ビジネスシーンでのテクノロジーの利用が増えていく昨今、これまで蓄積してきた膨大なデータをAI、IoT、VRといった最新技術に、いかにスピード感をもって反映できるかが鍵となってきます。データ分析を織り込んだ経営戦略は、企業がグローバル世界で戦っていく上でも必須となっていくでしょう。
一方で、多くの老舗企業では膨大な蓄積データを保有しながらも、それを定量化できずビジネスチャンスを見逃してしまうケースが多いと推測されています。
そこで、企業のデータ活用とビジネスの成功との相関関係を探るため、Splunkが提供するData-to-Everythingプラットフォームをもとに、Enterprise Strategy Group(ESG社)と共同で、オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、日本、英国、米国の7カ国、8業界にわたる企業の経営幹部およびIT意思決定者1,350人を対象に調査を行いました。
今回の記事では、本調査結果をもとに、データの活用度を高めることの大きなメリットをグローバルな視点と日本市場での視点、また、主要業界別に焦点を当てて解説していきます。
この調査結果の中で特に注目すべきは、調査対象の先進企業はデータをより有効活用することで、平均で総売上高の12.5%の収益向上を実現したことです。今や多くの産業でマーケットは成熟あるいは飽和に直面し、成長は鈍化傾向にあります。そのような環境下でも、データ分析の精度を高めることで、企業はさらなる成長が実現できることを実証しました。
本調査では、データ活用の成熟度に応じて、データ活用を検討中の「データデリバレイター」、データを活用している「データアダプター」、データを先駆的に活用している「データイノベーター」の3つに分類しました。
すると、データイノベーターの条件を満たした企業は世界平均で11%、対して日本ではデータイノベーターといえる企業は存在せず(0%)、データ成熟度では先進7か国で最下位という驚くべき結果が明らかになりました。
調査結果を分析すると、問題は、テクノロジーの導入、スキル開発、組織体制への投資が他国よりも遅れていることだと考えられます。CDO(最高データ責任者)を置いている企業の割合では日本は最下位で、世界平均の56%に対して、日本は現在わずか38%でした。さらに、IT予算の中でデータ分析に割り当てられる比率が最も低く、IT支出の10%以下であると回答した企業の割合は、全体の平均が21%であるのに対して、日本では34%にのぼります。このことは、データ分析のためのツールとスキル不足を課題に挙げた企業の割合が最も高くなったことに反映されています(下記図参照)。
データを先駆的に活用しているデータイノベーターは、売上はもちろん、顧客維持率で2.1倍、新製品/サービスからの収益で10倍という好結果をもたらしています。
分かりやすいよう、データイノベーターとして成功している米国企業の事例を紹介します。大手グローバル宅配ピザチェーンDomino's Pizzaは、全社的にSplunkを導入し、顧客重視のサービスをグローバルで提供することで、顧客体験を向上させました。同社はIT運用、セキュリティやビジネスアナリティクスから、注文や配送などの日常的な顧客とのやり取りに至るまで、あらゆるものに対してデータファーストでアプローチすることで、業界のグローバルリーダーとしての優位を確立することに成功しました。このトップの地位を維持するために、同社はSplunkを通して意思決定し、イノベーションを推進することで、スピード、品質、利便性などの顧客ニーズを満たし続けています。
これら現状を総括するとデータデリバレイターでいる限り、企業の成長力は限定的となり、国際競争に打ち勝つことは困難と言わざるを得ないでしょう。しかし逆に言えば、企業内に蓄積されているが認知されず、活用されていないダークデータを活用し、潜在的な価値を見出すことができれば、さらなる業績拡大を実現することが十分に可能であると言えます。
ここで全調査対象地域の業界別にデータの活用状況を見てみましょう。データイノベーターの条件を満たした全8業界の平均(11%)を超えた業界は、テクノロジー業界(21%)と金融サービス業界(15%)のみでした(下記図参照)。裏を返せば、データ活用をさらに推し進めていくことで収益強化の可能性を高められる業界がまだまだあるということです。
では、データ活用の成熟度が8業界中2位の金融サービス業界について話しましょう。金融サービス業界では、データ活用の必要性が企業として死活問題になりつつあります。そのなかでデータを活用し、カスタマーエクスペリエンスを向上させた企業は73%、イノベーション推進ができた企業は71%と、いずれも全業界でトップの割合を示しています。これは金融サービス業界全体の危機意識が高まっており、データ活用が今後生き残るための差別化と考える企業が増えていることを示唆しています。
実際に、日本初のインターネット専業銀行として生まれた株式会社ジャパンネット銀行では、Splunk Enterpriseを導入し、データを活用したことで、サイバー犯罪の検知およびモニタリング対応の効率化に繋がりました。さらに、不正送金被害件数を0件と完全に抑え込むことにも成功。セキュリティが生命線であるネット銀行を支えるサイバーセキュリティ対策にデータ活用が有効であることがわかります。
一方で、データを重視していると回答した企業の割合が最も低く、データ活用への取り組みがあまり進んでいないのが小売業界です。ただし、データがセキュリティの強化に役立つと考える小売業者も多く、データを活用することで顧客データのセキュリティが向上したと回答した企業は53%にのぼります。
通販サイトを運用するジュピターショップチャンネル株式会社では、Splunk Enterpriseを導入して以来、IT運用の効率化に成功するとともに、社内の各所に点在していた顧客データログもSplunkに集約し、データ成形、機械学習を経て、顧客とのエンゲージメント向上を図っています。データがIT運用の負荷軽減やアプリ開発における品質向上、顧客に合わせたより良い製品やサービスの提供に大きく貢献していることがわかります。また、Splunkの今後の活用としてセキュリティ領域におけるSIEM(Security Information and Event Management)としてのデータ活用も考えています。
小売業界の今後の課題として、データ活用の範囲を顧客のエンゲージメント向上のみならず、セキュリティ強化にまで拡大させることが鍵となってくるでしょう。
データ分析の有益性を最大限に発揮するためには、「成功に向けて投資をすること」、「リーダーシップの確立および支援する土壌の形成」、「分析ツールの『民主化』」、「あらゆることの自動化」、「価値と機会の計測」などの要件を満たさなければならないと考えています。「成功に向けての投資」とは、データ分析によって重要なビジネス課題に対応できる優れたツールを導入したり、そのためのスキルを持つ人材の採用し、従業員の教育に注力することです。
同様にリーダーシップを確立し支援するには、経営幹部が率先してデータ重視の文化を育む必要があります。最高データ責任者または、同等のリーダーが明確なデータ戦略を打ち立て、社内イニシアティブを推進し、予算を確保して、データを重視する企業文化に変革させなければならないのです。
これらの環境を整えた上で、包括的かつ正確なデータ分析ツールを従業員に幅広く提供する「民主化」も必須要件となります。さらに、AIによる自動化の対象を拡大することで人的ミスは減り、従業員はより付加価値の高い業務への集中を実現し、データ活用による価値実現が大きく進歩することにも寄与します。
データ活用の成熟曲線の中で自社が現在どの位置にいるのかを把握することや、データ活用の取り組みの活性化および、優れた分析ツールと適切なスキルを取り入れ、最終的にビジネス価値創出のためのデータ活用を高めることで、いかなるメリットをも享受できるでしょう。
本調査のフルレポートも用意しておりますので、詳細はこちらからご覧ください。
このたび、Splunkの新しいデータ成熟度評価ツールを使って社内データの総合的価値を評価することができるようになりました。
このデータ成熟度評価ツールでは、企業のデータ利用の段階を評価し、データを最大限に活用するための適切なツールをすばやく簡単に見つけ出すことができます。また、企業が掲げるビジネス成果を実現するための自社のデータの価値を、どの程度活用できているか知ることができます。
よろしければ、Splunkのウェブサイトにデータ活用度評価ツールを用意しておりますので、ご活用ください。
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Thanks!
福島 徹
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。