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公開日:2022年8月11日
自然言語処理(NLP)とは、人間の自然な話し言葉を処理し、理解し、再現するようにコンピューターに学ばせる手法で、コンピューターサイエンス、計算言語学、ディープラーニング、AI (人工知能)、機械学習などの要素を合わせ持った領域です。NLPにとって重要なのは、膨大な量の人間の話し言葉(文字や音声)を取り込み、処理し、分析し、意味を解釈して正しく応答できる能力です。最終的な目標は、人間同士の対話にできるだけ近い方法で、人間がコンピューターやデバイスとやり取りできるようにすることです。
NLPの概念は、1950年代にコンピューターサイエンスの先駆者であるアランチューリングが「イミテーションゲーム」(後のチューリングテスト)と呼ばれるものを提唱したときから存在します。このテストは、人間のオペレーターがテキストのみのチャネルを通じて一連の質問を行い、見えない回答者が人間かコンピューターかを判別するというものです。人間がそれを判別できなければ、そのコンピューターは「チューリングテストに合格した」ことになり、これはしばしばAIやNLPの最終目標とされています。
NLPは、電話の自動応答ツリー、音声からテキストへの変換、GPSシステム、さらにはAmazon Alexa、AppleのSiri、Microsoft AzureやGoogleアシスタントなどの自動アシスタントまで、幅広い用途に活用されています。また、ある言語から別の言語へのテキストの自動翻訳、バーチャルアシスタントのような口頭でのコマンドへの応答、大量のテキストの分析や要約などにも利用されています。
この記事では、NLPの種類、その仕組み、NLPの一般的なタスクと用途について説明し、AI (人工知能)と機械学習がNLPにどのように役立っているかを解説します。さらに、NLPの課題とメリット、および将来の展望についても説明します。
アランチューリングは、AIおよびNLPベースのプログラムのための「チューリングテスト」を開発したコンピューターサイエンティストです。
自然言語処理の仕組み
NLPは、テキストのベクトル化と呼ばれるプロセスを使用してコンピューターが理解できる形式に言葉を変換します。このプロセスでは、数値ベクトル(数値の配列)を各単語に割り当て、それをシステムの辞書と照合します。
照合するデータの量が十分であれば、機械学習でこのタスクをさらに効率化できます。NLPシステムは機械学習を利用して単語の意味についてより正確な推論を行い、自動的に辞書を拡充していくため、さらに高速で正確な検索が可能になります。
NLPシステムは機械学習アルゴリズムを使用してトレーニングされます。このアルゴリズムに特定のデータが与えられ、単語とそれに関連付けられた数値の間の相関関係をシステムに学習させます。一度トレーニングしたシステムは、機械学習を利用して、新しい単語、新しいコンテキスト、新しい意味を学習し続けることができます。
自然言語処理の種類
NLPモデルには、主に3つの種類があります。
シンボリックNLP:1950年代初頭から1980年代まで主流だったシンボリックNLPは、初期のNLPシステムの代表であり、辞書にプログラムされた限られた数の単語を使って、手作業でコーディングしていました。コンピューターには定義された一連のルールが与えられ、応答はそのルールに基づいて行われました。
統計的NLP:1990年代に登場した統計的NLPには、機械学習によるNLPアルゴリズムが導入されました。機械学習の導入により、NLPベースのシステムは事前に定義された辞書だけでなく、非構造化データを使用して分析と処理をリアルタイムで行えるようになり、NLPの機能と用途が大きく広がりました。
ニューラルNLP:2010年代には、ディープニューラルネットワーク型の機械学習原理がNLPに適用され始めました。機械学習を活用したニューラルネットワークは、人間の脳が情報を保存したり使用したりする方法を模倣するように設計されています。ニューラルネットワークは機械学習アルゴリズムを使用してトレーニングする必要がありますが、一度トレーニングすれば自ら学習する能力を持つようになります。
NLPモデルの3つの主な種類とは、シンボリックNLP、統計的NLP、ニューラルNLPです。
自然言語処理を構成する要素
NLPの仕組みを理解するために、NLPの構成要素を確認しましょう。これらは、NLPのコア機能の実現に密接に関係しています。
自然言語理解(NLU):NLUはNLPの構成要素であり、人間の言語をマシンで読み取り可能な形式に変換するものです。NLPとNLUは、機械学習と非構造化データを使用するという点で似ていますが、NLUは特に、コンピューターが人間の言語の意味と構文を理解できるようにするためのプログラミングの側面に重点を置いています。たとえば、カスタマーサービスの自動化では品詞タグ付けが使用されます。ここでは、カスタマーサービスチケットをコンテキストに基づいて理解および解析し、チケットを正しい部門に転送することにNLPシステムが利用されています。
自然言語生成(NLG):NLUがコンピューターに人間の言語を理解させることに重点を置いているのに対し、NLGはコンピューターに言語を生成させることに重点を置いています。NLGは、コンピューターが特定のデータセットに基づいて、自然言語で記述したり話したりすることを可能にします。たとえば、テキスト音声合成はNLGを応用したものです。
言語処理と光学文字認識(OCR):NLPは、音声を認識して人間の言語を生成するためにさまざまなデータセットを使用します。たとえば、ビデオ内の会話やスキャンした文書や画像に含まれるテキストデータなど、データが入力テキストや音声形式ではない場合、NLPは言語処理と光学文字認識(OCR)を使用して、データを検索可能なテキストに変換します。
自然言語処理と機械学習の関係
機械学習、AI (人工知能)、自然言語処理(NLP)という用語は、それぞれが密接につながっています。コンピューターサイエンスのコンテキストでのNLPは、AIや機械学習の分野の1つと見なされることが多くあります。また、機械学習の手法は、現代のNLPの重要なコンポーネントとして扱われます。一般に、NLPと機械学習はどちらもAIのサブセットと考えられています。
最も初期のシンボリックNLPは、あらかじめ定義された辞書の定義と単語を照合していました。機械学習は、NLPベースのシステムに新しい単語やルールを学習させ、データを使用してNLPのコアタスクを実行できるようにすることで、NLPの応用範囲を大きく広げました。
また、機械学習は今後のNLPの発展にとっても極めて重要です。NLPシステムが利用できるデータが多いほど、より正確かつ高速で、対話的な使いやすいシステムになります。機械学習を利用することで、自然言語処理システムは利用可能なデータをますます大量に取り込み、処理できるようになります。
自然言語処理の一般的なユースケース
NLPが機能するためには、質問のテキストを理解し(テキスト分類)、その処理方法を決定するためのさまざまなタスクを実行する必要があります。これらのタスクは、人間の脳が言語を理解して解釈する方法に似ています。
- テキストと音声の処理では、話し言葉を個々の単語に変換したり、固有名詞と普通名詞の違いを理解したりするなどして、音声をテキストに、あるいはテキストを音声に変換します。
- 形態素解析は、言語を構成する意味の最小単位である形態素をもとに行われます。英語では、形態素は単語そのものであることが多いですが、それより小さい場合もあります。形態素解析は、NLPベースのシステムが、単語の語根や品詞など、理解の鍵となる要素を決定するのに役立ちます。
- 構文解析は、NLPベースのシステムが文法を理解し、文を単語や関連する単語グループに分解し、単語間の関係を把握して意味をより深く理解するのに役立ちます。
- 語彙意味論(意味解析)は、たとえば、コンテキストの中での単語の意味を理解する、テキストグループのセンチメントがネガティブかポジティブかを分析する、複数の意味を持つ単語の曖昧さを解消する、固有表現(有名人の名前、場所、会社など)を表す単語グループを正確に結び付ける、などの機能を可能にする幅広いカテゴリーです。
- 関係意味論は、個々の文の意味を分解して固有表現の関係を理解し、単語グループをコンピューターが理解できる論理形式に変換し、個々の単語の完全な意味を提示するものです。
- 談話は、個々の文の範囲を超えた関係意味論へと意味の理解を広げられるようにするためのディープラーニングモデルです。これには、文とそれよりも大きなテキストブロックとの関係や、質問応答などの意味を生成するためにそれらがどのように連携するかを定義するさまざまなNLPタスクが含まれています。
自然言語処理の利用者
NLPには、企業向けから消費者向けまで、実際に利用されている多くの応用例があります。たとえば、以下のような人がNLPを使用しています。
- 医療従事者は、NLPを活用することで、患者のカルテをすばやく正確にその場で作成できるため、診察後に時間をかけてカルテを書く必要がありません。また、カルテから、容易に発見できない症状の相関関係を見つけるために使用されることもあります。
- コンピューターセキュリティのエキスパートは、電子メールのメッセージを分析してスパムやフィッシングの攻撃を示唆する言葉を見つけるなど、多くの保護対策の一環としてNLPを利用しています。
- ビジネスプロフェッショナルは、テキストによるコミュニケーションを支援する文法チェックアプリケーションから、文書や電子メールを口述するための音声入力まで、さまざまな形でNLPを利用しています。
- カスタマーエクスペリエンスサービスチームは、消費者からの電話を適切な部門に転送する電話ツリーやチャットボットから、Webサイト上の最も重要な顧客コメントを特定して優先順位を付けるセンチメント分析まで、業務全般にわたってNLPを利用しています。
- ソーシャルメディアのスペシャリストは、カスタマーサービスチームと同じように自動センチメント分析を行い、キーワードを特定して、ツイートやその他のさまざまなソーシャルメディアチャネルのどのコメントに最初に対処すべきか、またはさらなる注意を払うべきかを判断します。
- 消費者は、ハンズフリーのモバイルアプリケーションから、ワープロアプリケーションの文法チェックプログラム、さらには照明、サーモスタット、音楽システムと連動した自動ホームコントロールプログラムまで、毎日さまざまな方法でNLPを利用しています。
NLPは、消費者やビジネスプロフェッショナル、さらにはソーシャルメディア、医療、セキュリティのエキスパートまで、あらゆる人々に利用されています。
自然言語処理の応用例
NLPは、幅広いタスクを実行するために、コンピューターシステムやモバイルアプリケーションによってさまざまな方法で利用されています。ここでは、比較的一般的な応用例をいくつかご紹介します。
- テキスト音声合成:NLPは、本や電子メールなどの形式で書かれたテキストを音声に変換する自動読み上げアプリケーションに活用されています。
- 音声からテキストへの変換:NLPは、音声テキスト変換アプリケーションが人間の話し言葉のコンテキストを理解し、文法的、意味的に正確なテキストに適切に変換します。
- バーチャルアシスタント:Googleアシスタント、Amazon Alexa、AppleのSiriなどのバーチャルアシスタントは、人間のユーザーによる入力を理解し、正確で役立つ回答を提供するためにNLPを利用しています。音声ベースのGPSプログラムも、NLPを利用することで、人間とデバイスとのコミュニケーションを可能にしています。
- テキストの要約:NLPは、大量のテキストを取り込んで分析し、要約するアプリケーションに利用されています。テキスト要約アプリケーションは、NLPのおかげで、意味を変えることなくテキストの量を減らすことができます。
- 文法の誤りの修正:文章内の文法の誤りを自動的に修正するアプリケーションは、意味をより正確に理解し、コンテキストに応じた正確な提案や修正を行うためにNLPを活用しています。
- 機械翻訳:文章や話し言葉をある言語から別の言語に自動的に翻訳するツールは、コンテキスト、構文、文法といった言語の重要なコンポーネントを理解し、正しい翻訳を提供するためにNLPを活用しています。
- スパムやフィッシングの検出:NLPは、スパムやフィッシングの攻撃をより正確に予測するために、テキストの完全なコンテキストを自動的に理解することでスパム検出のプロセスをさらに発展させています。
- ソーシャルメディア分析:ソーシャルメディアの監視ツールやエンゲージメントツールは、NLPを利用して投稿やコメントのコンテキストを理解し、それがネガティブかポジティブかを確認することで対応の種類や優先順位を決定しています。
- カスタマーサービス:NLPは、カスタマーサービスアプリケーションが、顧客のコメントやサポートチケットのコメントまたは不満を理解し、対応や解決のために適切な部門に転送できるようにします。
自然言語処理のメリット
NLPには数え切れないほどのメリットがあります。ここでは、特に大きなメリットをいくつかご紹介します。
- 効率:NLPは機械学習を使用して大量のテキストをすばやく理解できるため、データの爆発的な増加に伴う最適化のメリットもより大きくなります。また、テキストを要約する機能により、ますます高まるテキスト処理のニーズにも対応します。大量の文章を分析してより楽に読める文章を提示することで、Webの探索をよりすばやく簡単にします。
- アクセシビリティ:NLPの最も重要な側面の1つは、音声からテキストへの変換、テキスト音声合成、テキストの要約など、視覚、言語、聴覚、運動、認識などに障害のある人々が利用できる支援テクノロジーへの活用です。
- 言葉の壁をなくす:自動翻訳を利用することで、人々は母国語以外の言語でWebサイトやアプリケーションのテキストを読むことができます。他言語のテキストを翻訳する機能は、旅行やビジネス、そして重要なコミュニケーションにおける障壁を取り除くのに大いに役立ちます。
- ハンズフリーの利便性:NLPベースのシステムはハンズフリーでの利用を可能にします。たとえば運転中にハンドルから手を離すことなく道順を検索したり、テキストメッセージに返信したりできます。
自然言語処理の課題
NLPは数多くのメリットをもたらす一方で、ユーザーにとってはいくつかの課題もあります。
- 曖昧さ:NLPに関しては、いくつかの異なる種類の曖昧さがあります。
- 語彙の曖昧さ:同じ単語に複数の意味がある。(「Jane is looking for a match. (ジェーンは結婚相手を探している/ジェーンは火をつけるマッチを探している)」)
- 構文の曖昧さ:特定の文の中のある語を複数の意味に解釈できる。(「I saw a child with a telescope. (望遠鏡で子どもを見た/望遠鏡を持った子どもを見た)」。子どもが望遠鏡を持っていたのか、それとも望遠鏡を通して子どもを見たのか?)
- 参照の曖昧さ:文中で使われている代名詞が複数の人物に当てはまる可能性がある。(「Maria spoke to Louise. She said, 'I am hungry.' (マリアはルイーズに話しかけた。彼女は『お腹がすいた』と言った)」。お腹がすいたのは誰か?)
- センチメント分析:人間の言語を理解するためには、往々にして熟語、スラング、専門用語、皮肉などを理解しなければならないため、センチメント分析には課題がつきまといます。たとえば、「This pair of sunglasses is totally sick. (このサングラスめちゃくちゃやばい)」というフレーズは、自動センチメント分析では否定的な意味に解釈される可能性が高いでしょう。
- バイアス:NLPのトレーニングデータ自体は客観的ですが、どのデータを使用するかを選ぶ際にはバイアスがかかります。性別、人種、性的指向に対して偏見のある言葉はトレーニングデータから削除できますが、データには依然として代表性バイアスがかかり、少数派のサンプル数が少なくなる可能性があります。
自然言語処理の未来におけるAIと機械学習の役割
人間はコンピューターやスマートフォンなどのデバイスにますます依存するようになっており、NLPの価値と重要性は今後も高まり続けるでしょう。自動アシスタントが広範囲に普及し、コンピューターやモバイルデバイスが現代の生活にさらに深く組み込まれていくかどうかは、自然な話し方でデバイスに理解してもらえるかどうかにかかっています。
AIと機械学習は、NLPの未来の鍵を握っています。NLPが今後どのように進歩し、どの統計的手法が最も広く普及するかは、AIと機械学習にかかっています。これまで、NLPの主な制約は、人間にとって自然な対話を生み出すために必要な膨大なデータ量と、それを実現するための速度にありました。AIと機械学習を組み合わせることで、これらの障壁を乗り越え、NLPベースのアプリケーションによるリアルタイムの対話を実現し、ありとあらゆる人間の話し言葉をより正確に理解できるようになります。
自然言語処理活用の今後の展望
現在NLPが活用されている事例はすべて、NLPの機能が進歩するにつれて高機能化し、さらに普及が進んでいくでしょう。たとえば、NLPをツールキットに追加することで、データを扱う人々は、データの操作や処理のエキスパートにならなくても、テクノロジーをより身近に利用できるようになります。ITジェネラリストの役割はますます拡大していますが、NLPのようなテクノロジーを導入することで、チュートリアルの助けを借りて、エキスパートにならなくてもITシステムと対話できるようになります。また、ビジネスにおいては、NLPはより現実的で役立つカスタマーサービスを提供するとともに、コンピューターとの日々の対話をより効率的なものにします。バーチャルアシスタントの成長は、システムの使いやすさと結果の正確さに大きく依存しており、そのすべてがNLPにかかっています。NLPの未来はAIの未来と密接に結び付いており、その逆も同様です。
コンピューティングの成長はデータにかかっており、それらのデータの多くは、構造化テキストと非構造化テキストの文書です。データ革命が進む中で、データと人間が関わる場面で登場するのは、文書や話し言葉であることがほとんどです。データを人間の言語に、あるいはその逆にすばやく簡単に変換できる能力は、データ革命の継続的な進化にとって非常に重要です。NLPは、仕事でも日常生活でも、持続可能で長期的かつ価値ある支援とメリットを人々に提供するために、その能力を向上させています。
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