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デジタルレジリエンスを強化するAIの理念
今後の製品戦略にAIを取り入れてサイバーセキュリティとオブザーバビリティの成果を向上させるための、Splunkの3つの戦略をご紹介します。
自然言語処理(NLP)とは、人間の自然な話し言葉を処理し、理解し、再現するようにコンピューターに学習させる手法です。
AlexaやSiriなどの音声アシスタントから、ChatGPTなどの生成AIチャットボットまで、NLPは、テクノロジーで人間のようなコミュニケーションを実現するうえで重要な役割を果たします。
この記事では、NLPの種類、その仕組み、NLPの一般的なタスクと用途について説明し、AI (人工知能)と機械学習がNLPにどのように役立っているかを解説します。さらに、NLPの課題とメリット、および将来の展望についても説明します。
NLPの概念は、1950年代にコンピューターサイエンスの先駆者であるアラン・チューリングが「イミテーションゲーム」(後のチューリングテスト)と呼ばれるものを提唱したときから存在します。
このテストは、人間の審査員がテキストのみを使った会話を通じて一連の質問を行い、審査員からは姿を確認できない回答者が人間かコンピューターかを判別するというものです。人間がそれを判別できなければ、そのコンピューターは「チューリングテストに合格した」ことになり、これはしばしばAIやNLPの最終目標とされています。
アラン・チューリングは、AIおよびNLPベースのプログラムのための「チューリングテスト」を開発したコンピューターサイエンティストです。
NLPにとって重要なのは、膨大な量の人間の話し言葉(文字や音声)を取り込み、処理し、分析し、意味を解釈して正しく応答できる能力です。研究領域としては、以下の分野の要素を合わせ持っています。
最終的な目標は、人間同士の対話にできるだけ近い方法で、人間がコンピューターやデバイスとやり取りできるようにすることです。そのために、テキストのベクトル化と呼ばれるプロセスを使用してコンピューターが理解できる形式に言葉を変換します。このプロセスでは、数値ベクトル(数値の配列)を各単語に割り当て、それをシステムの辞書と照合します。
照合するデータの量が十分であれば、機械学習でこのタスクをさらに効率化できます。NLPシステムは機械学習を利用して単語の意味についてより正確な推論を行い、自動的に辞書を拡充していくため、さらに高速で正確な検索が可能になります。
NLPシステムは機械学習アルゴリズムを使用してトレーニングされます。このアルゴリズムに特定のデータが与えられ、単語とそれに関連付けられた数値の間の相関関係をシステムに学習させます。一度トレーニングしたシステムは、機械学習を利用して、新しい単語、新しいコンテキスト、新しい意味を学習し続けることができます。
NLPモデルには、主に3つの種類があります。
NLPモデルは、シンボリックNLP、統計的NLP、ニューラルNLPの3つに大別されます。
NLPの仕組みを理解するために、NLPの構成要素を確認しましょう。これらは、NLPのコア機能の実現に密接に関係しています。
NLUはNLPの構成要素であり、人間の言語をマシンで読み取り可能な形式に変換するものです。NLPとNLUは、機械学習と非構造化データを使用するという点で似ていますが、NLUは特に、コンピューターが人間の言語の意味と構文を理解できるようにするためのプログラミングの側面に重点を置いています。
たとえば、カスタマーサービスの自動化では品詞タグ付けが使用されます。ここでは、カスタマーサービスチケットをコンテキストに基づいて理解および解析し、チケットを正しい部門に転送することにNLPシステムが利用されています。
NLUがコンピューターに人間の言語を理解させることに重点を置いているのに対し、NLGはコンピューターに言語を生成させることに重点を置いています。NLGは、コンピューターが特定のデータセットに基づいて、自然言語で記述したり話したりすることを可能にします。たとえば、テキスト音声合成はNLGを応用したものです。
NLPは、音声を認識して人間の言語を生成するためにさまざまなデータセットを使用します。たとえば、ビデオ内の会話やスキャンした文書や画像に含まれるテキストデータなど、データが入力テキストや音声形式ではない場合、NLPは言語処理と光学文字認識(OCR)を使用して、データを検索可能なテキストに変換します。
機械学習、AI、NLPという用語は、それぞれが密接につながっています。コンピューターサイエンスのコンテキストでのNLPは、AIや機械学習の分野の1つと見なされることが多くあります。また、機械学習の手法は、現代のNLPの重要なコンポーネントとして扱われます。一般に、NLPと機械学習はどちらもAIのサブセットと考えられています。
最も初期のシンボリックNLPは、あらかじめ定義された辞書の定義と単語を照合していました。機械学習は、NLPベースのシステムに新しい単語やルールを学習させ、データを使用してNLPのコアタスクを実行できるようにすることで、NLPの応用範囲を大きく広げました。
また、機械学習は今後のNLPの発展にとっても極めて重要です。NLPシステムが利用できるデータが多いほど、より正確かつ高速で、対話的な使いやすいシステムになります。機械学習を利用することで、自然言語処理システムは利用可能なデータをますます大量に取り込み、処理できるようになります。
AIシステムにNLPを組み込めば、テキストや話し言葉を理解して、ユーザーと効果的にコミュニケーションできるようになります。AIのインテリジェンスと適応力を高めて、推論と文脈理解の能力を強化し、人間のような応答を実現できます。NLPはさまざまなAI用途で重要な役割を果たします。いくつか例をご紹介します。
NLPでは具体的に何ができるでしょうか?NLPが機能するためには、質問のテキストを理解し(テキスト分類)、その処理方法を決定するためのさまざまなタスクを実行する必要があります。これらのタスクは、人間の脳が言語を理解して解釈する方法に似ています。
NLPは、電話の自動応答ツリー、音声からテキストへの変換、GPSシステム、さらにはAmazon社のAlexaやApple社のSiriなどの自動アシスタントまで、幅広い用途に活用されています。また、ある言語から別の言語へのテキストの自動翻訳、バーチャルアシスタントのような口頭でのコマンドへの応答、大量のテキストの分析や要約などにも利用されています。ここでは、比較的一般的な応用例をいくつかご紹介します。
NLPの仕組みと用途がわかったところで、次に、NLPを利用することで大きなメリットを得られるユーザーについて見ていきましょう。
NLPには、企業向けから消費者向けまで、実際に利用されている多くの応用例があります。たとえば、以下のような人がNLPを使用しています。
NLPは、消費者やビジネスプロフェッショナル、さらにはソーシャルメディア、医療、セキュリティのエキスパートまで、あらゆる人々に利用されています。
NLPには数え切れないほどのメリットがあります。ここでは、特に大きなメリットをいくつかご紹介します。
NLPは機械学習を使用して大量のテキストをすばやく理解できるため、データの爆発的な増加に伴う最適化のメリットもより大きくなります。また、テキストを要約する機能により、ますます高まるテキスト処理のニーズにも対応します。大量の文章を分析してより楽に読める文章を提示することで、Webの探索をよりすばやく簡単にします。
NLPの最も重要な側面の1つは、音声からテキストへの変換、テキスト音声合成、テキストの要約など、視覚、言語、聴覚、運動、認識などに障害のある人々が利用できる支援テクノロジーへの活用です。
自動翻訳を利用することで、人々は母国語以外の言語でWebサイトやアプリケーションのテキストを読むことができます。他言語のテキストを翻訳する機能は、旅行やビジネス、そして重要なコミュニケーションにおける障壁を取り除くのに大いに役立ちます。
NLPベースのシステムはハンズフリーでの利用を可能にします。たとえば運転中にハンドルから手を離すことなく道順を検索したり、テキストメッセージに返信したりできます。
NLPは数多くのメリットをもたらす一方で、ユーザーにとってはいくつかの課題もあります。
NLPに関しては、いくつかの異なる種類の曖昧さがあります。
人間の言語を理解するためには、往々にして熟語、スラング、専門用語、皮肉などを理解しなければならないため、センチメント分析には課題がつきまといます。
たとえば、「This pair of sunglasses is totally sick. (このサングラスめちゃくちゃやばい)」というフレーズは、自動センチメント分析では否定的な意味に解釈される可能性が高いでしょう。こうした問題を回避するには、NLPやAIモデルをトレーニングする担当者がモデルの適切な調整方法を考える必要があります。
NLPのトレーニングデータ自体は客観的ですが、どのデータを使用するかを選ぶ際にはバイアスがかかります。性別、人種、性的指向に対して偏見のある言葉はトレーニングデータから削除できますが、データには依然として代表性バイアスがかかり、少数派のサンプル数が少なくなる可能性があります。
人間はコンピューターやスマートフォンなどのデバイスにますます依存するようになっており、NLPの価値と重要性は今後も高まり続けるでしょう。自動アシスタントが広範囲に普及し、コンピューターやモバイルデバイスが現代の生活にさらに深く組み込まれていくかどうかは、自然な話し方でデバイスに理解してもらえるかどうかにかかっています。
AIと機械学習は、NLPの未来の鍵を握っています。NLPが今後どのように進歩し、どの統計的手法が最も広く普及するかは、AIと機械学習にかかっています。これまで、NLPには主に以下のような制約がありました。
AIと機械学習を組み合わせることで、これらの障壁を乗り越え、NLPベースのアプリケーションによるリアルタイムの対話を実現し、ありとあらゆる人間の話し言葉をより正確に理解できるようになります。
現在NLPが活用されている事例はすべて、NLPの機能が進歩するにつれて高機能化し、さらに普及が進んでいくでしょう。たとえば、NLPをツールキットに追加することで、データを扱う人々は、データの操作や処理のエキスパートにならなくても、テクノロジーをより身近に利用できるようになります。
ITジェネラリストの役割はますます拡大していますが、NLPのようなテクノロジーを導入することで、チュートリアルの助けを借りて、エキスパートにならなくてもITシステムと対話できるようになります。また、ビジネスにおいては、NLPはより現実的で役立つカスタマーサービスを提供するとともに、コンピューターとの日々の対話をより効率的なものにします。バーチャルアシスタントの成長は、システムの使いやすさと結果の正確さに大きく依存しており、そのすべてがNLPにかかっています。NLPの未来はAIの未来と密接に結び付いており、その逆も同様です。
コンピューティングの成長はデータにかかっており、それらのデータの多くは、構造化テキストと非構造化テキストの文書です。データ革命が進む中で、データと人間が関わる場面で登場するのは、文書や話し言葉であることがほとんどです。データを人間の言語に、あるいはその逆にすばやく簡単に変換できる能力は、データ革命の継続的な進化にとって非常に重要です。NLPは、仕事でも日常生活でも、持続可能で長期的かつ価値ある支援とメリットを人々に提供するために、その能力を向上させています。
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Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。