データは、ビジネスにおいてイノベーションを推進し、意思決定を改善し、未来を形作るために欠かせない資産です。しかし、この貴重なリソースを効果的に管理するにはどうすればよいのでしょうか。
これに関して注目されているのが、データライフサイクル管理(DLM)、すなわちデータをライフサイクル全体にわたって管理する包括的なアプローチです。
このブログ記事では、DLMの概要、主なフェーズ、メリットについて説明し、導入を成功させるためのツールとテクノロジーを紹介します。それでは、詳しく見ていきましょう。
データライフサイクル管理(DLM)とは、ベストプラクティスに基づくポリシーベースのアプローチです。データの作成から削除まで、情報システムのデータの流れをライフサイクル全体で監視します。DLMには、保存、バックアップ、アーカイブ、廃棄などのフェーズがあり、組織は規制コンプライアンスの対象となる機密性の高いプライベートデータを管理するためにDLMを採用しています。
DLMの目的は、適切なユーザーが適切なタイミングで確実にデータにアクセスできるようにすることです。
DLMは、データのライフサイクルを通じて、組織がデータの機密性、完全性、可用性といった3つの主要な要素を維持できるように設計されています。
つまり、DLMの主な目標は次の3つです。
DLMは、データの取得、アクセス、使用、削除の方法など、あらゆるデータの処理手順を確立するのに役立ちます。これらはすべて、情報の保護と規制の遵守を目的としています。
企業で生成されるデータの急増に伴い、効果的かつ安全なデータ管理の重要性は高まるばかりです。DLM戦略を適切に導入すれば、機密データへの不正アクセスや、マルウェアなどへの感染によるデータ破損のリスクを軽減できます。
DLMの理解を深めるために、5つの主要なフェーズを見ていきましょう。
DLMのデータ収集フェーズには、次の作業が含まれます。
データの収集は、データの作成や後続のフェーズの基盤となるため、データのライフサイクルにおいて極めて重要な段階と言えます。この最初のフェーズでは、組織は以下に取り組む必要があります。
正確で関連性の高いデータがなければ、企業は情報を効果的に分析できません。また、その情報を活用して意思決定、業務の改善、および成長を促進することができません。
データの保存と管理では、データの処理、マージ、集計、分類、選択を行います。これらの作業によって、データの正確性と完全性が保証されます。
データの保存で最も広く使用されているアプローチは、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS) (いわゆるデータベース)の採用です。RDBMSでは、データソースから定期的にデータを取得し、決められた間隔でデータの保存や削除を実行して、内部のデータを管理します。
RDBMSはデータを安全に管理して保存するために利用されており、データの操作やクエリーの実行に使用されるほとんどのプログラミング言語に対応しています。たとえば、顧客関係管理(CRM)データの継続的な維持管理は、営業活動やマーケティング活動でデータに確実にアクセスしたり、データ品質の問題を回避したりするうえで欠かせません。
企業でよく使用されるRDBMSソフトウェアには、次のような製品があります。
または、非構造化データをNoSQL形式で保存することで、保存作業を軽減することもできます。NoSQLデータベースは、画像ファイルや音声ファイルなど、従来とは異なるタイプのデータを保存するのに適しています。
さらに、現実的なオプションとして、データレイクという方法もあります。データレイクは、非構造化データに対応したストレージ層であり、膨大な量のデータを保存して、AI/機械学習アルゴリズムを使用した詳細な分析を行うことができます。
組織は、このフェーズで次の要素に関連するルールや手順を確立する必要があります。
適切なチームが適切なタイミングと場所で関連データにアクセスできるようにすることが、DLMのデータ管理フェーズにおける主な目的です。
データライフサイクルにおけるデータ処理とは、一連の作業を特定の順序で行うことで生データを有用な情報に変換するプロセスを指します。これは繰り返し実行されるプロセスです。このフェーズでは、データから有用な情報を導き出すために、データの処理と計算が行われます。
このデータ処理フェーズで使用される一般的なツールは、次のとおりです。
データ処理の一般的な目的は、ビジネスに役立つインサイトや予測を導き出したり、意思決定を支援したりすることです。これには、データマイニングから機械学習アルゴリズム、分析ツールの利用まで、あらゆる作業が含まれます。企業は、業務が法的および倫理的な基準から逸脱することのないように、実際に使用するデータを監視して基準に準拠していることを保証する必要があります。
データの保存に関する規制には、次のようなものがあります。
データの共有は、データ管理において極めて重要な要素です。このフェーズでは、実際のデータ使用状況を追跡して、ビジネス上のルールや標準に準拠していることを確認します。組織間や部門間でのデータ共有は、生産性の向上やデータ管理コストの削減につながります。
通常、データ管理では、主に次の4種類のデータを共有します。
このようなデータを組織内で共有することで、企業はコラボレーションを促進してプロセスを効率化し、より多くの情報に基づいて意思決定できるようになります。その一方で、共有するデータの安全性を確保し、関連する規制に準拠しなければならないという課題も生じます。
データ共有とデータプライバシー保護のバランスを取るには、データガバナンスポリシーとデータセキュリティ対策の導入が役立ちます。
データのアーカイブは、データの保存と可用性を保証するという点で、データ管理ライフサイクルの基本的な要素の1つです。それにもかかわらず、軽視されることが少なくありません。
データを効率的に管理するには、重複データや冗長データの削除や移動が不可欠であるため、組織は有効なデータ削除ポリシーとアクションプランを実装する必要があります。データの削除とアーカイブを適切に管理すると、次のことが可能になります。
データ削除ポリシーを効果的なものにするには、データ削除の目的を達成するために必要な手順をまとめたアクションプランが必要です。たとえば、一定期間保持する必要があるデータや、法的に保持が義務付けられているデータは削除しないようにします。また、データのアーカイブでは、現在不要なデータや冗長データを移動させることで、ストレージコストを削減しながら、将来の利用に備えることができます。
つまり、包括的なデータ削除ポリシーの導入では、組織のデータニーズとデータ保持要件を理解し、予算編成と計画を適切に行うことが重要です。
効果的なDLM戦略を導入すると、貴重なビジネスデータ資産を保護できるだけでなく、データの可能性を最大限に引き出し、イノベーションと成長を促進することもできます。
ここでは、企業の戦略に組み込むべき重要な要素をいくつか紹介します。
データガバナンスポリシーは、データ管理のニーズ、責任、手順、目標をまとめた文書です。このポリシーによって、データの保護、検証、利用に関するルールと基準が確立され、正確で一貫性があり、理解しやすいデータに基づく意思決定が促進されます。
データセキュリティ対策は、機密データを不正アクセスやデータ侵害などのセキュリティ脅威から守り、データを確実に保護するのに役立ちます。
具体的には、次のような対策があります。
規制への準拠とは、政府機関や業界団体によって定められた規則と基準を遵守し、組織の運営が法律や倫理基準に従っていることを保証する取り組みです。
しかし、リソース、規制に対する理解、およびデータセキュリティ対策の欠如によって、規制への準拠が妨げられることは少なくありません。
規制に準拠するための対策として、次のような手段が挙げられます。
強力なDLM戦略は、ビジネスに次のようなメリットをもたらします。
データアクセスの強化は、ビジネスにとって極めて重要です。その理由は、データへのアクセスを強化することで、情報に基づく意思決定が促進され、効率、生産性、顧客満足度が向上するためです。
また、新たな見込み客を開拓したり、データ侵害を回避したりすることも可能になります。さらに、業務の効率化、顧客満足度の向上、データ侵害リスクの軽減も実現できます。
DLMシステムを導入すれば、データ管理に組織的なアプローチを採用し、適用される法規制に従ってデータを取得、保存、処理できるようになるため、規制への準拠に役立ちます。
データガバナンスを管理することで、データ品質が向上し、データ管理コストが削減され、すべての関係者がデータにアクセスしやすくなります。
データの効果的な管理に役立つツールやテクノロジーを利用すれば、データの安全性や正確性を確保しながら、情報に基づく意思決定を促進できます。
また、DLMのプロセスを効率化し、データの保管と使用を最適化することで、イノベーションと成長を促進することもできます。
データ管理プラットフォーム(DMP)は、オンライン、オフライン、モバイルなどのさまざまなソースからデータを収集して整理し、利用できるようにするソフトウェアシステムです。これらのデータソースには、自社が直接収集したデータ、取引先などから提供されたデータ、およびサードパーティが収集して自社に提供されたデータが含まれています。これらのデータから顧客プロファイルが作成され、ターゲティング広告やパーソナライズに活用されます。
一般的に、DMPは次のような機能を提供します。
データ分類ツールは、組織内の機密情報を特定して分類するためのソフトウェアプログラムです。このツールによって各データに属性を割り当てることができるため、組織は容易に機密データを判別して分類し、データの保護と管理を適切に行えるようになります。
よく使用される分類ツールには、次のものがあります。
ただし、データ分類ツールのメンテナンスには多くのリソースと専門知識が必要であるため、多くの場合はコストが高くなるという欠点があります。
データの監視とは、重要なビジネスデータのレビューと評価を通じて、データの品質を保証し、定められた基準に準拠していることを検証するプロアクティブなプロセスのことです。データの分析とは、データをインサイトに変換することです。つまり、データの監視と分析を行うことで、組織は質の高いデータを維持しながら、有意義なインサイトを取得して情報に基づく意思決定を下せるようになります。
データ監視ツールには、次のようなものがあります。
DLMでは一般的に、リソースの割り当てや正確なデータの収集、保存、使用、管理方法の特定などが課題となります。
このような課題に対処するために、組織は次のような対策を講じることができます。
データライフサイクル管理(DLM)と情報ライフサイクル管理(ILM)は同じような取り組みに思われるかもしれません。
DLMとILMの主な違いは、DLMがライフサイクルを通してファイル全体のデータまたはレコードの管理に重点を置いているのに対し、ILMは単に情報を生データとして見るのではなく、情報が組織にもたらす価値を考慮する点にあります。
DLMはデータが有用でなくなる時期を判断し、ILMはデータの正確性と保存を制御します。そのどちらも、データ管理において重要な役割です。
簡単に言えば、ライフサイクル全体における生データの管理に重点を置いているのがDLMであり、情報が組織にもたらす価値を考慮して包括的なアプローチを取っているのがILMです。
DLMは、現代のビジネス運営に不可欠な要素であり、データの作成から削除までを効果的に管理できるようにするプロセスです。
データガバナンスポリシー、データセキュリティ対策、規制への準拠などを網羅した強力なDLM戦略を導入することで、企業はデータ資産の可能性を最大限に引き出し、イノベーションと成長を促進し、競争の激しい今日の環境でビジネスを成功に導くことができます。
世界がますますデータドリブンになる中で、規模や業界を問わず組織が長期的な成功と持続可能性を実現するには、強力なDLMの策定が重要になるでしょう。
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