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外形監視は、行動スクリプトを使ってWebサイトやアプリケーションでのエンドユーザー操作をシミュレートする、Webパフォーマンスの監視技法の1つです。その目標は、ユーザーがアプリケーションやWebサイトで実際にどのような体験をしているかを理解することです。監視の際は、エンドユーザーの行動を想定してあらかじめ定義した一連の操作をロボットクライアントに実行させて、トランザクションをシミュレートします。こうしてユーザーの一般的なクリックストリームを追跡しながら、エンドユーザーのエクスペリエンスに関するパフォーマンスメトリクスを収集、分析、解明します。
外形監視を導入すれば、幅広いパフォーマンス情報を収集して、以下のような疑問点を明らかにできます。
- Webサイトは正常に動作しているか?
- ページの読み込み速度は十分か?
- ショッピングカートは適切に機能しているか?
- トランザクションフローの中で最適化できる部分はないか?
外形監視によるチェックは定期的に実行します。最適な頻度は通常、何をチェックしたいかによって決まります。たとえば可用性をチェックしたい場合は、1分に1回実行するとよいでしょう。
外形監視は、組織が提供するアプリケーションやサービスの可用性と応答性を維持するために重要なツールです。以下のセクションでは、外形監視によるWebサイトのパフォーマンスの最適化方法、外形監視の仕組み、よく使われるツールについて説明します。
エンドユーザーエクスペリエンスの維持に外形監視が不可欠な理由
外形監視は、WebサイトやWebアプリケーションのパフォーマンスを最適化するために欠かせません。Webサイトで動作が遅かったり頻繁にエラーが返されたりすると、顧客は買い物を途中でやめてしまうだけでなく、そのサイトを二度と利用しなくなる恐れもあります。組織にとって、自社のWebサイトのパフォーマンスが他社よりも劣っているのに気づかないことや、問題を把握しても、トラブルシューティングに手間がかかりチームが多忙ですばやく対応できないことはよくあります。
外形監視は、アプリケーションパフォーマンスの維持に役立ちます。外形監視を実行することで、Webサイトが正常に動作しているか、応答速度は十分か、トランザクションは期待どおりに処理されているかを把握できます。また、継続的に実行すれば、最新アプリケーションのパフォーマンスベンチマークを確立し、改善すべき領域や最適化が可能な領域を特定できます。さらに、パフォーマンスの低下やエラーの兆候を察知して、通知を送信することで、エンドユーザーに影響が及ぶ前に問題を修正するためにも役立ちます。このように、外形監視を活用すれば、デジタルエクスペリエンスに対する顧客の期待に常に応え、それを上回ることができます。
外形監視の仕組み
外形監視では、Webサイトや関連サービスと実際のユーザーとのやり取りをシミュレートし、パフォーマンスに関する潜在的な問題を検出して解決することで、Webサイトのパフォーマンスを最適化できます。以下の3つが監視対象になります。
- 可用性:Webサイトの可用性と全体的な応答性能を確認できます。特定のコンテンツにアクセスできるか、特定のAPIエンドポイントが利用可能で期待どおりに応答するかなど、個々の要素を評価することも可能です。
- Webパフォーマンス:ページの読み込み時間、DNSの応答時間、TTFB (最初の1バイトを送信するまでの時間)などのWebメトリクスや、個々のページ要素のパフォーマンスを監視できます。応答時間が極端に長くなったり、エラーが発生したり、Webコンテンツに問題があったときに、対応チームにアラートを送信することも可能です。
- トランザクション:トランザクションを監視して、ログイン、クリック、フォーム入力、決済など、個々のトランザクションが正しく完了するかどうかを確認できます。
外形監視では、3つの主要項目を監視することによってWebパフォーマンスを最適化できます。
外形監視のメリット
外形監視はさまざまなメリットをもたらします。たとえば、以下のことができます。
- ユーザーに影響が及ぶ前に問題を検出する:トラフィックが多い時期と少ない時期の両方で、Webサイト、API、SaaSアプリケーションなどのパフォーマンスを追跡し、可用性の問題やパフォーマンス低下が検出されたときに、対応チームにアラートを送信できます。このようなプロアクティブな監視により、根本原因を早期に特定して、エンドユーザーに悪影響が及ぶ前に修正できます。
- SLA (サービスレベル契約)を測定する:いつどこからでも、必要に応じた間隔で、サードパーティアプリケーションのWebサイト監視を実行できます。これにより、問題をすばやく検出してサービス品質とカスタマーエクスペリエンスを維持するとともに、内外のプロバイダーのコンプライアンスに関するレポートを作成できます。
- 複雑なトランザクションやプロセスを理解する:Webサイトの品質やアプリケーションのパフォーマンスを示す指標は稼働時間や可用性だけではありません。外形監視を使えば、フォーム入力、ログイン、ショッピングカートへの商品の追加、取引と決済など、複雑かつ重要なプロセスをエミュレートして、プロアクティブに監視できます。その後、これらのパフォーマンステストから収集されたデータを他の地域のデータと比較して、ユーザー操作のベースラインを確立し、改善領域を探ることもできます。
- 負荷対応力をテストする:トラフィックが増加した状況をシミュレートして、サーバーが高負荷に耐えられるかどうかを確認できます。これにより、トラフィックの予期される急増または突然の急増に対応できるようにシステムを改善できます。
- 新機能をテストする:エクスペリエンス監視を使って新機能をリリース前にテストし、期待どおりに動作するか、高負荷下でも適切に応答できるか、変更がサードパーティのAPIに影響を与えないかどうかなどを検証できます。
- MTTRを短縮する:問題をプロアクティブに検出し、ユーザーに影響が及ぶ前に修正できるため、MTTRを短時間に抑えることができます。
外形監視の課題
外形監視には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題もあります。
- 複雑さ:今日のWebサイトやアプリケーションは複雑です。しかも、ユーザーはさまざまな地域、デバイス、環境からアクセスします。外形監視の方法について入念な計画を立てなければ、パフォーマンスに関して起こり得るすべての状況をテストするのが難しくなります。
- 繊細さ:外形監視のテストには繊細さが求められます。テストを適切に設定しないと、ボタンを少し動かすといった軽微なUI変更でも、スクリプトに沿ったテストが失敗し、アラートが大量に発生する可能性があります。
- 精度の限界:外形監視では、サイトやアプリケーションでユーザーが辿る可能性のあるすべての経路をテストできるわけではありません。そもそも、すべてを完璧に想定することが難しい場合もあるでしょう。ユーザーが想定外の操作をした場合、そのデータは収集できません。そのため、外形監視は、本番前環境でアプリケーションやWebサイトを監視して、リリース前に問題を検出し、ベースラインとなるパフォーマンスを確立するためによく使われます。
外形監視の主要なツール
外形監視ソリューションでは、Webサイトやアプリケーションを常時、包括的に可視化できると効果的です。外形監視ソリューションを選ぶときは、以下をはじめとした幅広いツールを備えているかどうかを確認しましょう。
- ブラウザ監視:Google Chromeなどの最新Webブラウザを使ってWebサイトにアクセスするユーザーのエクスペリエンスをシミュレートします。複数の位置情報を使って短い間隔で実行し、サイトやアプリケーションが利用できない場合や、パフォーマンスがベースラインを下回った場合には、アラートを送信することもできます。
- クリックストリーム監視:ユーザーのアクセスを監視する点はブラウザ監視と同じですが、クリックストリーム監視では特定のワークフローを監視します。Webサイトの操作をシミュレートする独自のスクリプトを作成し、定期的に実行して、クリックなどの特定のユーザー操作を監視できます。
- リンク切れ監視:スクリプトを作成して、特定のURLのリンクすべてをテストします。すべてのエラーが報告されるため、それに基づいて、切れているリンクを個別に調査できます。
- HTTP監視:HTTPリクエストを送信して、特定のAPIエンドポイントやリソースが利用できるかどうかを確認します。パフォーマンスのしきい値を設定して、ベースラインを下回ったときにアラートを送信できる製品もあります。
外形監視ソリューションを選ぶときは、図に示すツールを備えているかどうかを確認しましょう。
外形監視での競合ベンチマークの実行方法
外形監視ソリューションの多くは、競合ベンチマーク機能を備えています。これは、リアルユーザー監視にはない外形監視の利点です。リアルユーザー監視では、監視したいサイトにJavaScriptタグを挿入したり、監視したいバックエンドインフラにソフトウェアエージェントを導入したりする必要があります。しかし、競合他社のWebサイトにこのような仕掛けをすることはできません。外形監視ソリューションでは、競合他社のWebサイトのURLを指定するだけで、そのサイトのパフォーマンスを自社のサイトと同様に監視できます。その後、競合他社のサイトから収集したパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスに関するデータを自社サイトのデータと比較して、改善点を探ることができます。
コアウェブバイタル(CWV)とは
コアウェブバイタル(CWV)は、Webページのユーザーエクスペリエンスに重要な指標としてGoogle社が規定した一連のメトリクスです。これらのメトリクスを使って、Webサイトのパフォーマンスを大きく左右する3つの要因である、読み込み時間、応答性、操作性を測定できます。Google検索でWebページの全体的なユーザーエクスペリエンスを評価するために使われる「ページエクスペリエンス」スコアでもCWVが考慮されます。
CWVを使えば、サイトやアプリケーションで最適なユーザーエクスペリエンスを確保するために役立つ各種のメトリクスを追跡できます。特に重要なメトリクスには以下のものがあります。
- 応答時間:サーバーからクライアントへの応答にかかる時間を把握することは非常に重要です。また、DNSの応答時間、接続時間、TTFB (最初の1バイトを送信するまでの時間)も重要な指標です。いずれかの測定値がベースラインを下回る場合は、帯域幅が足りないかサーバーで問題が発生しているためにパフォーマンスが低下している可能性があります。
- 入力遅延:ユーザーがリンクをクリックしたりボタンをタップしたりしてリクエストを送信してから、そのリクエストが受信、処理されるまでの時間を測定します。遅延が短いほど、ユーザーエクスペリエンスが高いことを示します。
- ページの読み込み時間:ページ全体の読み込み時間を追跡するには、CSS、スクリプト、DOM (Document Object Model)要素、サードパーティコンポーネントを監視することが重要です。パフォーマンスが低い場合は、背景画像や動画など、サイズの大きいファイルが悪影響を及ぼしている可能性があります。
CWVが検索エンジンでの評価やオーガニック(自然検索)ユーザーの確保に重要な理由
検索エンジンでの評価やオーガニック(自然検索)ユーザーの確保にCWVが重要な理由は、Google検索でページエクスペリエンスがランキングに影響するためです。簡単に言えば、ユーザーエクスペリエンスが高いページは低いページよりもGoogle検索で上位に表示されるということです。ページエクスペリエンスの評価はCWVだけで決まるわけではありませんが、HTTPSの使用、モバイルへの対応、インタースティシャル/ポップアップ広告の有無など、他のページエクスペリエンス要因とともに重要指標として考慮されます。
Google検索で重要なCWVメトリクス
Google検索で特に重要なCWVメトリクスは3つあります。
- LCP (Largest Contentful Paint):ユーザーがURLをリクエストしてから、そのWebページ内で最も大きいコンテンツブロックが表示されるまでの時間を示します。大きいコンテンツブロックには、画像、動画のサムネイル(プレビュー)画像、背景画像、ブロックレベルのテキストなどがあります。これらのコンテンツブロックを読み込んでいる間は、Webページ全体が読み込み中としてユーザーに表示されるため、その速度を把握することが重要です。読み込み時間は、ユーザーエクスペリエンスの向上に不可欠な要素です。読み込み時間が短いとエンゲージメント率やコンバージョン率が向上し、長いとページ離脱率が上がります。また、ページの読み込みが速い方がGoogle検索でランクが上がりやすくなります。LCPは、ユーザーがページを利用して使いやすいと感じているかどうかを評価するために役立ちます。Google社が推奨するLCPの目標値は2.5秒以下です。
- CLS (Cumulative Layout Shift):ページの読み込み後に、レイアウトがどのくらいずれるかを示します。ページが表示された直後にユーザー操作にどの程度支障が生じるかがわかります。バナー、ボタン、リンクの位置がページの読み込み中と読み込み後でずれると、ユーザーが目的の操作を正しく実行できない可能性があります。また、ユーザーが読んでいるテキストの位置がページ全体の表示完了時にずれると、ユーザーはフラストレーションを感じることがあります。CLSは、サイトの操作性を把握、改善するために役立ちます。ページレイアウトのずれは0~1のスコアで評価し、0はずれがまったくない状態、1は大きくずれる状態を示します。Google社が推奨するCLSの目標スコアは0.1以下です。
- FID (First Input Delay):最初のユーザー操作(リンクのクリックやボタンのタップなど)からページ要素が反応するまでの時間を示します。種類に関係なくユーザーが最初に操作した要素が測定対象になります。今日のWebサイトでは、ユーザーエクスペリエンスやコンテンツ配信を向上させるためにさまざまな動的要素が使われますが、これらの要素はユーザーがページを操作したときの遅延の原因にもなり得るため、FIDは重要なメトリクスです。入力遅延を測定することで、ユーザー操作に対するブラウザの応答時間を縮めるためにページのどこを最適化すべきかを探ることができます。Google社が推奨するFIDの目標値は100ミリ秒以下です。
外形監視ソリューションでは、CWVと他のパフォーマンスメトリクスを併せて監視することで、ユーザージャーニー全体を通じてWebサイトのパフォーマンスをベンチマークし、改善できます。
外形監視とオブザーバビリティの関係
マイクロサービス、サーバーレステクノロジー、コンテナテクノロジーの普及とともにITシステムがますます複雑化する中、従来のエージェントベースの技法やツールでは環境全体を十分に可視化できなくなっています。今日の分散環境では相互の依存関係や通信経路が多数存在し、エージェントでは追跡しきれなくなりつつあります。
この課題に対応するために、パフォーマンス監視は今後、オブザーバビリティへの依存を高めていくでしょう。オブザーバビリティは、システムの外部出力を観測することによって、システム内部の状態が良好かどうかを把握する手法です。監視データとインサイトを活用することで、今日の複雑なITシステムとその健全性やパフォーマンスをより深く、より包括的に可視化できます。
監視とオブザーバビリティの違い
外形監視を含む監視とオブザーバビリティの重要な違いは、監視では、何を監視すべきかを事前に判断する必要があることです。すべてのエラーや障害を想定することが難しい今日の分散システムでは、その制約が弱点になります。一方、オブザーバビリティでは、システムのパフォーマンスを継続的に監視し、問題の発生時に「現在の遅延の原因は?」、「この問題はすべてのユーザーに影響しているのか、それとも一部のユーザーのみなのか?」といった疑問を調べ、その結果に基づいて何を監視すべきかを判断できます。今後もITシステムの複雑化が進むと考えられる中、こうした探索的な能力はますます重要になっていくでしょう。
長い応答時間、リンク切れ、障害やダウンタイムなどのパフォーマンスの問題は、ユーザーがサイトやアプリケーションの利用をやめるきっかけになります。さらに、こうした問題が頻発すると、二度と利用してもらえないかもしれません。外形監視は、顧客に影響が及ぶ前にパフォーマンスの問題に対処するために役立ちます。優れた外形監視ソリューションを使えば、Webサイトのパフォーマンスを常に最適化し、ユーザーに最高レベルのカスタマーエクスペリエンスを提供できます。
IT環境の監視を強化する
オブザーバビリティの3本の柱を実践して、ネットワーク全体の監視を強化しましょう。