウェアの標的になったことが明らかになりました。また、回答者の3人に2人が、ランサムウェア攻撃が発生した場合に失われたデータをすべて復元することにあまり自信がないと答えています。攻撃者によるゼロデイ脅威(パッチがまだ存在していない、新たに発見されたセキュリティ脆弱性)も増加しており、これらの結果は、リテール企業全体がランサムウェア攻撃に対する準備ができていないことを示すといえるでしょう。AIを武器にした攻撃者に対し、リテール企業のセキュリティ担当者の防御策を支援するには、新しいサイバーセキュリティ法に加えてランサムウェアに関するより厳格で懲罰的な法律を整備することが急務であることは明らかです。
リテール企業は、あらゆる面でイノベーションを起こし、顧客の期待を超えるために進化し続けています。店舗の最新化、パーソナライズされたオムニチャネルジャーニーによる顧客の嗜好の多様化、リテールを標的とする組織的な犯罪の増加と新たなセキュリティ脅威のすべてが相まって、経営幹部には大きなプレッシャーがかかっています。
私たちの周りで起きているリテールのイノベーションには、デジタルレジリエンスが必要であることは明らかです。リテール企業は戦略とガバナンスモデルに投資し、新しいテクノロジーが24時間365日シームレスに稼働できるようにしています。飛躍的な成長を遂げるために、AI投資をリテール戦略の中核として組み込む計画を立てるのにこれ以上良いタイミングはないでしょう。
監視ツールを戦略的なオブザーバビリティの実践の1つに統合することで、リテール企業はダウンタイムをより効果的に最小化し、カスタマーエクスペリエンスを向上させてロイヤルティを高めることができます。アプリケーションとアーキテクチャで生まれた新たな複雑性は、AI、自動化、OpenTelemetry(テレメトリデータ収集のためのオープンソースのベンダーに依存しないオブザーバビリティフレームワーク)を導入する良いきっかけとなるでしょう。長期的な互換性を維持しながら、新しい未活用のデータソースから価値を創出しようとしているリテール企業にとって、将来を見据えたテレメトリ戦略を持つことは今や不可欠です。実店舗を持つリテール企業は、POS、店舗のインフラ、マーチャンダイジングアプリケーション、キオスク、デジタルサービスなどの店舗システムを保護しながら包括的な可視化を実現し、脅威や混乱に対応しながら、適切な商品を適切な価格で消費者の手元に届けることに重点を置いています。単一プラットフォームで適切な可視化を行い、予測分析と自動化を活用することで、障害発生や顧客の不満を完全に防ぐことができます。
多くのリテール企業やクイックサービスレストランは、2024年にエッジコンピューティングに投資するプランを共有しています。実店舗が分散することで豊富なデータを持つエッジ環境が構築されますが、リテール企業はそれらのデータの解釈に苦戦しています。POSレジから顧客のデバイス、ゲスト用Wi-Fi、IoTデバイスなどに流れるデータには、見つけ出されるのを待っている宝物が隠されていることがよくあります。すべてのやり取りとすべてのトランザクションは、リテール企業が収益を増やし、顧客をリピーターにするための行動を促すための、新たなインサイトとテレメトリが詰まったデータストリームを作成します。一方でエッジコンピューティングは、リテール企業に新たな攻撃対象やセキュリティ上の課題ももたらします。脅威に先手を打ち、発生した問題を適切に特定するには、エッジ環境全体において、より高度なインストルメンテーションとセキュリティインテリジェンスを実現する必要があります。
世界中のリテール企業が今後数年間に向けたプレイブックを定めていく中で、未来に向けたレジリエンスは今日から始まります。2024年がどのような年になるのかをSplunkが考察した3編のSplunkの予測レポートをダウンロードしてご覧ください。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、伊藤 宣子によるレビューです。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
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