AIモデルやデータ品質の重要性が高まる今日、データ管理に対するより統合的なアプローチが求められています。
そこで、クラウド環境でのデータ管理を効率化するデータアーキテクチャとして注目されているのが、データファブリックです。データファブリック市場は、2030年までに21.2%の成長が見込まれています。
この記事では、データファブリックの概要と、クラウドでのメリットについて詳しく解説します。また、組織でのデータファブリックの導入方法と、今後の展望についても取り上げます。
データファブリックは、分散データ環境ですべてのデータに一貫した方法ですばやく統合的にアクセスできるようにするためのアーキテクチャアプローチです。従来のデータベースからクラウドストレージサービスまで、さまざまなプラットフォーム間でシームレスなデータアクセスと処理を可能にします。
この包括的なアプローチを取り入れれば、データのアクセス性と信頼性が大幅に向上し、データを活用した情報に基づく意思決定が容易になります。データの統合と管理のための総合的なソリューションとして、プロセスを効率化し、組織内のコラボレーションを促進できます。
データファブリックがデータのアクセス性と信頼性の向上にどのようにつながるのかを理解できるように、主要なコンポーネントをご紹介します。データファブリックに以下の機能がない場合は、期待した効果が得られない可能性があります。
これらすべてが連携することで、データ統合の効率化、メタデータ管理とガバナンスの向上、アクセスの統一とストレージ層の統合が実現します。
このような主要コンポーネントを中核に据えたデータファブリックは、増え続ける情報の活用方法に変革をもたらします。
クラウド環境でデータファブリックを構築することには、データ管理の変革につながる数々のメリットがあります。データ管理の有望なソリューションとしてデータファブリックを導入する主なメリットをご紹介します。
リアルタイムデータへのアクセスは、データファブリックがもたらす代表的なメリットです。これにより、ユーザーは最新の情報を収集、分析できます。さまざまなソースから収集されたデータがデータカタログで一元管理されるため、必要なデータセットを簡単に見つけて利用できます。
セルフサービス型のデータプロビジョニング手順を整備すれば、ユーザーがIT運用チームに頼らずに目的のデータセットを取得できるようになります。これにより、データのアクセス性がさらに向上し、クラウド環境を使った業務の効率化と意思決定の強化につながります。
さまざまなソースのデータをシームレスに統合することで、データをフル活用できます。異なるタイプのデータを集約、相関付けすれば、有用なインサイトを獲得し、情報に基づく意思決定を促進できます。
データのマッピングと変換を自動化して、手作業をなくし、ミスを回避することで、プロセスをさらに効率化できます。これにより、データ分析や意思決定で適切な情報をすばやく利用できるようになります。
データ活用と同時に、データガバナンスやセキュリティコントロールを強化して、機密情報を保護するとともに規制コンプライアンスを維持することも重要です。適切な対策を講じれば、統合したデータの正確性、信頼性、機密性を確保して、セキュリティの高い環境でより的確な意思決定ができます。
データファブリックソリューションのインメモリー処理機能を使えば、データをメモリーに直接保存して、ディスクI/Oを減らし、遅延を低減することで、分析スピードを向上させることができます。これにより、リアルタイムの意思決定を実現し、クエリーの応答時間を短縮できます。
また、並列処理機能によって複数のタスクを同時に実行することで、全体的な効率を向上させ、処理時間を短縮することもできます。
データのパーティショニングや処理の負荷分散などの技法を使ってリソースの使用率を最適化すれば、データ処理ワークフローをさらに強化できます。これにより、リソースの無駄を最小限に抑えると同時に、計算能力を最大限に引き出して、効率のさらなる向上につなげることができます。
データファブリックは拡張性に優れているため、データセットの規模が拡大してもシームレスに対応して、最適なパフォーマンスとリソース使用率を維持できます。
データファブリックでマルチクラウド環境に対応すれば、複数のクラウドプロバイダーを利用して柔軟性を高め、ベンダーロックインを回避することもできます。
さらに、動的なワークロード管理によってリソースの割り当てと優先順位付けを最適化することで、ワークロードをリアルタイムで効率的に処理できます。これらの機能を備えたデータファブリックは、クラウド環境でのデータ管理の拡張性と柔軟性を高めるための強力なソリューションです。
データファブリックを導入する際は、使用するソリューションとアーキテクチャを慎重に検討する必要があります。堅牢なデータファブリックアーキテクチャを設計すれば、複数のデータソースをシームレスに統合して、データのアクセス性と分析の効率を向上させることができます。また、クラウド環境内の機密データを保護するために、アーキテクチャの設計時点で強力なセキュリティ対策を講じることも重要です。
組織でデータファブリックを導入するための手順は以下のとおりです。
データファブリックソリューションを選定する際は、ベンダーとその提供ソリューションを詳しく評価することが重要です。以下のような点を評価します。
Oracle社、IBM社、Informatica社などのソリューションは、データパイプラインを構築し、データ処理を自動化して、インサイトをすばやく獲得するために役立ちます。
データファブリックアーキテクチャを設計するときは、システム間でシームレスにデータをやり取りできるようにするための主要な統合ポイントとワークフローを定義します。検討の際の重要ポイントをいくつかご紹介します。
データファブリックアーキテクチャを適切に設計するには、まず、組織のインフラ内での統合ポイントとワークフローを深く理解する必要があります。その際、効率的なデータ管理に不可欠なストレージ、処理、分析のコンポーネントを見極めます。これにより、データフローを最適化し、全体的な効率を向上させることができます。
また、アーキテクチャの拡張性と適応性を高めて、将来のインフラの拡張や変更に対応できるようにすることも重要です。
データをファブリックに統合してすべてのデータに包括的にアクセスできるようにするには、関連するすべてのデータソースを特定することが重要です。各種のデータシステムを接続すれば、シームレスな通信を実現し、組織全体でアクセス性を向上させることができます。
暗号化メカニズムを取り入れることは、クラウド環境で保管中および移動中の機密データのセキュリティを確保するためにも役立ちます。データを暗号化すれば、権限のない第三者が読み取れなくなるため、データの漏えいや不正使用のリスクを軽減できます。
アクセス制御を導入すれば、データの不正使用を防止して、セキュリティをさらに強化できます。アクセス制御により、権限のあるユーザーのみが、クラウドに保存された機密情報にアクセスして操作できるように制限することが可能です。
さらに、堅牢な監査ツールを使ってセキュリティを監視すれば、潜在的な脆弱性や不審なアクティビティを可視化できます。これにより、問題が検出されても迅速に対応することで、クラウド環境でのリスクを緩和し、データの完全性を維持できます。
データファブリックは、大きな潜在力を秘め、クラウドコンピューティングの普及とともに進化を続けています。データファブリックの今後の展望をいくつかご紹介します。
AI/機械学習の統合は、データに対する組織の考え方や扱い方を根本から変えます。
データファブリックテクノロジーにAI/機械学習アルゴリズムを組み込めば、強力な予測分析、データの処理と分析の自動化、リアルタイムの意思決定が可能になります。これにより、インサイトをよりすばやく獲得し、予測の精度を向上させ、大量データの管理をさらに効率化できます。
このように、AI/機械学習を統合すれば、データを包括的に可視化し、価値あるインサイトを引き出して、戦略的な意思決定に役立てることができます。
エッジコンピューティングの拡大は、遅延の低減、拡張性の向上、セキュリティの強化という大きなメリットをもたらします。大量のデータをエンドユーザーに近い場所で処理することにより、遅延を最小限に抑え、リアルタイムの処理を実現できます。
エッジコンピューティングでは処理が各エッジに分散されるため、拡張性とパフォーマンスが向上し、データ使用のピーク時でもシームレスな動作を維持できます。
エッジを含むデータファブリックによってエッジコンピューティングの可能性を最大限に引き出すことができれば、デジタルインフラを最適化してユースケースの幅を広げることができます。
データガバナンスは、データファブリックの機能の1つです。組織にとって、データの整合性、正確性、セキュリティの確保が大きな課題になる中、その重要性が高まっています。データガバナンスプロセスを自動化することは、組織が管理するデータの状況を包括的に把握し、規制や業界標準へのコンプライアンスを維持するために役立ちます。
今日のビジネス環境において、データファブリックが果たす役割は非常に重要になっています。データファブリックは拡大を続けながら、AI/機械学習の進歩、エッジコンピューティングの拡大、データガバナンスの自動化とともに進化し続けています。
データのアクセス性、統合、処理の強化というメリットも、データファブリック市場の成長を後押ししています。適切なデータファブリックアーキテクチャを構築すれば、組織全体でデータ品質を向上させることができます。
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