ITSM (ITサービス管理)は、組織とその従業員、顧客、ビジネスパートナーへITサービスおよびサポートを提供するための戦略です。その主眼は、エンドユーザーが何を期待しているかを理解し、ITサービスとその提供方法の両方を改善していくことにあります。
コンピューターが世に現れて間もないころ、コンピューターに問題が生じたときに従業員が頼りにしたのは、社内のIT部門でした。しかし、時を経て企業のコンピューターのインフラが劇的に拡大し、従来のIT部門ではその規模に対応していくことが難しくなったことで、1980年代初期に正式なサービスデスク、すなわち「ヘルプデスク」モデルが登場しました。
1989年には、ITSMのベストプラクティスがITIL (Information Technology Infrastructure Library)として初めて体系化され、それまで受動的だったITサービスを、ビジネス全体のニーズに沿ったプロアクティブな機能へと転換しました。その後、企業ではCOBIT、Six Sigma、TOGAFなど、数々のITSMフレームワークが採用されてきていますが、ITILは今でもデファクトスタンダードのフレームワークとして健在です。
ITSMは、業務を合理化し、多くのサービス要求を自動処理して、業務の効率と即応性を高めます。さらに、従業員の生産性を引き上げ、カスタマーエクスペリエンスを改善し、ユーザー満足度を向上させることで、結果的にビジネスによりよい成果をもたらします。ここでは、企業が活用できる各種ITSMツールとフレームワーク、ITSMがもたらす多くのメリット、そしてITSMの実際の導入方法についてご紹介します。
ITSMフレームワークには、ITサービスの導入と管理を効率よく行うためのプロセスとポリシーがまとめられています。代表的なフレームワークはITILですが、Microsoft Operations Framework (MOF)、Control Objectives for Information and Related Technologies (COBIT)、Business Process Framework (eTOM)もよく使用されています。
それぞれのITSMフレームワークには数十ものプロセスが定義されています。たとえばITILには、3つにグループ分けされた、34のITサービス管理プラクティスが含まれています。一般的なプロセスは以下のとおりです。
ITSMフレームワークには、上記をはじめとするプロセスがあらかじめ定義されており、既存、新規の両ITサービスを運営し改善していくための枠組みとガイドラインが示されています。すでに数多くの組織が実際に試した方法を踏襲できるため、独自のプロセスをゼロから構築するよりも効率的かつ低リスクです。
ITSMがITサービスおよびサポートにもたらすメリットには、以下のようなものがあります。
ITSMとITILは同じ意味で使用されることもありますが、実際にはそれぞれ別の目的を持つフレームワークです。
ITSMとは、ITサービスの提供に関連して、組織が人、プロセス、テクノロジーをまとめて管理するための手法を意味し、その対象範囲はITサービスのライフサイクル全体、つまり設計や開発から、デリバリー、サポート、保守にまでにおよびます。範囲の広さに伴ってタスクも多く、ITシステムの計画と管理から、ITの問題の修復と防止、IT予算の管理など、多岐にわたります。そのため、ITSMは単なるITサポートを超え、ビジネス価値の実現に貢献します。
一方、ITILはベストプラクティスのフレームワークであり、組織がITSMに取り組む際の手引きとなります。その目的は、ITを戦略的なビジネスの目標とニーズに結び付け、効率的なサービス提供を実現することで目標の達成につなげることにあります。最新版であるITIL 4のプロセスは、最近の働き方の変化や、アジャイルおよびDevOps方法論の普及、デジタルトランスフォーメーションのニーズに対応しており、具体的には、コラボレーションの強化、サイロの抑制、組織全体のコミュニケーション向上が奨励されています。
ITILは現在でも代表的なITSMフレームワークであり、組織に以下のメリットをもたらします。
ITSMとITILは明らかに重なる部分がありますが、この2つは別々の、相互に補い合うコンセプトです。簡単に言うと、ITSMは1つの独立した分野のフレームワークであり、ITILは組織がITSMを成功させるための補助を提供します。
ITSMとDevOpsはどちらもテクノロジーを開発および管理する手法ですが、表面的にはアプローチが大きく異なります。ITSMは、反復可能なフレームワークと明確に定義された役割および責任を用いて、サービス提供ライフサイクルに標準化とガバナンスをもたらします。一方でDevOpsは、ソフトウェア提供における速度、俊敏性、サイロ解消に重点があります。DevOpsはコラボレーション、透明性、オープンなコミュニケーションといったコアバリューを重視しますが、その手引きとなるベストプラクティスは正式に文書化されていません。
このことが原因で、ITSMとDevOpsでできることや、この2つを両立させる方法、または両立できない理由に関して、多くの人が誤解をしています。以下は、よくある間違いの例です。
ITSMとDevOpsはどちらか一方を選ぶものではなく、互いに補い合うプラクティスであり、どちらもビジネス価値をもたらすものとして考えるべきです。高いパフォーマンスを実現している組織は、ITSMのプロセス管理とDevOpsのスピードおよびコラボレーションを両立させ、双方のメリットを引き出しています。
ITSMにおける変更管理は、テクノロジーインフラに変更を行う際に、移行によるITサービス中断を最小限に抑えるためのプラクティスです。文書化した正式な変更管理プロセスにより、すべてのサービス提供者と関係者を連携させます。また、変更が適切に開始されなかった場合は、変更をロールバックできます。
ITIL4では、3種類の変更が定義されています。
これらの変更を管理するために、明確に定義された一連の変更実装手順を遵守します。この手順は、ワークフローを中断せず、ユーザーと管理者が困惑することなく変更を実装できるように定義されています。
ITILのガイドラインでは、変更管理は通常、ユーザーが生成する変更要求(RFC)によって開始されます。変更が提案されるとIT組織がそれを評価して、変更の種類や緊急度を判断し、計画されている他の変更を考慮してスケジュールを検討します。
そして、適切な意思決定者に変更の許可を申請します。多くの場合はここで、変更諮問委員会(CAB)による変更の評価、優先順位付け、承認も行われます。
承認されなかった変更は、後で更新して、承認を再申請できます。必要な承認をすべて得た変更は、リリース管理チームがテスト、統合、導入を行います。実装後は変更管理チームがフォローアップし、変更が期待された成果を上げているか確認します。
ほとんどのITSMツールが何十ものメトリクスを追跡しますが、データは、結局のところ、ITサービスの管理者がITサービスチームのパフォーマンスを把握するためのものです。その点で言うと、特に重要なのはこれらのメトリクスです。
ITSMにおけるワークフローの自動化やその他のAI実装は、以下のようにさまざまなメリットがあります。
ITSMプロセスの確立に必要なものがフレームワークであれば、プロセスの支援に不可欠なものはITSMツールです。ITSMツールは、ヘルプデスク管理にとどまらず、ITプロセスの簡素化にも貢献します。ソフトウェアプラットフォームによって、資産の発見、チケットシステムの保守、問題の追跡と解決、サービス提供の改善機会の発見がしやすくなります。機能はプラットフォームによって異なりますが、ITSMツールとして効果を発揮するには、少なくとも以下の機能が必要です。
ITSMツールを選定する際は常に、特定の機能セットを求めるよりも、組織のニーズを優先すべきです。そのためには、ビジネスに不可欠なサービス提供とサポートのプロセスを明らかにし、自動化やセルフサービス機能で効率化できる箇所や、難しさが解消されたり、ユーザーエクスペリエンスの向上が見込める部分はどこなのかを見極めることが重要になります。
今や、どのような組織にもITは欠かせません。これまで組織は、相互に連携しない複数のシステム、その場しのぎのプロセス、非効率な作業負荷のせいで、ユーザーのニーズに応えていくことに苦労してきました。ITSMは、明確な役割、反復可能なプロセス、ワークフローの自動化によって、ITに統一性をもたらし、結果として、ITサービスとその提供の管理および即応性を向上させます。新しいアプローチを導入する際に文化の転換が求められるのは、ITSMの場合も同じです。しかし、ITSMがユーザーとビジネスにもたらす価値は、その困難をはるかに上回るでしょう。
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日本支社を2012年2月に開設し、東京の丸の内・大手町、大阪および名古屋にオフィスを構えており、すでに多くの日本企業にもご利用いただいています。
© 2005 - 2024 Splunk LLC 無断複写・転載を禁じます。
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