迅速に意思決定を下せるかどうかが、成功と低迷を分ける鍵となります。もちろん、迅速な意思決定が必ずしも正しいとは限りません。適切に意思決定を行うには正しい情報が必要です。そして正しい情報を得るためには、データが欠かせません。
これがまさに、オペレーショナルインテリジェンス(Operational Intelligence)の役割です。
この記事では、オペレーショナルインテリジェンス(OI)の主なメリット、目的、そして導入方法など、あらゆる側面を解説します。まずは、OIの定義について詳しく見てみましょう。
オペレーショナルインテリジェンス(OI)とは、リアルタイムデータ分析とも呼び、意思決定をリアルタイムで支援することを目的とした一連のビジネスアナリティクスシステムです。リアルタイムデータ分析では、進行中のビジネスオペレーションや関連する外部要因を表すさまざまなデータフィードが収集され、取り込みと同時に分析、要約されます。
リアルタイムデータアナライザでは多種多様なソースからデータを収集できますが、一般的には、企業の基幹ビジネスプロセスのデータを収集します。IT運用においては、ネットワークやサーバーの運用に関する運用メトリクス、セキュリティの脅威、アプリケーションのデプロイ状況などを監視できます。
一般的には、こういった情報をダッシュボードに表示して、主要な外れ値や傾向をわかりやすく示します。このように、多様なデータソースを扱うオペレーショナルインテリジェンス(リアルタイムデータ分析)ソリューションでは、システムに組み込むデータソースを増やすことで、より詳細かつ複合的にデータを分析して、より実用的で役に立つビジネスインサイトを得ることができます。
ここまでの説明は、特にビジネスインテリジェンスをよく知る人にとって、なじみのある話かもしれません。次は、両者の違いについて見てみましょう。
2つの技術の最も大きな違いは適時性です。
オペレーショナルインテリジェンスはよく、次世代のビジネスインテリジェンスと呼ばれます。それは、この2つのデータ分析技術が同じ流れをくむためです。
簡単に言うと、BIでは以下に挙げるような履歴データを使用します。
その当初の目的は、大量の情報を分析して、実用的なデータに要約することでした。その後、大規模なデータストアから運用やビジネスに関するインサイトを探る手段として、データマイニングのようなテクノロジーが開発されましたが、BIの分析には時間がかかるようになります。そのため、継続的な監視はできず、定期的に状況を確認できる程度でした。
リアルタイムデータ分析ツールは、リアルタイム実行を重視し、情報を生成と同時に取り込むことで分析精度を継続的に向上させることを目指しています。取り込むデータはアーカイブログや静的な情報にとどまりません。リアルタイムデータアナライザでは、リアルタイムのインサイトが収集され、インテリジェンスが創出と同時に取得されるため、タイムリーで実用的なビジネスインサイトが得られます。オペレーショナルインテリジェンスツールではリアルタイムのインサイトが得られるため、企業は機会や脅威に即座に対応できます。
とはいえ、BIの有用性に変わりはありません。BIとリアルタイムデータ分析を併用し、BIによる広範な履歴分析とリアルタイムデータ分析によるリアルタイムの可視化を統合して、自社や市場の状況をより包括的かつ戦略的に把握しようとする方法もあります。
どのようなアプローチを取るにせよ、オペレーショナルインテリジェンスの導入時には実装すべきいくつかの主要機能があります。これらの機能はさまざまなシステムや監視ツールに搭載されており、そのどれもがオペレーショナルインテリジェンスのアプローチを効果的に推進するのに欠かせません。
オペレーショナルインテリジェンスソリューションには主に、以下の機能があります。
それぞれの機能を詳しく見てみましょう。
ダッシュボードと可視化機能では、運用の状態とデータの傾向をすばやく把握できます。
これはリアルタイムデータ分析の中核を成す機能です。すべてのリアルタイムデータ分析ソリューションが、データソースをリアルタイムで監視する機能を備えています。工場の機械に内蔵されたセンサー、小売店の売り上げ情報のフィード、顧客に納入したアプリケーションの障害発生を知らせるアラートなど、どのソースからデータを取り込む場合でも、リアルタイムデータ分析の第一の役割は、データの取り込みと同時、通常はイベントデータの生成から数秒以内に、分析結果やアラートを提供することです。
(IoT監視について詳しくは、こちらをご覧ください)
リアルタイムデータ分析でもう1つの中核となるのが、複雑な情報の要点をまとめて、わかりやすい形で表示する機能です。ダッシュボードはその代表的な方法で、大量のデータから抽出した有意義な情報がグラフィカルに表示されます。リアルタイムデータ分析システムによっては、ダッシュボードをユーザーごとにカスタマイズできることもあります。
たとえば財務監査担当者と製品開発者では、同じリアルタイムデータ分析システムを利用するとしても、意思決定に必要な情報はまったく異なります。そのため、ダッシュボードに表示されるデータとその表示方法をカスタマイズできるかどうかは重要な点です。
主要なイベントの発生時にユーザーに通知することもリアルタイムデータ分析の重要な機能です。この機能では、通知のきっかけとなる条件やしきい値をユーザーが設定できます。通知はただちに、ダッシュボードに表示されたり、メールやモバイルデバイスのプッシュ通知で送信されたりするため、プロアクティブに対応することができます。
リアルタイムデータ分析ソリューションは、製造から、小売、金融サービスまで、幅広い業界に対応しています。しかし、ユーザーのニーズは業界によって異なります。通信会社と、全国にチェーン展開する小売企業や医療機関とでは、抱える課題は同じではありません。ダッシュボードを業界に応じて設定できるリアルタイムデータ分析ソリューションなら、最も重要な情報とその関連情報をエンドユーザーに表示できます。
情報がリアルタイムに表示されるダッシュボードは、状況に即座に対応するために便利ですが、情報をほかの人に伝えたり、現状を包括的に把握したりする場合にはレポートが役に立ちます。そのため、優れたリアルタイムデータ分析ソリューションでは、専門業務を担うデータエキスパートだけでなく、一般業務のユーザーも利用できるレポート機能が用意されています。
リアルタイムデータ分析では、人工知能を利用し、高度なモデルとアルゴリズムに基づいて、大量のデータからより有意義なインサイトを導き出せます。優れたリアルタイムデータ分析ソリューションでは、毎日数百テラバイト単位のデータにインデックスを付けて処理、分析を実行し、継続的に将来の成果を予測したり、新しい市場機会を発掘したりできます。
リアルタイムデータ分析ソリューションでは、問題を検出すると、ユーザーにアラートを送信したり、問題を自動で修復したりすることが可能です。
自動修復は、リアルタイムデータ分析の中でも画期的な機能です。強力なスクリプティング機能を使って、特定の運用の問題をアルゴリズム的な操作で自動的に修復できます。
データの保管と処理のニーズが急速に拡大する中、リアルタイムデータ分析ソリューションも、効果を発揮するにはそのニーズに対応することが求められます。優れたリアルタイムデータ分析ソリューションは、クラウドベースのインフラストラクチャ上で処理能力をすばやく追加するだけで、制限なく拡張できるように設計されています。
リアルタイムデータ分析を導入するには、目標の設定から試験運用まで、以下の6つのステップで行うのがお勧めです。
リアルタイムデータ分析の用途は幅広いため、まずは自社で最もインパクトが大きい領域を識別することが必要です。自社が抱えている課題を洗い出して、リアルタイムデータ分析で解決できそうな課題を特定し、タイムリーに行われるリアルタイムデータ分析の実用的なデータ分析がそれらの課題の解決にどのくらい効果があるかを評価します。
課題を識別したら、リアルタイムデータ分析ソリューションの選定、導入、運用を担当するチームを作ります。対象とする課題によっては、経営幹部レベルの役員(CIO、CTO、CDO、CFO、CMOなど)が指揮を執ることもあります。
たとえば、ネットワークの可用性を高めたい場合はCTO、小売店舗での来客のパターンを監視したい場合はCMOが最適です。
リアルタイムデータ分析を活用するには有効なデータが必要です。そのため、リアルタイムデータ分析ソリューションに取り込む前に、データの状態を確認しておく必要があります。取り込むRawデータが少なすぎたり、運用データにアクセスできなかったりすると、リアルタイムデータ分析の取り組みは最初からつまずきます。データストアの監査を行い、次の点を確認しましょう。
対象とするデータが少なかったり、品質が悪かったり、古すぎたりすることもあるでしょう。
その場合は、リアルタイムデータ分析を使い始める前に、データをクリーンアップします。データが不十分だと、適切でない分析結果が導き出されて、間違った判断をしてしまう可能性があります。データをクリーンアップするには、データソースのアップグレードや、システムアーキテクチャの見直しなど、大規模で複雑な作業が必要になることもあります。必要に応じて、マシンデータを取得するためのセンサーを追加したり、主要なトランザクションのログ記録方法を変更したりすることも検討してください。
ステップ4を行うと同時に、リアルタイムデータ分析ソリューションの導入効果を測るための定量的なKPIを設定します。たとえば、ダウンタイムを0.1%から0.01%に削減する、顧客の待ち時間を平均2分短縮する、売上を5%伸ばすなど、具体的な目標を決めます。計測可能な数値を決めると、効果を把握しやすくなります。
大規模な技術プロジェクトに取り組むときは、限定した範囲で始めて、規模を拡大していくのが安全です。まずは、1つのKPIについてリアルタイムデータ分析を試験導入しましょう。その後、関連する課題とその指標をリアルタイムデータ分析の対象に加えていきます。たとえば、最初はリアルタイムデータ分析でアプリケーションのダウンタイム短縮を目指し、その後、そのアプリケーションに関する顧客のレビューを監視したり、アプリケーションクラッシュの原因を探ったりします。リアルタイムデータ分析の価値を立証しながら、成功を積み重ねていきましょう。
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