公開日:2022年10月4日
企業におけるITインフラとは、サーバーからソフトウェア、デスクトップコンピューター、さらにはそれらをつなぐネットワーキングコンポーネントに至るまで、ビジネスのニーズに合わせてIT運用を強化するために必要なすべてのコンポーネントを指します。ITインフラは意味の広い言葉であるため、その要素や連携方法は常に進化しています。これらの変化を先取りし、ITインフラの効率性、有効性、安全性を維持するのがIT部門の任務です。
ただし、IT部門の職務はITガバナンスチームが監督します。ITガバナンスチームは、他のITサービスチームが従うルールも作成します。エンタープライズアーキテクチャはこれらのルールを実践するものであり、アーキテクチャガイダンスの文書化、新しいITリソース購入の代替案の分析、ルールセットに照らして新しいコードを承認する委員会の統制、ソフトウェアおよびハードウェアのポートフォリオのレビュー、重複しているリソースや十分に活用されていないリソースの廃止などによってこれを実現します。
- 管理には、組織のコンピューターインフラの維持管理、新規ユーザーの追加とサポート、ソフトウェアアップグレードの実行、ライセンスの保守、適用される法律の遵守の監督、潜在的な脅威に対するネットワークの保護、データストレージの管理などが含まれます。
- テクニカルサポートには、ハードウェアとソフトウェアの購入とインストール、ハードウェアとソフトウェアの維持管理、リアルタイムでの問題に関するユーザーのサポート、資産管理、バックアップサービスとリカバリーサービスの実行、ネットワークの問題のトラブルシューティング、電話システムの保守など、ハードウェアとソフトウェアに関連するサービスが含まれます。
- 通信は、電子メール、ビデオ、Web会議システムに関連するハードウェアとソフトウェア、それぞれのアカウントの管理、それらのシステムのセキュリティの確保、ユーザーのサポート、管理者へのプランニングのアドバイスなどを行います。
- プログラミングでは、ビジネスアプリケーションやデータベースの作成と維持管理など、ソフトウェアの開発と保守に関するさまざまな作業を行います。
- Webサイトサービスには、企業のWebサイトやイントラネットサイトの開発や保守が含まれます。
この記事では、ITインフラの各コンポーネントとそれらがどのように連携するかを説明し、従来型のオンプレミスインフラ、クラウド、およびハイブリッドインフラの3種類のITインフラについても解説します。
ITインフラの例
ITインフラとは、さまざまなIT機器、ハードウェアとソフトウェア、さらにはネットワークと設備までを含む意味の広い言葉です。
物理的なハードウェアには、ノートPC、ルーター、データセンターなどがあり、ソフトウェアにはファイアウォール、アプリケーション、データ分析などが含まれます。
物理ハードウェアには以下のものがあります。
- デスクトップコンピューター
- ノートPC
- サーバー
- データセンター
- ハブ
- ルーター
- スイッチ
ソフトウェアコンポーネントには以下のものがあります。
- オペレーティングシステム
- Webサーバーソフトウェアアプリケーション
- ファイアウォール
- 以下のような機能別ソフトウェアプラットフォーム:
- 電子メール
- アプリケーション
- 顧客関係管理(CRM)
- コンテンツ管理システム(CMS)
- エンタープライズリソースプランニング(ERP)
- データベース管理
- データ分析
- IT運用管理(ITOM)
- セキュリティ
ネットワークは、リソースを共有するために接続された2台以上のコンピューターやデバイスで構成されています。ネットワークは通常、そのネットワークに含まれる領域によって定義されます。ネットワークにはさまざまな種類があります(インターネット自体も含む)。一般的なエンタープライズネットワークには以下のものがあります。
- ローカルエリアネットワーク(LAN)
- ワイドエリアネットワーク(WAN)
- メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)
- エンタープライズプライベートネットワーク(EPN)
- 仮想プライベートネットワーク(VPN)
設備とは、ITインフラの物理的な施設、機器を収容する部屋(サーバールームやデータセンターなど)、IT環境全体を接続するネットワークケーブルや関連コンポーネントを指します。
ITインフラの主な種類
ITインフラの主な種類は、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドの3つです。
オンプレミスインフラ:従来のITインフラでは、データセンター、データストレージ、各コンポーネントの接続に使用されるネットワーク機器といったITインフラの構成要素は組織が所有し、組織の敷地内(多くの場合は「オンプレミス」と呼ばれる)に設置されます。IT部門は従来のインフラのあらゆる面の維持管理を担っており、機器の増加やインフラコンポーネントのアップグレードや変更によって要求は増すばかりでした。オンプレミスインフラでは、データセンターやその他のコンポーネントを収容するための物理的なスペースを組織が用意する必要があります。
クラウドインフラ:クラウドインフラは、ほとんどの場合、組織の敷地外(「オフプレミス」)にあり、その組織が構築したプライベートクラウド上やパブリッククラウド(アマゾン ウェブ サービス(AWS)やGoogleといったサードパーティのクラウドサービスプロバイダーが所有するデータセンター)上にある場合もあります。サードパーティのクラウドインフラを利用すると、大規模で高価なデータセンターや、ITインフラの運用に必要な多くの機器を維持する必要がなくなります。また、インフラはサードパーティプロバイダーが所有して維持管理するサーバー上に構築されており、ほぼ無制限の容量を提供しているため、組織のニーズが高まった場合や、従業員や顧客に新たなサービスや機能を提供する必要が生じた場合に、追加のサーバースペースの確保やプロビジョニングを容易に行えます。
ハイブリッドインフラ:多くの企業がインフラにハイブリッドクラウドのアプローチを採用しています。これは主に、クラウドに移行するには計画性と慎重な戦略が必要になるためです。組織によっては、データストレージなどのITインフラの一部をクラウドベースのインフラに移行する一方で、一部のハードウェアやソフトウェアを自社のオンプレミスネットワーク上で維持することがあります。たとえば、厳密な情報セキュリティガイドラインに従う必要がある医療や金融サービス業界では、機密情報をオンプレミスに保存することを選択します。ビジネス運用が大規模なサーバーベースのアプリケーションに大きく依存している組織は、これらのサービスをクラウド環境やマルチクラウド環境に移行するために、さらなる時間とプランニングが必要になるかもしれません。
ITインフラとハードウェアの関係
ハードウェアはITインフラに不可欠なコンポーネントです。デスクトップコンピューター、プリンター、ルーターなどの物理的なハードウェアコンポーネントが存在し、インフラが結合してはじめて、ビジネス関連のアクティビティへとつながります。物理的なコンポーネントがなければ、ITインフラは現実世界での存在意義を発揮できず、実際の仕事の成果を生み出すことはできません。
ITインフラの各レベル
「ITインフラ」には多くの定義がありますが、ITインフラの各レベルとは、一般に、パブリック、企業、事業部門を指します。
パブリックITインフラ:パブリックITインフラは、一般利用が可能なネットワークと機器で構成されており、州や地方自治体が所有している場合や、民間企業が所有して一般に提供している場合などがあります。パブリックITインフラには、インターネット接続、公衆交換電話網(従来の固定電話サービス)、移動通信ネットワーク、ケーブルシステムなどが含まれます。
企業のITインフラ:企業のITインフラには、企業がビジネスを行うために使用するハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、IT設備が含まれます。また、電子メール、Webサイト、イントラネットに加え、SaaS (Software-as-a-Service)ビジネスアプリケーションを実行するプライベートクラウドネットワークも含まれます。
事業部門のITインフラ:組織内の個々の事業部門には、それぞれの職務に特化したハードウェアとソフトウェアをサポートする独自のITインフラがあります。たとえば、サプライチェーン管理ソフトウェアや、マーケティングチームやセールスチームの顧客関係管理(CRM)プラットフォームなどです。製造業の事業部門には、コンピューター支援設計やコンピューター支援製造(CAD/CAM)といった独自のソフトウェアプラットフォームが導入されています。財務部門には、給与計算や請求書作成などの業務システムが導入されています。このような事業部門固有のアプリケーション(およびその他多数)とそれらに関連する周辺デバイスは事業部門のITインフラに分類されます。
ネットワークインフラとITインフラの違い
ネットワークインフラとは、具体的には、デスクトップコンピューター、サーバー、周辺機器、およびその他のコンポーネントが、組織の内外を問わず、互いに安全かつ効果的に通信するためのハードウェア、ソフトウェア、システムを指します。
ITインフラは、組織のあらゆるネットワークインフラに加え、IT部門が管理するハードウェアやソフトウェア、関連する通信機器、ビデオ会議システムや遠隔会議システムなど、組織内のあらゆるシステムを含む大きなカテゴリです。
ネットワークインフラは、組織のすべてのシステム間の通信と、組織が外部と通信するための基盤を提供するという点で、現代のITインフラ運用にとって極めて重要です。
ネットワーキングコンポーネントのためのITインフラ
ネットワーキングコンポーネントのためのITインフラとは、より大きなカテゴリとしてのITインフラの中のもう1つのサブセットです。ネットワークインフラデバイスは、データ、アプリケーション、サービス、およびマルチメディアに必要な通信を転送するネットワークのコンポーネントです。これらのデバイスには、ルーター、ファイアウォール、スイッチ、サーバー、ロードバランサー、侵入検知システム、ドメインネームシステム、ストレージエリアネットワークなどが含まれます。
データストレージのためのITインフラ
データストレージのためのITインフラとは、組織のデータストレージシステムの一部として使用されるハードウェア、ソフトウェア、ネットワーキングコンポーネントを指します。これには、サーバーなどのハードウェア、データベースやデータベース管理システムなどのソフトウェア、そしてサーバールームやデータセンターなどの物理的な場所が含まれることもあります。データストレージのためのITインフラは、組織の全ITインフラ内の1つのコンポーネントです。
従来のオンプレミスインフラでは、この言葉は敷地内の物理サーバーと、それらをサポートするソフトウェアや機器を指します。クラウドインフラでは、組織がリモートでアクセスするオフプレミスの仮想サーバーや機器もこのカテゴリに含まれます。
ITインフラサービスの役割
ITインフラサービスは、いくつかの異なるものを指す場合があります。組織内のITインフラサービスには、以下のものが含まれます。
- 管理
- テクニカルサポート
- 通信
- プログラミング
- Webサイトサービス
ITインフラの管理とIaaS (Infrastructure-as-a-Service)の関係
ITインフラサービスは、ITインフラの監視、分析、保守などの主要機能をサードパーティにアウトソースすることを指す場合もあります。何に基づいて意思決定を行うかは、企業の規模やその他の要因によって異なります。中小企業(SMB)は監視、分析、保守のサービスをアウトソースすることが多く、大企業はそれらを自社で行う傾向が強くなっています。また、クラウドインフラ環境では、あらゆる規模の組織でアウトソーシングが一般的に行われており、IaaS (Infrastructure-as-a-Service)のように、サービスだけでなくインフラ自体もアウトソースされることがあります。小規模な企業から大手サービスプロバイダーまで、幅広いベンダーがITインフラサービスを提供しています。
ITインフラの管理
企業のITインフラの運用は、従来からIT部門の役割であり、ITインフラの物理的な施設、ネットワークとコンポーネント、ITインフラを構築する基盤となるハードウェアとソフトウェア、組織の人々が業務に使用するハードウェアとソフトウェアの保守を担当します。IT部門の初期の役割は、何かが壊れたり動かなくなったりするのを待つという、受け身の役割がほとんどでした。また、障害を防ぐために定期的なメンテナンスが行われていました。
現代の企業では、機械学習やAI (人工知能)を使用して障害を未然に予測するデータドリブンなIT監視、測定ツール、分析ツールを使用することでIT部門の役割に大きな拡張性がもたらされ、ITチームはエンドユーザーのエクスペリエンスに影響を与えるダウンタイムをプロアクティブに防ぐことができます。IT運用管理(ITOM)とIT運用分析(ITOA)の実践は、AIによるIT運用(AIOps)やオブザーバビリティなどのデータドリブンな手法を通じて大きな効果を上げています。
AIOps:AIOps (AIによるIT運用)とは、ビッグデータにAI (人工知能)や機械学習を適用してIT業務を自動化、改善する、ITの運用手法を指します。AIを利用することで、大量のネットワークデータやマシンデータを自動的に分析し、パターンを検出して、既存の問題の原因を特定したり、将来の問題を予測して予防に役立てたりできます。
「AIOps」という言葉は、2016年にガートナー社によって提唱されました。ガートナー社は、『AIOpsプラットフォームのマーケットガイド』の中で、AIOpsプラットフォームを、「ビッグデータとAI (人工知能)または機械学習機能を組み合わせて、可用性やパフォーマンスの監視、イベントの相関付けと分析、ITサービスの管理と自動化といったIT運用のさまざまなプロセスやタスクを改善または部分的に代替するようなソフトウェアシステム」と説明しています。
オブザーバビリティ:オブザーバビリティとは、システムの出力を調査することによって内部の状態を測定する能力を指します。出力からの情報すなわちセンサーデータのみを使用して現在の状態を推定できるシステムは「オブザーバビリティがある」とみなされます。この言葉は最近の流行語ではなく、制御理論(自己調整システムについて説明し理解するための理論)に関連して数十年前に提唱された用語に由来します。ただし今日では、分散型ITシステムのパフォーマンス向上の文脈でよく使用されます。この場合のオブザーバビリティは、メトリクス、ログ、トレースの3種類のテレメトリデータを使用し、ユーザーインターフェイスを介して分散システムを詳細に可視化し、さまざまな問題の根本原因の究明やシステムのパフォーマンス向上につなげることを意味します。
ITインフラの未来は本当にクラウドインフラなのか?
ITインフラの未来は間違いなくクラウドにあります。クラウドコンピューティングのメリットを実感する企業が増えるにつれ、ネットワークインフラの要素はますますクラウドへと移行し、オンプレミスに物理的に設置されるのではなく、仮想化される(オフプレミスに配置される)ようになるでしょう。クラウドコンピューティングは従来のオンプレミスインフラよりもコスト効率が高いことがわかっています。また、ネットワークのプロビジョニングがはるかに柔軟になり、仮想化技術などを通じて新しいアプリケーション製品やソフトウェア製品の展開にかかる時間を大幅に短縮できるほか、物理的なITインフラの保守にかかるコストやIT部門の負担を軽減できます。
データでITインフラを最適化する方法
ITインフラの監視、測定、保守に関しては、機械学習とAI (人工知能)を使用して、ハードウェアやソフトウェアといったITインフラの個々のコンポーネントの整合性と運用効率を維持するデータドリブンな手法が今後実践されるようになるでしょう。オブザーバビリティとは、システムの出力を調査することによって内部の状態を測定する能力を指します。現在、オブザーバビリティは、ITインフラの稼動状態を維持し、障害を防ぎ、ネットワークとそのさまざまなコンポーネントで問題が発生する前にそれを予測するための最善の方法を提供しています。
ITインフラは、組織にとって最も重要で、最もコストがかかり、最も流動的な要素の1つです。現代の組織が成功するには、効果的かつ効率的なITインフラが不可欠ですが、そのインフラも常に変化していきます。組織のニーズは常に進化しており、インフラのコンポーネントもそれに合わせて進化しなければなりません。それと同時に、IT組織の重要性も高まり続けており、彼らの仕事を支援するために設計されたツールもまた進化しています。組織は、自社のデータを利用してインフラから最大限の価値を引き出せるようにしなければなりません。また、運用をどれだけクラウドに移行し、何をオンプレミスに残すべきか、そしてそのバランスが時間とともにどう変化するかを定義した包括的で一貫したクラウドインフラ計画を策定する必要があります。
IT/オブザーバビリティに関する予測
驚きに勝るものはありません。すべてを受け止める準備を整えておきましょう。Splunkのエキスパートが予測する、来年の重要なトレンドをご確認ください。