変化の激しい今日の世界において、ダイバーシティとインクルージョンを推進する取り組みを続けることの重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。私たちが使用する言葉は、さまざまな問題に対する私たちの考え方に極めて大きな影響を及ぼします。テクノロジーやサイバーセキュリティの分野では、「ブラックリスト」や「ホワイトリスト」といった用語が何十年も前から普通に使われてきました。しかし、これらの用語が排他的な意味合いを意図せずもたらし続ける可能性を認識する必要があります。
この記事では、「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」がインクルーシブな用語ではない理由を考察し、インクルージョンの促進につながる代わりの用語を検討します。
「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」の語源は、17世紀初頭にまで遡ることができます。元々は労使関係に関する言葉であり、特定の条件下において、働くことを禁じられた人々(ブラックリストに登録)と特別に許可された人々(ホワイトリストに登録)を区別するために使われていました。
「ブラックリスト」という言葉の最も古い使用例は、ヨーロッパの植民地であったアメリカ大陸に大勢のアフリカ人が奴隷として強制的に送られ、重労働を強いられた暗黒の時代にまで遡ります。このような歴史的背景が、アフリカ人に対するネガティブな見方をもたらしたことは明らかで、残念ながら現代においても、構造的な人種差別の要因となっています。したがって、あらゆる個人の尊厳を認め、尊重するインクルーシブな環境を育むには、このような言葉を完全に根絶することが不可欠なのです。
その後、「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」という言葉は現代社会に広がり、コンピューターやサイバーセキュリティの分野を中心としたテクノロジーの世界で使われるようになりました。
「ブラックリスト」という言葉は現在、「受け入れ不可」、「信頼できない」という理由で除外または回避すべき人物や物事のリストという意味で使われています。たとえば、自社のWebサイトで特定のIPアドレスが不審なアクティビティを実行していることが疑われる場合、そのIPアドレスからのユーザーがWebサイトにアクセスするのを防ぐために、セキュリティチームがこうしたリストを使用することがあります。
しかし、前述の歴史的背景から、この言葉が人種差別の時代に由来し、ネガティブな意味合いでしか使われていないことは明らかです。したがって、この言葉の使用を廃止する必要があります。
一方、「ホワイトリスト」という言葉は「受け入れ可能」、「信頼できる」と見なされる人物や物事のリストという意味で使われています。「ブラックリスト」と正反対の意味を持つこの言葉には「ホワイト」という語が使われ、ポジティブな意味合いが与えられています。
この2つの言葉の意味と、それがどのような語で構成されているのかを理解すれば、仕事や私生活などあらゆる場面で、こうした言葉を使うべきではない理由がわかるはずです。
ここでは、「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」という用語がインクルーシブではないと考えられる理由を説明します。
「ブラックリスト」という言葉には「ブラック」という語が含まれているため、人種に対するネガティブな固定観念を意図せず強化してしまう可能性があります。「ブラック」を望ましくないものや有害なものに関連付けることで、気づかぬうちに有害な偏見を助長し、構造的な人種差別を強化してしまう可能性があるのです。
「ホワイトリスト」という言葉は、一見すると問題なさそうですが、「ホワイト」を好ましいものや特権的なものと見なすヒエラルキーを強化します。このような意味合いが、私たちの思考に微妙な影響を与え、人種的偏見を温存させるおそれがあります。
「ブラックリスト」という言葉は、ネガティブなものや望ましくないものを本質的に暗示しています。そのため、リストに掲載されている項目や個人をネガティブに捉えるようになるだけでなく、無意識のうちにブラックという色自体をネガティブなものと関連付けるようになるかもしれません。
さらに興味深いのは、「ブラック」という語が他のさまざまな言葉に含まれていることです。たとえば、英語には「blackmail」(恐喝)、「black sheep」(厄介者)、「black market」(闇市場)といった言葉があります。これらの表現はどれもネガティブな意味合いを帯びており、疑わしかったりいかがわしかったりする可能性がある行動、個人、場所を暗示します。しかも、注目すべきことに、どの言葉も「black」から始まっているのです。
このような言葉の使用は人々に疎外感を与える可能性があり、テクノロジーの世界で歓迎されていない感覚や居心地の悪さをもたらしかねません。あらゆる個人が、自分の所属するコミュニティ内で尊重され、評価されていると感じられるようにするには、インクルーシブな言葉を使用することが欠かせません。
(問題となる可能性があるその他の技術用語については、こちらをご覧ください。)
テクノロジー業界では、状況を変える必要性を認識し、インクルーシブで中立的な別の用語を採用する動きが広がっています。以下に、いくつかの例を示しましょう。
承認する項目や個人と制限する項目や個人を登録するリストを表す用語として、「ホワイトリスト」と「ブラックリスト」の代わりに、「アローリスト」と「拒否リスト」を使用できます。これらの用語は、色に関連付けるのではなく、許可やアクセス権に焦点を当てています。そのため、意図せず人種的な意味合いを与えてしまうことがなく、ネガティブな固定観念の助長を回避できます。
「アローリスト」と「拒否リスト」は、名前が内容を端的に示しているため、それぞれの機能と意味が明確に伝わり、曖昧さが一切ありません。
この2つの用語は、排他的な表現に頼ることなく、意味を明確に伝えます。許可と制限に焦点を当てることで、人種や民族に関連付けられることを回避しています。
「許可」と「ブロック」は、シンプルで曖昧さのない言葉であり、項目や個人のステータスを明確に表現しているため、コミュニケーションの透明性と明確性を高めることができます。
「承認」と「非承認」という言葉を利用することで、中立的なスタンスがさらに強調されるため、色に関連した影響が排除され、インクルージョンが促進されます。
「承認」と「非承認」は誰もが意味を理解できる言葉であり、誤解を招くことなく項目や個人のステータスを伝えることができます。
言葉は、自分の見方や考え方を形作る上で非常に重要であり、大きな力を持っています。インクルーシブで公平なコミュニティを目指すのであれば、特に専門的な分野や技術的な分野で日常的に使用する用語に注意することが欠かせません。
「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」という用語は、一見すると無害に思えるかもしれませんが、排他的な意味合いをもたらすという歴史的な重荷を背負っています。その代わりに、「拒否リスト」と「アローリスト」のようなインクルーシブな用語を採用することで、あらゆる人々が歓迎され、受け入れられる環境作りに向けて、小さいながらも有意義な一歩を踏み出すことができます。
インクルーシブな言葉を選ぶことは、単なる言い回しの問題ではありません。多様で公平な社会を促進するための強力な手段なのです。私たちが進化するのに合わせて、言葉も進化させることで、インクルージョンとダイバーシティを促進し、すべての人が尊重される社会を築いていきましょう。
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