公開日:2021年2月1日
ITOps (IT運用)とは、組織のIT担当者が管理し、社内外のクライアントに提供するプロセスやサービスを指します。ITOpsは、アプリケーション管理、技術管理、サービスデスクと共に、ITIL (Information Technology Infrastructure Library)のIT運用管理フレームワークに定義された4つの機能のうちの1つです。
コンピューターを使用するあらゆる組織には、従業員やクライアントのITニーズに対応するための手段があります。ただし、その手段をITOps (IT運用)と呼ぶかどうかは企業によって異なります。一般的な企業環境では、ITOpsはIT部門内の1つのグループとして存在します。ITリソースの構成は組織によって異なりますが、ITOpsチームは一般的に複数のITオペレーターで構成され、IT運用マネージャーがITOpsのあらゆる活動を監督します。
ITOpsは、ビジネス目標の達成において重要な役割を担っています。その中でも、ITエコシステムの安定性と信頼性を維持し、組織の従業員や経営幹部がITを活用してビジネス成果を達成できるようにすることがITOpsの重要な任務です。
しかし、データセンターからクラウドへとビジネスの移行が進む中で、その役割をどのように果たすのかも変化しています。この記事では、このクラウド時代にDevOps、NoOps、CloudOpsの登場によって従来のITOpsがどのように進化しているか、自動化を通じてAIOpsがIT運用をどのように強化できるか、さらにはITOpsが現代のクラウド環境にどのようなメリットをもたらすかについて説明します。
IT部門には、組織のビジネスプロセスを支えるサービス、システム、インフラを広範囲に管理するという任務があります。そのためIT運用は非常に重要です。また、組織全体で安定した運用を維持すると同時に、ビジネスを次のレベルへと進めるための新たな取り組みをサポートするという任務もあります。
ITOpsチームは、テクノロジーに関する高度なガイダンスを提供するだけでなく、組織のITインフラを維持するための日常業務も行います。その業務は各組織のニーズやリソースに応じて異なるため、画一的な「ToDoリスト」を作成しても役に立ちません。ただし、ITOpsの機能は3つの重要な責任領域に分類できます。それぞれのITOpsチームが、どのタスクをどれだけ担当するかは組織によって異なります。そのタスクには、次のようなものがあります。
ネットワークインフラ:
サーバーとデバイスの管理:
コンピューターの運用とヘルプデスク:
これらの各領域において、ベンダーや外部請負業者との連携や管理、ネットワークおよびそのアプリケーションに使用されるすべてのハードウェア、ソフトウェア、サービスの調達と支払い、ネットワークの健全性とパフォーマンスを維持するためのプロジェクト管理およびアップグレードと修正プログラムの導入についても、ITOpsチームのメンバーが行います。
ITOps、DevOps、NoOpsは、組織のITチームを構成するための3つの異なるアプローチです。それぞれに異なる責任と目標があり、ITOpsとDevOpsのワーキンググループはどちらも企業に広く採用されていますが、NoOpsの大部分はまだ理論上の存在です。それぞれの特徴と、互いがどのように関係しているのかについて詳しく見てみましょう。
ITOps:ITOpsの範囲は広く、時として漠然としているため、ITに関するあらゆるものが対象であると思われがちです。ITOpsの業務が組織によって大きく異なるのは事実ですが、どのような場合でも、ビジネスに必要なテクノロジーを提供して管理するという責任を負っています。実際、ITOpsにはネットワークの保守、データセンターの管理、セキュリティと規制コンプライアンスの確保、ヘルプデスクの運営、ソフトウェアのライセンス付与と管理など、従業員の日常業務をサポートするさまざまなタスクが含まれます。ここで注意したいのは、プログラムやアプリケーションの開発とそれに関連するタスクは含まれていないことです。
DevOps:DevOpsとは、開発と運用の間で人、手法、ツールを連携させることにより、チーム間の分断を防ぐITデリバリーのためのアプローチです。ただしDevOpsには、社内外で使用するカスタムアプリケーションの開発、実装、保守を担う別の役割もあります。
その名前が示すように、DevOpsは開発とIT運用の役割を1つにまとめたものです。DevOpsの一連のプラクティスに従うことで、アプリケーションやサービスの開発を加速できます。さらに、ITインフラ管理の対応を迅速化することで、変化の速い現在の市場に対応しながらIT製品の導入と更新を行うことができます。
ITOpsとDevOpsは、正反対の異なる原則の上に成り立っています。ITOpsは、基準や規制要件に準拠した安全かつ安定したインフラを確保するという役割を担っており、リスクを最小限に抑える正確なアプローチを好みます。一方でDevOpsは、ソフトウェア開発のライフサイクルを短縮し、市場投入までの時間を短くしながらアプリケーションに最新の技術を導入し、最適化することを重視しています。
当然ながら、これらの異なる原則が対立することもあります。インフラの開発や保守に対するITOpsの確固とした線形アプローチでは、変更をすばやく実装することができず、開発プロセスを遅らせます。DevOpsにはスピードが求められるため、時間的な制約からDevOpsチームがITOpsに対応せざるを得ない場合もあり、システムのセキュリティや安定性にリスクを与える可能性があります。そのため、DevOpsアプローチでは、開発チームがデリバリー目標を達成できるように、ITOpsが責任の一部を放棄し、他の責任をDevOpsと共有する必要があります。
NoOps:NoOpsは「No IT Operations」の略で、DevOpsを進化させ、ソフトウェア開発環境からIT運用を完全に排除したものです。NoOpsの支持者は、インフラの保守作業は完全に自動化可能であり、社内のITOpsチームは不要になると主張しています。NoOpsはプラットフォームではなく、その実現にはAIや機械学習などのいくつかのクラウドテクノロジーを利用します。
NoOpsの支持者は、NoOpsには以下のような潜在的なメリットがあると言います。
現時点では、NoOpsは実用的なソリューションというよりも、まだ概念に近いものです。ソフトウェアのライフサイクルプロセスからITOpsを排除すると、開発者に過大な責任が生じ、生産の妨げになると考える人もいます。また、現代のシステムの複雑さを考えると、ITOpsのすべての機能を自動化することは単に現実的でないという意見もあります。近い将来、運用の一部は自動化されますが、その他の部分は必然的に人間が行うようになる可能性が高いでしょう。
CloudOpsとはCloud Operations (クラウド運用)の略であり、クラウドコンピューティングのインフラサービスを管理し、社内外のユーザーに提供するプロセスを意味する幅広い用語です。CloudOpsの目標は、クラウドコンピューティングプラットフォームとそこにあるアプリケーションおよびデータを、長期にわたって健全に機能させることです。CloudOpsは継続的な運用に依存しています。これは、クラウドベースのシステムを実行するDevOpsアプローチから、アプリケーションの一部またはすべてをサービスから削除する必要性を取り除いたものです。CloudOpsでは、運用を自動化してダウンタイムゼロを維持する必要があります。CloudOpsが誕生したのは、以下のようなクラウドベースシステムに固有のさまざまな特徴に対応するためです。
CloudOpsは、クラウドベースシステムの運用のプラクティスとプロセスを形式化することで、このようなクラウドの特性を最大限に活かすことを目的としています。詳細は組織ごとに異なりますが、CloudOpsは通常、リソース管理、脅威対策、コンプライアンスといった従来のITOpsと同じ運用の問題に対処し、DevOpsがスピード、セキュリティ、運用効率を確保しながら、クラウドを最大限に活用できるようにします。
オブザーバビリティとは、システムの出力を通じてシステムの状態を測定することです。この言葉は元々、自己調整システムについて説明し理解するための制御理論に由来しますが、分散型ITシステムのパフォーマンス向上のために使われることが増えています。この場合のオブザーバビリティは、メトリクス、ログ、分散トレーシングの3種類のテレメトリデータを使用して分散システムを詳細に可視化し、さまざまな疑問の解消やシステムのパフォーマンス向上につなげることを意味します。
企業の間では、マイクロサービス、サーバーレス、コンテナとして提供されるクラウドインフラサービスの導入が急速に進んでいます。このような分散システムでは、イベントの原因を追跡することは非常に困難です。オブザーバビリティは本来、現代のシステムをより監視しやすくするもので、複雑に依存するコンポーネントを特定してつなぎ合わせ、根本原因までさかのぼることができます。さらに、システム管理者、ITOpsアナリスト、開発者など、あらゆる役割の人々がアーキテクチャ全体を可視化できます。この機能は現代のマイクロサービスには欠かせません。
オブザーバビリティが必要なのは、複雑なシステムをより適切に管理するためです。シンプルなシステムは可動要素が少なく、安定性の管理が容易です。一方、分散システムは、相互に接続する要素がはるかに多いため、発生する障害の数と種類も多くなります。また、分散システムではシンプルなシステムと比べて「未知の未知」が増えます。監視は「既知の未知」が前提であるため、このような複雑な環境での問題の診断はさらに難しくなります。
探索的アプローチであるオブザーバビリティは、問題が発生したときにシステムの動作について質問できることから、分散システムの予測不可能性への対応に適しています。「なぜXが故障したのか?」、「現在起きている遅延の原因は何か?」、「この問題は現在すべてのAndroidユーザーに影響を与えているのか、それとも一部のユーザーだけか?」などは、オブザーバビリティによって効果的な答えを得られる質問のほんの一例です。
AIOpsはAI (人工知能)によるIT運用の略であり、AI分析や機械学習を応用してIT運用の自動化や改善を実現します。
ネットワークの拡大と複雑化が進む今日、IT運用によるネットワーク管理は一段と難しいものになってきています。もはや従来の運用管理ツールや手法では、これらの多様化したネットワーク環境内のさまざまなソースから生成される大量のデータに対応できません。AIOpsはこれらの課題に対応するために開発されたもので、クラウド環境における2つの大きなメリットを提供します。
1. 複数のソースからデータを取り込む。従来のIT管理ソリューションは静的な物理システム向けに設計されており、ほとんどの企業が使用しているオンプレミス、プライベートクラウド、マネージドクラウド、パブリッククラウドサービスが混在する環境には対応していません。そのため、これらの動的ネットワークによって生成されるデータの量、多様性、速度に対処できません。代わりにデータを統合し、集約して平均化するため、データの忠実度が損なわれます。AIOpsプラットフォームは現代のネットワーク向けに設計されており、包括的な分析のためにデータの忠実度を維持しながら、環境全体で大規模なデータセットを取り込む機能を備えています。
2. データ分析を簡素化する。AIOpsプラットフォームでは、速度や量に関係なくあらゆる形式のデータを収集できます。その後、自動データ分析が実行され、将来の問題の予測と予防、および既存の問題の原因究明に役立てられます。また、解決策の提案、対応の自動化、アルゴリズムの変更などにより、今後の問題への対処方法を改善することもできます。
実際、AIOpsは観測、エンゲージメント、アクションという3ステップのプロセスを、連続したサイクルで実行します。
現代のITチームは、動的で接続された環境の中で、安定性、セキュリティ、効率性を確保する責任を担っています。マルチクラウドハイブリッドの普及、オブザーバビリティのニーズ、DevOpsに求められる速度と俊敏性によって、従来のITアプローチやツールは限界に達しています。その結果としてサービスレベルとユーザーの満足度が低下することは避けられません。
クラウド環境をより効果的に管理するためのスピードや柔軟性を得るために、IT運用にCloudOpsやAIOpsを導入する時期に来ています。これらのツールはITOpsが進化したものではなく、IT運用のためのまったく新しい方法です。多くの場合、導入には組織全体の文化を変える必要がありますが、柔軟性、セキュリティ、信頼性の向上といった真のメリットを見過ごす手はありません。
IT/オブザーバビリティに関する予測
驚きに勝るものはありません。すべてを受け止める準備を整えておきましょう。Splunkのエキスパートが予測する、来年の重要なトレンドをご確認ください。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は850を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキスト(把握したい要素) に基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。
日本支社を2012年2月に開設し、東京の丸の内・大手町、大阪および名古屋にオフィスを構えており、すでに多くの日本企業にもご利用いただいています。
© 2005 - 2024 Splunk LLC 無断複写・転載を禁じます。
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