膨大な量にのぼるVPN接続のアクセスログを解析し、ログから抽出したリモートアクセスの時間と、自己申告で勤怠管理システムに入力した勤務時間を比較し、その差を容易に確認できるデータ活用基盤が必要だった
膨大なVPNのアクセスログを解析し、勤怠管理システムに入力した時間との差異を容易に確認できる基盤が必要だった
リモートワークのルールの周知と、勤務状況の可視化によってきめ細やかな労務管理を実現した
SCSK株式会社では、長時間労働の常態化の解消を目的とした働き方改革に業界に先んじて2013年度より本格着手してきました。月間平均残業時間20時間未満および年次有給休暇取得率100%を達成する「スマートワーク・チャレンジ」、従業員の健康増進を図る「健康わくわくマイレージ」、そしてワークスタイル変革を実現する「どこでもWORK」を3本の柱とし、コロナ禍以前より働き方改革の環境を整備してきた結果、収益力向上や社員満足度の向上といった効果を挙げ、また、先進的な働き方改革の取り組みは、社外からも評価され、数々の賞を受賞しています。
一方で、リモートワークをはじめとする働き方の多様化は、従業員がどれだけ仕事をしているのか正確に把握することが難しく、自己申告で勤怠システムに入力された勤怠情報とリモートアクセスをはじめとした、その他のシステムの情報を組み合わせて管理する仕組みに限界を感じていました。そこで同社では、2018年10月よりSplunk Enterpriseを導入。それまでExcelにより行っていた分析をSplunkにて実施することで、勤怠状況の可視化や健康管理などの対応をきめ細かく行えるようになりました。
SCSK株式会社 プラットフォームソリューション事業部門 ITエンジニアリング事業本部 ミドルウェア第二部長の國松 比呂子氏は「これまで、IT業界全体として長時間労働が常態化する課題があった。SCSKとしても、長時間労働を是正する働き方改革の実現は大きなテーマだった」と話します。
これまで、同社では正しい労務管理を行えるよう、IDカードと勤怠システムを連携させ、IDカードによる入退館の打刻時間と、勤怠システムに入力された出退勤の時刻が、一定時間食い違うとアラートが通知されるなどの仕組み整備を進めてきました。
そして、2017年8月からは、それまで一部の部署で展開してきたリモートワークを全社展開しました。自宅などの遠隔地でリモートワークをした場合、従業員が勤怠管理システムに勤務時間を自己申告で入力する運用ルールですが、いくつかの問題がありました。
たとえば、「勤怠管理システムへの入力漏れなどがあると、勤務時間を過少に申告したことになる」といった課題です。また、社外から社内のPCにはVPN接続でアクセスしますが、この際「リモートワーク自体は終わったとしても、利用者がVPN接続をログアウトせずに、そのまま放置してしまうと、あとでVPNのアクセスログと勤怠情報を突き合わせたときに、正しく勤務時間が計上されているかを判断できない」という問題もありました。
プラットフォームソリューション事業部門 ITエンジニアリング事業本部 ミドルウェア第二部 第三課長の根本 裕一氏は、「それまでの勤怠管理の運用は、オフィスルームへの入退室時刻や、勤務システムに入力したデータをExcelで分析していたが、VPNのアクセスログが分析対象として増えることとなり、新しい方式の検討が必要となった」と説明します。
「膨大な量にのぼるVPN接続のアクセスログを解析し、ログから抽出したリモートアクセスの時間と、自己申告で勤怠管理システムに入力した勤務時間を比較し、その差を容易に確認できるデータ活用基盤が必要だった」のです。
データ活用基盤の選定は2018年より本格化しました。プラットフォームソリューション事業部門 ITエンジニアリング事業本部 ミドルウェア第二部 第三課 大竹 雄樹氏は「既存の勤怠システムの改修なども俎上にのぼったが、Splunkの導入に至った」と話します。
「大量のログデータを処理でき、自社開発のアプリケーションなど、多種多様なログを一元的に扱えることがSplunkの強み」とのこと。また、一般的に、時間表示の異なるログデータを取り込む際は、突合のためのデータ変換が必要ですが、そうしたデータ加工の容易さや開発を柔軟に低コストで行える点も決め手となりました。
トライアルは2018年6月頃より開始されました。「必要な要件をまとめながら検証を行うとともに、労務部主導にて、業務終了後はVPN接続を必ずログアウトするようリモートワークの適切な勤怠管理のためのルールの周知を行った」と大竹氏は説明します。そして、2018年10月には全社展開と、導入を決めてからわずか2~3カ月と短期間でのリリースに成功しました。
Splunkの導入効果について、國松氏は「リモートワークのルールの周知と、勤務状況を可視化する仕組みが整備された」と話します。
また、大竹氏も「リモートアクセスの効率的運用が実現された」と説明します。Splunk導入前は、リモートワークの業務後に、ちょっとしたメールの確認があってVPNに接続するケースがありました。業務終了時には勤怠情報を入力し、VPNをログアウトすることで、「両者の時間に一定の差分が出ると上長にアラートが通知される」のですが、「Splunkによる勤怠管理が徹底されてきてからは、不用意なアクセスが少なくなった」ことが確認されました。
特に、従来の運用では難しかった、VPNのアクセスログと、勤怠システムに入力した時刻の差異を抽出し、部署別、個人別に可視化、分析することが可能になったことで、月末の勤怠の締めを待つことなく、きめ細やかに勤怠状況把握することができるようになりました。
今後も「Splunk」を活用し、さらなるデータ活用が検討されています。たとえば、働き方改革関連法に規定されている、労務管理の一貫として、「勤務間インターバル制度」の仕組みにSplunkが活用できるのではと考えています。これは、終業時刻から、次の始業時刻の間に一定時間の休息を設定する制度ですが、「Splunkにより、仕組みの面からサポートできるよう、現在の状況の可視化、分析に対するニーズは今後も高まっていくだろう」と大竹氏は話してくれました。
また、PoC(概念実証)での取り組みでは、残業時間の予測もテーマにのぼっています。「これまでのデータから予測される社員と残業時間を予測する」取り組みで、今後、蓄積されたデータ量が増えてくれば、分析精度を上げることができるのではないかと、実データでの検証を検討しているということです。
最後に、國松氏は、様々なビジネスニーズに沿って、分析や知見を生み出し、対策や対応を可能にする「データ可視化と活用」の領域で、Splunkには今後も価値を提供していただきたいとコメントしてくれました。