人工知能(AI:Artificial Intelligence)や機械学習(ML:Machine Learning)は、現在めざましい進化の途上にあります。AIを活用することで、さまざまな課題を短時間で解決し、収益性の高い「強い企業」になれる可能性があります。ここでは、AIの現状や導入のメリット、AIが本当に多くの雇用機会を奪うのか、もしくは生み出すことができるのか、そしてその理由について紹介します。AIとMLに関する「疑問」を取り上げることで、ビジネスの意思決定プロセスにおいてどのような利益をもたらすのか深堀していきましょう。
現在、さまざまなテクノロジーがビジネスに活用されています。その中でも、AIとMLは最先端のものとして注目されており、スマートテクノロジーとも呼ばれます。多様なデータから答えを導き出すこれらのテクノロジーは、非常に複雑に構成されており、プログラムの知識のない人が理解するのは難しいでしょう。
とはいえ、AIを開発することと、利用することは違います。AIソリューションをゼロから開発するには、博士号を取得したデータサイエンティストのチームや多額の資金が必要になるかも知れません。しかし、既存のAIツールを組織内に実装することは、日を追うごとに簡単になっています。それは、日々仕事で使うテクノロジーツールを考えてみればわかるでしょう。
日々の仕事では、電子メールソフトをはじめ、ExcelやWord、グループウェア、デジタルアシスタントなど、さまざまなツールを駆使して生産性を向上させていると思います。これらに使用されているテクノロジーも決して簡単なものではありませんが、その仕組みを知らなくてもツールを使いこなすことができます。AIにおいても同じことが起きていて、使い勝手は日に日に向上しています。
AIは活用性、汎用性が高いことから、その普及のために多くの企業がさまざまなAIツールの開発に多額の投資をしています。たとえばGoogleが提供する「TensorFlow」は、あらゆる環境においてAIをより使いやすくするためのツールで、その人の行動や見た目の特徴から詐欺師を見破るといった目的に特化した使い方も可能です。まだAIはワンクリックで使えるようにはなっていませんが、AIツールの多くはオープンソースとして提供されているため、誰でも簡単に学ぶことができます。
多くの企業は、「自分の会社は小さいので、AIに投資するほどのメリットはないし、必要性も感じない」あるいは「AIを有効に活用できるほど複雑な業務はない」と考えているかも知れません。しかし、たとえ小規模の企業や環境でも、AIやMLによって貴重な情報を得たり、業務の効率化を図ったりすることができます。たとえば、SNS広告の最適化や、ユーザーからの問い合わせ対応、競合企業が製品の価格を変える時期や理由の調査などはAIに任せられる可能性があります。そして、そのオペレーションは一人でも行うことができるのです。
AIやMLは、大量のデータを使って学習させないと賢くならないと考える人は多く、自社には十分なデータがないと懸念しているようです。ビジネスに役立つ可能性のあるデータソースは数多く公表されており、たとえば外気温や住宅の価格、交通状況、あるいは地域の人口構成などのデータがあります。これらのデータを外部のソースから収集し、自社のAIツールで分析を行えば良いのです。実際に、SNSを監視・分析するツールでは、外部のソースからデータを集めています。このため、社内に全てのデータがなくてもAIを効果的に利用できるのです。
また、少量のデータであっても、業績向上のためのインサイトをもたらしてくれる可能性があります。たとえば、生産工程におけるエラーの割合をわずかに減らすシステムや、さまざまな状況を判断して価格を数円だけ上げる提案をするようなシステムを利用することで、数億円のコスト削減や利益増につながる可能性もあるのです。つまり、AIを活用し価値を得るのに、大規模なデータプールが必ずしも必要ではないのです。
AIやMLを導入することで、これまで人の手で処理していた作業が不要になり、大勢の人が職を失ってしまうのではないかと不安を抱く人も少なくありません。米国の大手コンサルティング企業であるマッキンゼー社では、「これまで人間がやってきた仕事をマシンが行うようになり、2030年までに世界中の労働者の14%にあたる37,500万人が『職種を変える』必要があるだろう」という予測を発表しています。
また、IT系を中心にマーケット分析やコンサルティングを行う米国のガートナー社も、AIの能力の高まりにともなって、2020年までに180万人が職を失うと予測しています。
しかし実際には、「AIは非常に多くの雇用を生み出す」とするレポートが多くあります。なぜかというと、「AIは空っぽでは動かない」ためです。AIは、人によって開発、展開、管理しないと維持できません。そこに人が必要になるので、雇用が創出されるというわけです。前出のガートナー社のレポートでも、「180万人が職を失うものの、新たに230万の雇用が創出されるため、全体で見れば2020年には50万人の雇用が増え、さらに2025年にはそれは200万人になる」と予測しているのです。
AIの導入によって人が仕事を奪われないどころか、多くの雇用を生み出すのはなぜか。もう少し細かく説明していきます。これには、大きく3つのポイントが挙げられます。
人間の考え方や仕事のやり方は抽象的ですが、ほとんどのAIは抽象的な進め方を苦手としています。これは、AIは狭い範囲に限定した問題にターゲットを絞るようデザインされているためで、多くの場合はAIと人間のオペレーターが協力しあって問題を解決することが前提となっています。
たとえば、人間が発見するのに数カ月かかるような細かい情報を、AIはデータを洗い出し、短時間で発見します。ただし、その結果が的確かどうかは人間が判断する必要があります。こうしたチューニングはAIに必要不可欠なもので、これをくり返すことでAIは目的の情報を正しく提供するようになります。そうしていくことで、人間のオペレーターは全体像の把握に集中することができます。AIがより難しい問題を解決するためには、人間も必要になるのです。
多くの企業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)や持続可能な開発目標(SDGs)の実現のために、自社のビジネスプロセスをより柔軟性の高いシステムへと移行しています。しかし、その実現には長い時間がかかり、人間による介入も必要です。
DXやSDGsの実現のためには、さまざまなスキルと、そのビジネスや業界の慣習、競合環境に関する豊富な知識が求められます。AIツールは人間と協力して初めて、プロセスの自動化や再構成に関するアテクティビティを効果的に提案することができるのです。そのため、人間はこれからもずっと重要であり続けます。
AIも間違えることがあります。しかもそれが大惨事をもたらすことすらあるのです。このような状況を避けるためには、業界の慣習などの知識があり、経験豊富で迅速に対応できる人間が必要になります。AIツールは、自分が間違えたことすら気づかない場合がほとんどですので、間違いを防ぎAIを良い方向へ導く方法を考え出すことのできる人間の力が、さらに必要になるのです。
ガートナー社のウィット・アンドリュース氏は、次のように話しています。「AIが、無限に複製可能で人間と同じように作業を行える『スマートなエージェント』が集まる巨大なチームという考えは捨てた方がいい。AIによる意思決定の支援によって日々の仕事の質が向上し、より素晴らしいものになるかもしれないという考えで従業員をワクワクさせられたらいいと思う」。
「AIがインパクトを与えることは数十年先だから、ビジネスリーダーがいまAIを注視する必要はない」と考えているとしたら、それは誤りです。AIやMLへ投資する準備ができていて、パイロットプロジェクトでさえ早い時期に利益を出していることに気づき始めたリーダーたちが増えています。
ここで、世界的なコンサルティングファームであるデロイト社の調査結果を紹介しましょう。この調査は、早い時期にAIを取り入れた企業250社にアンケートを実施したものです。
AIの導入によるベネフィットは、ビジネス活動のさまざまな分野でみられました。トップ3は、「会社の製品の機能や性能が向上した」、「より良い決定を下せるようになった」、「新製品の開発に役立った」でした。また同時に、回答した企業は「会社を真の意味で大きく変えるにはAIにはまだ成長の余地がある」とも書いています。
しかし、これは予想よりも早く実現するでしょう。アンケート回答者の76%は、「コグニティブテクノロジーが3年以内に会社を大きく変える」と答えており、「5年以上かかる」と答えたのはわずか7%でした。
現時点でのAIは、競争の優位性を手に入れるツールではあるものの、むしろ基本的なビジネス要件になる途上にあります。この調査ではさらに、ビジネスリーダーの63%が「コスト削減のプレッシャーのためにAIを使わざるをえない」と考えていることもわかりました。言い換えれば、AI戦略を強化しないと、自社のビジネスが置いていかれてしまう可能性があるということです。
AIが目指すところは、非常に遠大です。たとえば、人間の脳を完璧に再現する、あるいは設計からコーディング、アップグレードまでを自身でこなす完全自律型のコンピューターを目指しています。これらを実現するには、まだまだ何年もかかります。そう考えると、現在のAIは長期的なポートフォリオの一過程といえます。
しかしAIツールは現在でも、米人気クイズ番組の「ジェパディ!」やポーカー、チェスなどで人間に勝利していますし、乳がんの検出や自動運転車の運転を毎日数万マイル記録するなど、多くの業界ですでに活用され、結果も出しています。AIツールにより「中程度~かなりの恩恵を受けている」と考える企業は83%に上っているのです。長大なコンセプトを考えれば、AIはまだ始まったばかりであり、企業が導入するには最適なタイミングといえるでしょう。
本調査のフルレポートも用意しておりますので、詳細はこちらからご覧ください。
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Thanks!
福島 徹
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