コントロールプレーンとデータプレーンは、ネットワークにおける2つの主要なコンポーネントです。どちらもネットワークパケットの流れをスムーズにしますが、担う機能と役割は異なります。この2つのプレーンの違いを理解すれば、ネットワークを設計、最適化し、パフォーマンス、拡張性、セキュリティを向上させることができます。
このブログ記事では、コントロールプレーンとデータプレーンの機能、基本的な違い、ユースケースについて説明します。また、この2つのコンポーネントを分離することのメリットとデメリットについても説明します。
コントロールプレーンは、ネットワークに欠かせない要素です。データパケットの転送、つまり送信元から宛先へのデータの送信方法に関連するすべてを管理します。具体的には、ルーティングテーブルの作成、管理、転送、ネットワークポリシーの確立、ルーティングプロトコルの管理、ネットワークトポロジーの作成など、さまざまな機能とプロセスを担当します。
(これらの機能やプロセスはいずれも、ネットワーク構成管理という大きな概念に含まれます)
コントロールプレーンでは、次のようなプロトコルを利用します。
コントロールプレーンは、これらのプロトコルに基づいてルーティング情報をやり取りし、ネットワークトラフィックの誘導に最適なパスを決定します。通常、コントロールプレーンは、効率性と拡張性を高めるために、データプレーンから分離されています。さらに、コントロールプレーンには分散型と集中型があります。集中型のプレーンは、ネットワークデバイスに関する意思決定と動作管理を担う中央コントローラーによって管理されます。
データプレーンは、送信元デバイスと宛先デバイス間でネットワークパケットを転送するネットワーク要素です。
データプレーンとコントロールプレーンは、交通輸送に例えることができます。
データプレーンは、パケットの受信と検査、正しい宛先への転送、ネットワーク輻輳時のネットワークパケットのキューイング、正しい宛先へのパケットの確実な配信といったタスクを実行します。コントロールプレーンと同じく、データプレーンもインターネットプロトコル(IP)やイーサネットなどのプロトコルを利用して役目を果たします。抽象化レベルで見ると、データプレーンはコントロールプレーンよりも下位の層で動作し、コントロールプレーンが設定したルートに従ってパケットを転送します。
では、この2つのプレーンの主な違いを見てみましょう。
コントロールプレーンの主な役割は、ネットワークの管理と制御、およびデータパケットの送信方法の決定です。コントロールプレーンの主な機能は次のとおりです。
一方、データプレーンの主な役割は、ネットワークパケットを正しい宛先に転送することにあります。主な機能は次のとおりです。
コントロールプレーンは、7層から成るOSI (Open Systems Interconnection)モデルのネットワーク層(第3層)で動作します。コントロールプレーンはルーティングとパスの決定を担うため、データプレーンよりも上位の層で動作します。第3層では、コントロールプレーンがルーティングを含むネットワークデバイスの構成を管理し、ネットワークトラフィックを転送するのに最適なパスを決定します。
一方、データプレーンは、OSIモデルの第2層にあたるデータリンク層で動作し、2つのノード間のデータ転送を担います。第2層では、データパネルが正確なデータパケット転送に関連するコア機能を処理します。データプレーンは、ハードウェアで実装され、高いパフォーマンスと最小限のレイテンシーを実現します。また、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)環境のように、ソフトウェアで実装されることもあります。
コントロールプレーンは、OSIモデルの第3層でサポートされているさまざまなプロトコルを使用します。コントロールプレーンで一般的に使用されるプロトコルは次のとおりです。
これに対し、データプレーンは、OSIモデルの第2層でサポートされているさまざまなプロトコルを使用します。データプレーンで一般的に使用されるプロトコルは、次のとおりです。
コントロールプレーンとデータプレーンは、どちらも集中型または分散型で実装できます。
同じように、集中型のデータプレーンは中央デバイスによって管理され、中央デバイスがあらゆるネットワークトラフィックの転送について決定を下します。一方、分散型のデータプレーンでは転送機能が複数のデバイスに分散されます。各デバイスは、ルーティングテーブルや転送情報に基づいて、転送処理を個別に決定します。
コントロールプレーンとデータプレーンは、大規模なエンタープライズネットワークだけでなく、SDNやクラウドコンピューティングでも使用されます。
SDNは、コントロールプレーン、データプレーン、および管理プレーンで構成されます。コントロールプレーンは、転送の決定を行うほか、サービス品質(QoS)などの機能を実行します。これに対してデータプレーンは、データパケットを処理し、コントロールプレーンから入力を受け取るデバイスを切り替えたり、受け取ったデータを転送します。
クラウドコンピューティングでのコントロールプレーンは、ルーティングポリシーの作成や配布といったタスクを処理する層です。たとえばAmazon Web Services (AWS)では、コントロールプレーンがCRUDを実行するための管理APIを提供します。コントロールプレーンのタスクの例としては、S3バケットの作成やEC2インスタンスの起動などが挙げられます。
データプレーンは、S3オブジェクトの作成、EC2インスタンスの実行、EBSの読み取りおよび書き込み操作など、AWSサービスのコア機能を提供します。
コントロールプレーンとデータプレーンを分離することで、効率性とレジリエンスに優れたネットワークを構築することができ、多くのメリットをもたらします。ここでは分離のメリットについて説明します。
コントロールプレーンとデータプレーンを分離すると、両方のプレーンが互いに依存せず、独立して動作します。そのため、コントロールプレーンに影響を与えることなく、データプレーンを容易に拡張できます。この拡張性のおかげで、規模の拡大やデータ需要の増加にシームレスに対応できるネットワークアーキテクチャが実現します。
この2つのプレーンは、異なる機能を独立して実行します。そのため、層を分離することで、各プレーンが独自のタスクの最適化に集中できます。たとえば、コントロールプレーンでは効率的なルーティングと意思決定を優先し、データプレーンでは迅速かつ効果的なパケット転送とネットワークパフォーマンスの向上に集中することができます。
コントロールプレーンは、データプレーンよりはるかに重要性の高いプレーンです。2つのプレーンが依存関係にある場合、データプレーンでセキュリティ侵害が発生すると、コントロールプレーンもリスクに晒される可能性があります。
しかし、この2つのプレーンが分離されている状況では、コントロールプレーンの侵害は難しくなります。つまり、データプレーンでセキュリティ侵害が発生しても、コントロールプレーンへの影響を回避できます。さらに、各プレーンに最適なセキュリティ対策を導入することも、分離によって容易に行えます。
コントロールプレーンは、データプレーンより複雑です。したがって、コントロールプレーンで問題が発生した場合、プレーンが分離されている方が容易にトラブルシューティングを行えます。さらに、分離されていることで、双方の構成をアップグレードする際も互いに影響を与えることなく、簡単に行えます。このため、変化に対してより柔軟に適応することができます。
プレーンの分離によって、問題の切り分けが簡単になり、一方のプレーンで障害が発生した場合でも、その影響がもう一方のプレーンに及ぶのを回避できます。また、単一障害点を排除して、レジリエンスの高いネットワークアーキテクチャを構築するのにも役立ちます。
プレーンを分離すれば、プレーンごとに異なるベンダーのソフトウェアを使用できます。つまり、単一のベンダーに依存する必要がありません。ネットワーク担当者は、この柔軟性を活かしてコスト、機能、パフォーマンスなどの重要な要素を考慮しながら、最適なオプションを選択できます。
結果として、プレーンの分離によってベンダーロックインを回避し、適応性の高いネットワークアーキテクチャを構築できます。
コントロールプレーンとデータプレーンの分離には多くのメリットがありますが、次のような深刻な課題やデメリットもあります。
レイテンシーの増加:分離されたプレーンは互いに独立して動作しますが、指示に従ってタスクを実行するには、それでも相互に通信し合う必要があります。そのため、特に分散型アーキテクチャでレイテンシーが増加し、ネットワークを介したパケットの伝送に遅延が生じる可能性があります。
複雑さの増大:コントロールプレーンとデータプレーンの分離により、構成管理や付随する作業の負担が増える可能性もあります。2つの分離されたプレーンを運用するには、かなりのスキルと専門知識が必要です。そのような専門知識を持つ人材を見つけることは困難であり、費用がかさむ可能性もあります。
相互運用性の課題:2つのプレーンを分離することでベンダーロックインを回避し、複数の異なるベンダーテクノロジーを利用できますが、異なるベンダーのテクノロジーで相互運用を試みた場合、作業が複雑になる可能性があります。
コントロールプレーンとデータプレーンは、ネットワークに不可欠な2つのコンポーネントであり、互いに連携して効率的なデータ伝送を実現します。コントロールプレーンはネットワークの管理と制御を、データプレーンは適切な宛先にネットワークパケットを転送することを主な役割としています。主な役割や機能、動作する層、プロトコル、および集中化と分散化の方法は、プレーンによって異なります。これらのプレーンは、エンタープライズネットワーク以外にも、クラウドコンピューティングやSDNでよく利用されています。
この2つのプレーンを分離することで、拡張性の向上、パフォーマンスの最適化、セキュリティの強化、ベンダーロックインの回避など、さまざまなメリットが得られます。
一方で、レイテンシーの増加、複雑さの増大、相互運用性の課題など、いくつかのデメリットも生じます。
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