ゲームをプレイするときでも、「いいね」を付けるときでも、オンライン取引を行うときでも、モバイルアプリや社内システムのユーザーのほとんどはユーザーインターフェイスの向こう側を気にすることはありません。しかし、スワイプ操作やタイプ入力の裏には、あらゆるITを支える基盤があり、それはエンドユーザーには見えませんが、データセンターやサーバールームの本質そのものです。
ITインフラは、ITサービスの開発、テスト、提供、監視、管理、サポートに必要な、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、設備で構成されます。デジタルファーストかつデータ中心の運用モデルを持つ組織にとっては大黒柱と言えます。
そのため、ITインフラサービス市場は、デジタルトランスフォーメーションの拡大とクラウドテクノロジーの進化に牽引されて、2030年までに1,453億ドル規模に達するとも予測されています。
ITIL®サービス管理フレームワークでは、ITインフラの特徴として、インフラが支える資産(特にユーザーやアプリケーション)と関連付けて定義された階層構造を持つ点が挙げられています。ユーザー側でサービスが使えなくなったりパフォーマンスが低下したりしたときは、ほとんどの場合、下層のITインフラの動作や管理に原因があります。
このブログ記事では、「ITインフラとは何か?」という疑問にあらゆる角度からお答えするために、ITインフラのタイプと分類、管理方法、将来の展望について詳しく解説します。
ITインフラのタイプは、その性質と用途によって決まります。一般的には、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの3つに分けられます。
ITサービスを提供するために使われる物理デバイスです。たとえば以下のものがあります。
ユーザーがハードウェアを操作できるようにするためのコンピュータープログラムです。ここでは主に、ハードウェアと直接通信する主要なソフトウェアインターフェイスであるオペレーティングシステム(OS)を指します。他のアプリケーションはすべて、OS上にインストールされます。
また、OS内にハイパーバイザーやコンテナエンジンをインストールして、仮想化やコンテナ化を実現することもできます。
ネットワークインフラには、ハードウェアインフラとソフトウェアインフラを相互に接続するための物理デバイスが含まれます。これらのデバイスは、トラフィックの管理やセキュリティ層の提供といった役割を担います。ネットワークデバイスには以下のものがあります。
次に、サーバーについて見ていきましょう。サーバーは、プログラムとデータを管理し、クライアントや他のサーバーにアクセスを提供する、基盤ITインフラです。
インフラレベルでは、サーバーは主に物理インフラと仮想インフラの2つに分類されます(今日では後述の第3の分類も普及しつつあります)。
オペレーティングシステムやアプリケーションと密接に結び付いた、有形のインフラを指します。物理サーバーは「ベアメタル」とも呼ばれ、最もわかりやすいハードウェアです。PCと構成は同じですが、高度なCPU、メモリー、ストレージを搭載し、ワークロードの実行性能が優れています。
仮想インフラは少し複雑です。
ハードウェアをオペレーティングシステムやアプリケーションと切り離して、以下のようなソフトウェア定義のコンポーネントを構築します。
仮想インフラの構成は物理インフラと似ていますが、同じではありません。その主な目的は、仮想化によって物理インフラを拡張し、リソースをより有効かつ柔軟に利用できるようにすることです。たとえば、1つの物理サーバー上で複数の仮想サーバーを運用できます。このとき、仮想サーバーは互いに独立しているため、異なるオペレーティングシステムやソフトウェアをインストールすることもできます。
現在のところ、仮想インフラの構築方法には「仮想化」と「コンテナ化」の2種類があります。
今日、独自のデータセンターを構築してITインフラを社内で運用する組織もまだありますが、多くの組織がIT基盤をクラウドに移行し始めています。
クラウドを利用する場合は、クラウドサービスプロバイダー(CSP)が物理インフラを運用し、利用者は、CSPが提供する管理コンソールやコマンドラインインターフェイスを使って、購入した仮想インフラにインターネット経由でアクセスします。この仕組みは、IaaS (Infrastructure as a Service)またはPaaS (Platform as a Service)と呼ばれます。
DevOpsを導入している場合、専用ツールを使って、ソフトウェアコードによって仮想インフラを構築およびプロビジョニングすることもできます。この仕組みは、IaC (Infrastructure as Code)と呼ばれます。IaCを使えば、インフラのプロビジョニングを標準化して、インフラの準備にかかる時間を短縮するとともに、人手によるミスを回避できます。
近年注目が高まっている第3の分類のインフラが、ハイパーコンバージドインフラです。このインフラでは、コンピューティングリソース、ストレージ、ネットワークリソースで構成されるソフトウェア定義クラスターを単一のハードウェア上で運用します。すべてのコンポーネントが1つにまとめられているため、単一の統合インターフェイスからインフラ全体を管理でき、柔軟性と拡張性が大幅に向上します。さらに、ラックスペース、電力使用量、コストを大幅に抑えることもできます。
ITインフラをモダナイズし、クラウド対応を進めたい組織にとって、ハイパーコンバージドインフラは移行手段として以下のメリットがあります。
ITインフラの構成と分類がわかったところで、それを管理するためのプラクティスを見ていきましょう。
インフラ管理は、ITILフレームワークの中核をなす、ITサービスの提供およびサービス管理のプラクティスです。ITIL 4プラクティスガイドでは、インフラの計画と管理に関する3つの主要アクティビティが定義されています。
ITインフラ管理のソフト面を担うテクノロジー計画では、主にアーキテクチャとアプローチに焦点を当てます。
アーキテクチャは組織戦略の一部であり、ビジネスの方向性を理解し、ビジネス成果の達成を支援するためにITインフラがあるべき姿を描く上で重要です。ここでは、以下の点を評価します。
ITインフラ管理に適用するアプローチでは、方式、技法、責任を検討します。組織によっては、アプローチの一部を、クラウドサービスプロバイダーのスペシャリストなど、適切な能力を持つ外部に委託することもあります。
製品開発ライフサイクルでは、ITインフラ管理について、ビジネスアナリストが定義した要件を満たすインフラを設計および実装することに重点を置きます。ここでは、製品を支えるインフラを設計、開発、テスト、デプロイ、リリースします。
製品開発チームとITインフラ管理チームが完全に分かれている場合は、製品の要件を確実に満たすために、多くのコミュニケーションとコラボレーションが必要になります。
Splunk Infrastructure Monitoringの詳細はこちら
テクノロジー運用では日常業務が中心になります。製品を支えるITインフラを日々維持するために必要な作業を行います。たとえば、以下の作業があります。
クラウドの時代に広く使われているITインフラ管理技法の1つが、サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)です。SREはもともとGoogle社が提唱し、ソフトウェアエンジニアリングをIT運用に応用した技法です。その目的は主に2つあります。
SREは、開発プロセスの早い段階からITインフラの可用性を確保し、安定性と信頼性を最大限に保ちながらITインフラを管理できる手法として、DevOpsコミュニティに広く受け入れられています。
今後のITインフラに影響を与えると考えられる主なトレンドの1つが、サーバーレスコンピューティングの普及です。このモデルは、FaaS (Function as a Service)とも呼ばれ、クラウドサービスプロバイダーがサービスとして提供しています。このサービスを利用する組織は、ITインフラのプロビジョニングと管理の手間を省いて、コードの実行、データの管理、アプリケーションの統合に集中できます。
このサービスは従量課金モデルで提供されるため、イノベーションの開発、新機能のテスト、頻度の低いワークロードの実行に最適です。
独自のインフラでワークロードを安定的に実行するのに比べると、ベンダーロックインのリスクやコストが割高になる可能性はあるものの、多くの組織が運用の負担軽減と俊敏性の向上というメリットに魅力を感じています。
ITインフラ管理におけるAI導入の広がりも注目すべき点です。クラウドサービスプロバイダーでも、独自のデータセンターを運用する組織でも、IT運用にAIを取り入れることで、スタッフの能力を拡張できるメリットを得られます。AIは以下の用途で活躍します。
AIソリューションを活用すれば、需要の変動やインフラの状態の変化に応じてリソースの割り当てをより効果的に調整できます。さらに、インフラやデータアクセスのセキュリティ分析にAIを適用すれば、コンプライアンスの向上につながります。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳です。
この記事について誤りがある場合やご提案がございましたら、ssg-blogs@splunk.comまでメールでお知らせください。
この記事は必ずしもSplunkの姿勢、戦略、見解を代弁するものではなく、いただいたご連絡に必ず返信をさせていただくものではございません。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。