APIを監視することの重要性、APIパフォーマンスの監視システムを実装する際に検討すべき機能について紹介します。
公開日:2023年2月27日
パーソナルコンピューターは人々の働き方や遊び方に革命を起こしたかもしれませんが、真の意味でインターネット時代を切り拓いたのはコンピューターネットワークでした。コンピューターがもたらす情報、データ、効率それぞれの価値について語るとき、コンピューターネットワークの価値についても触れることがよくあります。コンピューターネットワークが構築されたことで、コミュニケーション、仕事、買い物、遊び方、趣味や興味の追求など、私たちの日常生活は一変しました。
ネットワークの構成、保守、管理は、世界中の何百万人ものIT担当者にとってメインの仕事です。ネットワーク拡大への要求が高まるにつれて、その業務の容易さも複雑さも増しています。ネットワークには、より多くのトラフィックをより高速処理することが期待されていますが、自動化と構成管理ツールを活用することで、プロビジョニング、監視、およびネットワークとその潜在的な問題のトラブルシューティングが容易になります。
この記事では、ネットワーク構成の主な課題、ネットワーク管理者が直面するリスク、ネットワークを適切に維持することのメリット、ネットワーク運用のベストプラクティスについて説明します。
ネットワーク構成とは?
ネットワーク構成とは、ネットワーク設定の割り当て、ポリシーの作成、フローの確立、制御の実装など、コンピューターネットワーク全体の設計を行うことです。ネットワークの挙動を決定するネットワーク管理プロトコルも、ネットワーク構成の重要な要素です。また、ネットワーク構成管理ツールを使用することで、ネットワーク構成のプロセスを自動化することもできます。
ネットワーク構成に関する一般的な作業には、次のようなものがあります。
- ルーター構成:IPアドレスとルーティングの設定を行います。
- ホスト構成:ネットワークにアクセスするホストコンピューターのネットワーク接続を構築します。
- ソフトウェア構成:ネットワークベースのソフトウェアへのアクセスを許可し、正しい認証情報を設定します。
- 権限:インターネットアクセスやソフトウェア/アプリケーションのインストールの制限、ファイアウォールの設定などネットワーク構成に必要な権限を設定します。
ネットワーク構成の種類
ネットワーク構成にはさまざまな種類があります。以下に、一般的な例をご紹介します。
- ローカルエリアネットワーク(LAN):複数のデバイスを接続するプライベートネットワークで、企業ネットワークでよく使用されます。
- パーソナルエリアネットワーク(PAN):1人で使用する小規模なネットワークです。たとえば、Bluetooth接続はPANにあたります。
- メトロポリタンエリアネットワーク(MAN):大学のキャンパスのような特定の領域にわたる大規模なネットワークです。
- ストレージエリアネットワーク(SAN):データの取得と保管を目的としたローカルネットワークです。
- エンタープライズプライベートネットワーク(EPN):サーバーやアクセス先が複数ある環境でリソースを共有するために使用されます。
- 仮想プライベートネットワーク(VPN):リモートワークの際に会社のネットワークにアクセスするなど、個人が別のネットワークに安全に接続するためのネットワークです。
構成の種類には、仮想プライベートネットワーク、ローカルエリアネットワーク、パーソナルエリアネットワーク、メトロポリタンエリアネットワーク、ストレージエリアネットワーク、エンタープライズプライベートネットワークなどがあります。
ネットワーク構成ツールについて
ネットワーク構成ツールを使用する目的は、ネットワークの管理と可視性の向上にあります。最終的な目標は、トラブルシューティングや構成作業を1つの管理パネルからプロアクティブに実行できるようにすることです。
さまざまなベンダーから多種多様なネットワーク構成ツールが提供されていますが、一般的には、スクリプトシステム、ネットワーク構成管理ツール、インテントベースネットワーク構成管理の3つのカテゴリに分類されます。
- スクリプトシステム:ネットワーク設計モデルに基づいてスクリプトを作成し、ネットワークの動作を管理します。大規模なネットワークを構成する場合は特に、モデルベースのスクリプトのメリットである柔軟性を生かせます。デメリットは、スクリプト言語に関する高度な知識が必要なことです。
- ネットワーク構成管理ツール:ネットワーク構成に関するタスクを処理するために、各ベンダーから提供されています。スクリプトシステムほどコードの知識は必要ありませんが、モデルベースのスクリプトに比べると柔軟性が全体的に低くなります。
- インテントベースネットワーク構成管理:TechTarget社によると、人工知能(AI)、ネットワークオーケストレーション、機械学習(ML)を活用して、ネットワーク全体の管理タスクを自動化するネットワーク管理の1つの形態です。自動化機能が少なく、人による操作が多いソリューションでたびたび発生する人的ミスをなくすように設計されたソフトウェア対応サービスです。
さまざまな設定ファイルとその役割とは?
ネットワークの設定情報は、設定(config)ファイルとデータベースに格納されます。一般的なファイルタイプには、JSON、INI、TOML、YAMLなどがあります。設定ファイルには、ユーザー名、サーバーのホスト名、アプリケーション、設定内容、サービスの認証情報などのさまざまな情報が格納されており、ネットワークパラメーターの管理、ネットワークの設定、ネットワークの動作の制御などを可能にします。
以下は、ネットワーク設定ファイルの一例です。
- /etc/hosts:IPアドレスとホスト名をマッピングします
- /etc/resolv.conf:ドメインネームサーバー(DNS)を定義し、使用する検索ドメインを決定します
- /etc/sysconfig/network:ホスト情報とネットワークインターフェイスをマッピングします
- /etc/protocols:ネットワークプロトコルを定義し、ネットワーク上でのデバイスの通信方法を決定します
- /etc/services:クライアントアプリケーションに関する情報を保存します
ネットワーク構成の確認方法
ネットワーク構成の確認方法は、コマンドラインインターフェイスを使用しているか、ネットワーク構成管理ツールを使用しているかによって異なります。コマンドラインの場合、Windows環境では“ipconfig”コマンドを実行します。MacやLinux系の環境では、“ifconfig”が同様のコマンドになります。これらのコマンドを実行すると、ネットワーク構成に関する情報(デフォルト設定など)を確認したり、ネットワークインターフェイスを設定したりできます。
ネットワーク構成管理ツールを使用している場合は、ネットワークを構成、監視、管理するための独自のインターフェイスが用意されています。
なぜネットワーク構成が重要なのか?
ネットワークでトラフィックの処理、セキュリティの確保、ダウンタイムの短縮、安定性の維持を図るには、そのネットワークを適切に構成しなければなりません。そこで、ネットワーク構成管理ツールを活用すると、次のようなメリットを得られます。
- データ追跡とレポート作成の自動化により、設定の変更や潜在的な問題を特定できる。
- 一括変更を適用し、ネットワークパラメーターを以前の設定にロールバックできる。
- ネットワークや変更の可視性が向上するため、稼働率が高まる。
- 物理と仮想両方のネットワークデバイスの保守と修復を迅速に行える。
- デバイス構成の保管/管理を一元化できる。
ネットワーク構成管理のメリットと課題とは?
ネットワークは絶えず変化しており、ネットワークのパフォーマンスや動作を追跡して報告することは大きな課題となっています。しかし、安全で安心なネットワーク運用を維持するためには不可欠な作業です。そこで、ネットワーク構成管理を行うと、ネットワークを可視化できるため、適切にネットワークを構成して、運用の範囲内でその機能を維持できます。ネットワーク構成管理では、次のようなことができます。
- ネットワーク構成の追跡:ネットワーク管理ソフトウェアのユーザーインターフェイスを使用して、ネットワークが意図したとおりに動作していることを確認できます。
- 変更の特定:基準となるネットワーク構成を設定すると、ネットワーク構成管理ツールで、人的ミス、所定の変更、サイバー攻撃などが原因で発生した変更についてアラートを送信し、より迅速な復旧を可能にします。
- 効率の向上:ネットワーク構成管理ツールには重要な設定作業や構成作業を自動化する機能が搭載されており、IT部門の管理者はネットワーク運用を効率化し、より重要な業務に専念できるようになります。
- ネットワークのパフォーマンスに関するインサイトの取得:ネットワークのパフォーマンスに影響を与え得る要因は、常に何十種類も存在します。ネットワーク管理ソフトウェアを使用すると、ネットワークエンジニアは主要業績評価指標(KPI)を追跡して、その達成状況を即座に把握できます。
- サイバーセキュリティの強化:ネットワークを適切に構成できないと、攻撃者に悪用される可能性のある脆弱性が生じるため、サイバーセキュリティ上のリスクとなります。ネットワーク管理ソフトウェアを導入すると、ネットワークへのあらゆる変更を追跡することで、サイバー攻撃に対する重要な防御線を築くことができます。
- コンプライアンスの確保:規制コンプライアンスへの取り組みを示す必要がある規制の厳しい業界では、ネットワーク管理ソフトウェアの追跡機能とレポート作成機能が活躍します。
ネットワークが適切に構成されていない場合のリスクとは?
ネットワークを適切に構成していないと、簡単に言えば、組織のニーズを満たすために必要なスピード、効率、セキュリティで運用することができません。構成管理は、ネットワークがその役割を果たすために不可欠です。ネットワークが適切に構成されていない場合、以下のようなリスクがあります。
- ネットワークの停止:まず、適切に構成されていないネットワークでは、最先端を行くデータドリブンな組織に必要な稼働率と信頼性を確保できません。ネットワークが停止すれば、収益の損失、罰金、顧客満足度の低下を招き、組織の評判が損なわれる可能性があります。
- データの盗難:ネットワークが適切に構成されていないと、データの盗難に対して脆弱になり、ファームウェアへの攻撃に悪用されることが多々あります。ファイアウォールが破られると、データが攻撃者の管理下におかれ、特に機密性の高い財務データや医療データなどを保持する組織は甚大な被害を受ける可能性があります。
- ランサムウェア:ランサムウェアは、攻撃者がデータを暗号化し、それを解除するために金銭を強要するというエクスプロイトの一種ですが、この脅威をもたらす一因も脆弱なファームウェアにあります。
- デバイスの乗っ取り:IoT (モノのインターネット)を介してますます多くのビジネスデバイスや個人用デバイスが接続されるようになったことで、ハッカーが適切に構成されていないネットワークに接続する手段もさらに増えています。ハッカーはデバイスを乗っ取り、それを使ってネットワーク内の他の脆弱性を悪用し、機密データにアクセスします。
ネットワーク構成監視とは?
ネットワーク構成監視とは、ネットワークの監視を行い、潜在的な問題が発生した場合にネットワーク管理者にアラートを送信するネットワーク管理機能です。ネットワーク管理者やシステム管理者は監視ツールを活用して、多種多様な問題の情報をさまざまな基準で収集できます。ネットワーク構成監視で問題の発生を検知したら、管理者はネットワーク構成管理ツールを使用してその問題に対処し、修正できます。
なぜネットワーク構成監視が重要なのか?
ネットワーク構成監視の最も重要な機能は、ネットワーク全体を可視化し、円滑で効率的な運用を妨げる問題やボトルネックを特定することです。ネットワーク監視は、主要業績評価指標を追跡しながら、ネットワークアクセス、ルーター、サーバー、デバイス、スイッチなどのすべてのネットワークコンポーネントを監視します。ネットワーク監視を行えば、稼働率を維持し、組織に大きな影響をもたらす前に重大な問題を特定して解決できます。
ネットワーク構成管理のコストを削減する方法とは?
ネットワーク管理は、どの組織にとっても大きなコストになる可能性があります。最大の課題の1つは、ネットワークを適切に運用しながら、無駄なコストを削減するための変更管理戦略を立案することです。そこで、コストを抑えるための提案をいくつかご紹介します。
- ネットワークベンダーを統合する:組織のネットワークに関するニーズが拡大するにつれ、いつの間にか複数のネットワークベンダーを利用しているかもしれません。最小限のベンダーとのネットワーク契約を維持することで、効率を向上させスケールメリットを得ることができます。初めの一歩として、ネットワーク関連の契約状況を見直してみましょう。
- 総所有コストを検討する:総所有コスト(TCO)とは、ネットワークの設置、維持、および運用に関連するすべてのコストを指します。ネットワークのコストを評価する際には、管理コスト、サービスプラン、IT部門の時間コスト、およびネットワークを維持するために発生するすべてのコストを考慮してください。そうすれば、評価対象の情報が増え、新しいベンダーを検討したり契約を再交渉したりする際の判断材料として多くのデータを得ることができます。
- ネットワーク管理を一元化する:IT部門はネットワーク管理業務にかなりの時間を費やしており、その多くが手動による時間のかかる反復作業であると考えられます。一元的なネットワーク管理アプローチを取り入れることで、IT担当者がネットワークの対応に費やす時間を短縮し、時間とコストを節約できます。ネットワーク管理のプロセスとツールを統合すれば、ハードウェアの更新と設定をリモートで行うことができ、非常に単純なタスクの多くを全面的に自動化できます。
- ネットワークセキュリティを強化する:サイバー攻撃によって被る総コストは、数百万ドルに達する可能性があり、この他にも評判や顧客の信頼を失うという数字で表すことが難しいコストも生じます。ネットワークセキュリティの強化は、単なるベストプラクティスではなく、ビジネス価値の要となる取り組みです。サイバーセキュリティを強化するための投資は、ネットワークに関するコストを削減するために不可欠なものと考える必要があります。
- ネットワークを自動化する:IT部門の時間コストが膨らむと、ネットワークの所有と運用の総コストが増加する恐れがあります。IT担当者がネットワーク上のデバイスの設定、テスト、導入、管理を手作業で行っているのであれば、ネットワーク運用を自動化するハードウェアとソフトウェアを導入してそういった作業に費やす時間を大幅に減らすことができます。
ネットワーク構成管理のベストプラクティス
ネットワークで何が起きているかを常に把握しておくことは、ネットワークの安全で効果的な運用を維持するための鍵となります。以下に、ネットワークを適切に運用するためのベストプラクティスをいくつかご紹介します。
- ネットワーク構成図を作成する:ネットワークの設計、構成、接続されているデバイス、全体的な運用方法を包括的に把握する必要があります。ソフトウェア、ハードウェア、システム、デバイスをネットワーク構成図に落とし込みます。サーバー、ファイアウォール、ルーター、スイッチなども、もれなく記載しましょう。
- デバイス構成を標準化する:ネットワーク上のデバイスの種類(ルーター、スイッチ、ネットワークトポロジーなど)ごとに標準構成を作成することで、新しいデバイスをプロビジョニングする際に、人的ミスやその他の潜在的な構成ミスを回避できます。ネットワーク構成管理ソフトウェアを活用すれば、この目標をシンプルな形で達成できます。
- 変更を追跡して文書化する:構成の変更を追跡し、変更が生じた際に通知するアラートを設定します。また、ネットワークに対して行われたすべての変更のバックアップを保存しておくことで、問題が発生したときに変更内容を確認し、必要に応じて以前の構成を復元できるようにします。
- 自動化する:本来であれば人間の介入が必要なプロセスを自動化することで、人的ミスをなくせるほか、定型的なタスクを処理し、複数のデバイスの構成変更を管理し、規制基準へのコンプライアンスを維持するのに役立ちます。
- サイバーセキュリティに注力する:ネットワークの構成や動作を理解することはもちろん、それ以上に重要となるのがサイバー攻撃からネットワークを保護する方法を理解することです。セキュリティ侵害は重大な損害を与える可能性があり、多くの場合、他のネットワークの問題よりもはるかに大規模で、多額のコストがかかります。
- 冗長性を持たせる:どれほど万全に備えても、ネットワークコンポーネントに障害が発生し、業務が中断してしまうことがあります。デバイスに障害が発生してもネットワーク運用を継続できるようネットワークに冗長性を持たせることで、思いもよらない障害に対応します。
ネットワーク構成管理のベストプラクティスには、プロセスの自動化や、サイバーセキュリティを重視した運用などがあります。
コンピューターネットワークは処理能力の鍵であり、それがデータ革命の原動力となります。コンピューターネットワークのプロビジョニング、構成、構築、運用、アップグレードを適切に行うために必要なスキルと能力は専門的かつ価値のあるものであり、その仕事をこなす人材を求める声に応えることは、かつてないほど重要になっています。そして、このようなニーズが高まるにつれ、ネットワーク担当者には、ネットワーク運用の自動化と監視、サイバー攻撃からの保護のみならず、内に秘めた能力を発揮して現代のデジタルエコノミーを牽引していくためにも、適切なツールを活用していくことが必要です。
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