プロセスマイニングとは、組織内のイベントログシステムから利用可能な情報を抽出することで、実際のビジネス(業務)プロセスを検出、監視し、改善を図る分析手法です。
プロセスマイニングの基本は、リアルタイムイベントと実施されているビジネス(業務)プロセスの間の重要な関連付けを行うことです。組織の従業員たちが何をしており、実際にそれをどのように行っているかを知るために、ログのイベントデータを調べるというアプローチをとります。あるタスクやプロジェクトを完了するまでに必要となるステップを分析することで、その業務プロセスを自動的に構成し、可視化します。このデータは時間とともに蓄積されるため、業務プロセスの生産性と収益性を妨げるボトルネックや効率的でない要因をあぶり出すことができます。
このブログ記事では、プロセスマイニングが重要である理由や、業務プロセスの改善のためにどこでどのように使われるのか、組織にとってどのような価値が創出されるのか、そしてプロセスマイニングを導入する方法について説明します。
プロセスマイニングは高度なアルゴリズムを利用して現在のビジネス(業務)プロセスを可視化し、その合理化と改善を支援します。生産性向上につながる有益なインサイトが速やかに得られるため、顧客や収益に大きな影響を与える主要なビジネス(業務)プロセスの問題点が浮き彫りになります。
ビジネスに影響を与えている問題点を明らかにするには、プロセスマイニングを使用して、以下の主要な3つのKPI (主要業績評価指標)を分析します。
プロセスマイニングには、従来の「現状」分析に勝る大きなメリットがあります。それは、リアルタイムのイベントデータにアクセスできるという点です。さらには履歴データも見ることができるため、一連のイベントログを詳細に調査して、何が起きているのかをより深く理解できます。以前に同じ計算をするために使用されていた時間と手間のかかるデータインフラとは、明らかに対照的です。プロセスマイニングは従来のデータインフラを利用してトランザクションを分析する代わりに、あらゆるシステムの膨大なイベントデータを活用して以下のことを実行し、現在起きていることを可視化します。
以上のように、プロセスマイニングによってシステムや業務プロセスの現在の状態を把握できるだけでなく、より迅速かつきめ細やかに逸脱を見つけて軌道修正する方法が得られます。
プロセスフロー図の例。検索パフォーマンスが低下している場合にシステム管理者がどのようにトラブルシューティングするかを示している。
プロセスマイニングの用途は多数ありますが、Gartner社は代表的な例として、業務プロセス改善、ビジネスプロセス管理、監査およびコンプライアンスの改善、分析と検証、プロセスオートメーションの改善、戦略と運用の関連付けによるデジタルトランスフォーメーションの支援、IT運用リソースの最適化を挙げています。
可視性、インサイト、人材、適切なツールの不足が原因で業務プロセスに生じる数々の問題に対処するには、プロセスマイニングの技術が役立ちます。たとえば以下のような問題に対処できます。
ビジネスプロセスのフローチャートで、ビジネスプロセスの効率性と有効性を明快かつ正確に把握できる。
プロセスマイニングのアルゴリズムは、Rawイベントデータからプロセスモデルを推測する方法を決定します。アルゴリズムは、イベントログデータを相互に関連付けて傾向やパターンを特定したり、情報システムによって記録されたイベントログに含まれるメトリクスを集計したりするために使用されます。モデルをマイニングしたら、実際に使われている元のプロセスモデルと比較して適合性を確認し、より合理的で効率的なビジネス(業務)プロセスモデルを検討します。
プロセスマイニングのアルゴリズムを比較評価するベンチマーク基準として広く認められたものは特に存在しないため、特定の企業や業務領域に合ったアルゴリズムを選ぼうとしたときに悩むかもしれません。たとえば、まったく異なるシステムや異種混在データソースから取得したイベントを簡単に相関付けできるアルゴリズムは、質が高いと言えるでしょう。とはいえ、アルゴリズムごとに性質は異なります。元のモデルと同程度かそれ以上のモデルをマイニングするアルゴリズムを選択できれば、メリットを得られるでしょう。
プロセスマイニングは、既存のアプリケーションデータログから自動的に実際のビジネス(業務)プロセスを検出し、インサイトを獲得します。ログからは、プロセスモデルの生成とプロセスメトリクスの算出も自動的に行うことができます。タイムスタンプをもとに一連のイベントを分析することで、実際のプロセスを完全に再構成するとともに、非効率的な箇所やボトルネックなどの弱点を見つけて明らかにします。プロセスマイニングでは、アプリケーションで実行されてイベントログに捕捉されたあらゆるアクションのデータを利用できます。この利点を活かし、生成元アプリケーションに縛られない分析を行います。
プロセスマイニングは、あらゆる業界のあらゆる分野で、ビジネス(業務)プロセス管理とプロセス改善に使用できます。特に金融サービス、電気通信、ヘルスケア、小売業界など、ベースとして利用できるデータが豊富であるだけでなく、プロセスで逸脱が発生した場合に大きな影響が生じる業界で活用できます。
プロセスマイニングは、大規模なデジタルトランスフォーメーションの一環としてよく使用されます。というのも、ビジネス(業務)プロセスが抱える遅延や非効率性の本質を見抜く客観的なデータ主導のインサイトが得られるだけでなく、システムの運用をよりスムーズかつ迅速に、そして合理的にするためのプロセス改善に必要なインサイトも得られるからです。そのため、プロセスマイニングを活用することで、デジタルトランスフォーメーションで高い付加価値を得られる改善点を優先することや、デジタルトランスフォーメーションによって意図したメリットが実際に得られているかどうかを評価することができます。つまりプロセスマイニングは、デジタルトランスフォーメーションの投資対効果を最大限に高めるために不可欠なツールと言えます。
プロセスマイニングがもたらす主な利点は以下のとおりです。
ビジネス運用チームの最終的な目的は、運用計画をそのとおりに遂行することです。つまり、組織のシステムや主要なビジネス分野のために効率性と生産性を重視したワークフローを構築して、アナリストが定型的な問題に費やす時間を減らします。ビジネス運用チームはビジネス部門幹部と協力して、ビジネス運用の業績KPIを計測しながら有効性と効率性を向上させます。そして、逸脱を最小限に抑えるとともに、システム全体でオペレーショナルエクセレンスを実現できるようにします。既存プロセスの透明性を促進および向上させる必要もあるため、サービス品質、顧客満足、従業員の生産性、ビジネスおよび収益性の総合的な目標達成を脅かすボトルネック、離脱、エスカレーションなどの問題を検出できるよう、主要な業績指標を評価および監視します。
運用チームがプロセスマイニング技術を新しい革新的な方法で活用すれば、ビジネスプロセスに対する理解を深め、運用を減速させるボトルネック、異常、重複を迅速に検出することができます。このような問題を検出すれば、それらを排除してプロセスを迅速化できます。そのプロセスの時間が半分になることも珍しくありません。
プロセスマイニングは、分析の高度さと深さの点で、従来のビジネスインテリジェンス(BI)とは異なります。従来のBIはベースとなるプロセスについて事前知識があることを前提としており、集約的なメトリクスを繰り返し算出してレポート作成することに重点を置いていました。しかし、BIのダッシュボードは既知の分野における潜在的な問題をあぶり出すことはできるものの、未知の分野に対する可視性はほとんどありません。
一方でプロセスマイニングは、プロセスが常に計画どおり進むとは限らず、問題は事前に予測できないところに現れるという前提に基づいています。したがって、オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、プロセスが実際にどう行われているかを深く調べることが不可欠です。
プロセスマイニングに取り組む場合、まずは問題点を特定するところから始めて、対象となるデータを特定し、それからパイロットプロジェクトをスタートしましょう。どのようなプロセスマイニングプロジェクトでも、プロセス分析から始まります。つまり、ビジネスプロセスの現状を詳細に調査・分析し、問題点をとりまとめ、改善できることを特定します。
以下に、プロセスマイニングの価値を確認する際に有効な方法をご紹介します。
プロセスマイニングは単なるツールではなくパラダイムシフトであり、問題を発見して修復できるスキルを持つ管理者が必要です。現在進行中で影響範囲が広く、生産性と有効性を妨げているプロセスの問題に関しても、包括的かつ客観的な対処をするための議論を社内で始められるようになるでしょう。
企業はプロセスマイニングを使用することで数々のメリットを得られますが、そのためにはソリューションから価値を引き出す方法を理解する必要があります。プロセスマイニングが持つ潜在的価値に注目し、最も支援を必要としている分野を改善する方法を探りましょう。対象となる可能性の高い分野は以下のとおりです。
適切なプロセスマイニングソフトウェアを選ぶには、プロセス検出、適合性チェック、パフォーマンス分析および改善という3つの機能が優れたソリューションを探す必要があります。
組織の規模、ビジネスのニーズ、目標によって適切なプロセスマイニングソフトウェアは異なるものの、以下のことを可能にする機能を備えたソリューションを選ぶ必要があります。
組織がビジネスプロセスを評価、監視、最適化できることは、収益と顧客満足に直接影響します。だからこそ、すべてのビジネス目標に適合するプロセスマイニングソリューションを慎重に選ぶ必要があるのです。
組織がプロセスマイニングを活用してログデータを分析できるようになれば、業務プロセス改善の大きなチャンスが生まれます。複雑で肥大化したビジネスプロセスを抱える組織にとっては、特に効果的です。生成されるデータの量は急激に増えていますが、活用されていないケースが少なくありません。しかし、そのデータが収益力を上げるための新たなチャンスを生む可能性があります。ビジネスプロセスに関するインサイトが得られない、それどころかビジネスプロセスを完全に理解できていない状況では将来的に行き詰まるリスクがあります。そうなれば効率性、運用のパフォーマンス、さらには収益への影響は避けられず、大きな損失を被るかもしれません。
組織が必要としているのは、複雑でカオス化していたデータをリスクなしでスムーズにチャンスへと変えるアプローチです。そこでプロセスマイニングが役立ちます。何よりも重要なのは、分散していて無関係に見える情報を分析して相関付け、弱点を特定し、速やかにアクションをとるために適した方法だという点です。適切なプロセスマイニングツールを導入すれば、うまく機能しないプロセスをスプレッドシート上で何時間、何日、もしくは何週間もかけて分析する代わりに、今あるデータを有効活用して、さらなるビジネス価値を引き出せます。組織内でカオス化していたデータを扱うという気が重い作業から脱却し、効率的な方法を導入して、何倍もの成果を手にしましょう。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳です。
この記事について誤りがある場合やご提案がございましたら、ssg-blogs@splunk.comまでメールでお知らせください。
この記事は必ずしもSplunkの姿勢、戦略、見解を代弁するものではなく、いただいたご連絡に必ず返信をさせていただくものではございません。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。