ここに何百万ギガバイトものデータが含まれるフォルダーがあると想像してみてください。これをExcelスプレッドシートで処理するよう求められても、それが不可能であることは、データ専門家でなくてもわかります。
このような規模のデータを「ビッグデータ」と呼びます。ビッグデータの場合、通常のデータ分析では要求されることのない高度な技法、ツール、手法が必要になります。そこで登場するのがビッグデータ分析です。
ビッグデータ分析とは、さまざまなソースから猛烈なスピードで送られてくる多様な形式の大量のデータから価値を引き出すための手法です。
この記事では、ビッグデータ分析について知っておくべきことを、活用事例、メリット、課題、およびビッグデータ分析の専門家が使用しているツールに焦点を当てて解説します。
ビッグデータ分析とは、データ分析に関する高度なツールと技法を使って大量のデータを分析することを指します。ビッグデータには、構造化データまたは非構造化データがあり、3つのVと呼ばれる以下の属性が備わっています。
私たちはデータに囲まれて暮らしています。ソーシャルメディアでのやり取り、メール、交通データ、金融取引などはすべてデータです。これらすべてのデータから価値を引き出すために、私たちは高度な技法とツールを利用して、独自のインサイトを抽出し、パターンを導き出し、傾向を予測します。
ビッグデータ分析には、次のような技法が使用されます。
ビッグデータ分析では、データを分析するだけでなく、予測モデルを作成し、結果を可視化し、得られたインサイトを関係者に伝えます。
ビッグデータ分析の活用事例は、世界のさまざまな業界や業種で数多く見つけることができ、新しいユースケースも次々と生まれています。以下にビッグデータ分析の実例をいくつかご紹介します。
世界中の政府機関が、さまざまな情報源から収集したあらゆる種類のデータを国の運営に利用しています。こうしたデータは、政策の立案、リソースの配分、国内外のトレンドの把握に役立っています。他にも、たとえば国勢調査では、ビッグデータ分析を利用することで、市民のデータを人口統計、性別、年齢などの基準に基づいて処理しています。選挙期間中には、データから得られたインサイトに基づいて候補者が選挙戦略を立てることがあり、選挙が完全にデジタルで実施されている国もあります。
導入事例:2023年上半期、セネガル共和国のMCTEN (コミュニケーション、電気通信、デジタル経済省)は、AIを活用したビッグデータ分析企業であるPresight AIと覚書を締結しました。これは、デジタル技術を活用して国力を高めようという取り組みです。この官民連携プロジェクトの狙いは以下のとおりです。
ビッグデータ分析の影響はeコマース業界にもおよんでおり、これがオンラインショッピングの普及を後押ししてきました。影響を受けた領域の1つに、パーソナライズされたショッピング体験が挙げられます。これは、顧客の購入履歴、閲覧パターンやフィードバックから得られたインサイトを基に構築されます。
また、マーケティング分野でもビッグデータ分析は大いに役立っています。顧客のセグメント化(特にメールマーケティング)、広告、マーケティングキャンペーンなど、さまざまなものがビッグデータにより改善されています。
導入事例:eコマース大手のアマゾン社は、ビッグデータ分析の結果を活用して、顧客の閲覧パターンや購入履歴などの情報に基づいて商品をおすすめしています。こうすることで、アマゾンプラットフォームでのショッピング体験を向上させ、オンラインショッピングの世界標準を確立しています。
サイバー犯罪は間違いなく増加しています。このような犯罪行為の検出と防止は、ビッグデータ分析なしでは不可能でしょう。たとえば、先進的なストレージ施設では、さまざまなソースからのデータを保存および処理し、侵害の痕跡(IOC)や攻撃の兆候(IOA)が検出された場合にはアラートを簡単に送信できます。ビッグデータ分析から得られたインサイトは、脅威検出や脅威ハンティング、予測、および攻撃発生時のインシデント対応を開始するアルゴリズムの構築に役立ちます。
導入事例:小売大手のカルフール社は、Splunk Cloud Platformから得られたインサイトを活用して、データ、特にセキュリティログを一元管理することで、セキュリティ脅威への対応時間を3分の1に短縮しています。
さらに、脅威への対応時間が短くなったことで、セキュリティチームはより付加価値の高い業務に集中できるようになりました。
医療診断、医学研究、患者ケアの改善にも、ビッグデータ分析やそこから得られる知見が利用されています。たとえば、ビッグデータ分析により、医療専門家が患者の病歴をより深く理解し、過去に報告された症例や類似の症例を効果的に調査できるため、診断の精度が向上します。
また、注目されつつある遠隔医療でも、ビッグデータ分析を活用することで、医療費を抑えながら多くの人が利用しやすい医療を実現しています。
導入事例:フラットアイアンヘルス社をはじめとする医療・ヘルスケア関連のスタートアップ企業の多くは、ビッグデータ分析を利用し、がんに関する数十億ものデータポイントを処理することで、より多くの医療従事者ががん患者をケアするための適切な知識と技術を身に付けられるよう支援しています。
ビッグデータ分析の重要性は、それが生み出すインサイトと、そのインサイトがビジネスにもたらす潜在的な価値にあります。この価値は、組織、利益率、業界トレンドへの対応能力といったものに反映されます。
ビッグデータの活用は、組織に次のようなメリットをもたらします。
競争優位性はさまざまな要素から生まれます。たとえば先行者利益や、他社よりも優れたマーケティング、高品質な製品といった要素がありますが、これらはすべて質の高いデータによって得られます。また、データをふんだんに利用できるようになったため、その膨大な量のデータを有効活用できる企業であれば、大きな市場シェアを獲得する方法を見つけられるでしょう。
ビッグデータ分析で使用される高度なツールや技法により、企業は事業運営、顧客のニーズ、業界トレンドに関する知識を拡大できます。これらのインサイトはビジネスの成長に寄与し、市場の方向性を予測して先行優位性を維持するのに役立ちます。
十分なデータを獲得して調査しなければ、顧客のニーズを把握し、それを解決する製品を生み出すのは非常に困難です。ビッグデータ分析を利用すれば、製品開発プロセスをより適切に進められるため、顧客のニーズに応える製品を生み出せる可能性が高まります。
ビッグデータ分析を利用して、商品の購買層、顧客の行動やレビュー、提案すべき商品やサービス、市場トレンドを分析することで、顧客のターゲティング、メッセージの作成、独自の販売提案を的確に行うことができます。これらはすべて、優れたマーケティングに必要な要素です。
ビッグデータ分析ツールを使用して、従業員のパフォーマンス、ビジネス上の問題、運用コストに関する情報を保存して分析することで、事業運営を改善できます。その後、得られた情報を基に、パフォーマンスの高い従業員を表彰し、他の従業員の意欲を高めて、コスト削減やリソースの再配分が必要な領域を把握します。
ビッグデータ分析では、大量のデータを用意することさえできれば、データ専門家は安心して作業に取り組めると思われるかもしれませんが、まだいくつかの懸念点があります。ビッグデータ分析の課題には次のようなものがあります。
データによって、それが生み出すインサイトの質が決まるため、ビッグデータ分析ではデータの品質が非常に重視されます。しかし、ビッグデータ分析の分野が進歩しているにもかかわらず、データの同期、データソースの信頼性、データ分析ツールの性能といった問題により、データ品質の向上は依然として非常に難しい課題です。
利用できるデータソースの数が膨大で、データ漏えいの可能性があり、またデータの共有と使用に関するルールが曖昧である状況から、データへのアクセスやプライバシーに関する懸念が高まっています。現時点でも、顧客の同意なしに顧客データにアクセスし、顧客関係やデータに関する法律に違反する方法でデータを使用している企業もあります。
データ分析ツールの導入を検討している組織にとって、ツールの実装やデータ専門家の雇用にかかるコストは、依然として大きな障壁となっています。
ビッグデータ分析には、複数のツールが必要です。ビッグデータ分析を導入している組織は、データの保存、クリーンアップ、分類、および分析にさまざまなツールを利用しています。以下に、知っておくべきビッグデータ分析ツールをいくつかご紹介します。
Splunkは、組織のデータ分析、セキュリティ、ITオブザーバビリティ全体を一元的に運用できるように設計されたデータプラットフォームです。Splunkでは、多種多様なソフトウェアやApp、API、柔軟性に富んだソリューションを提供しています。Splunkのソリューションを利用することで、組織はデジタルレジリエンスを強化し、あらゆる状況に適応できるようになります。主要なSplunk製品には次のようなものがあります。
Apache Hadoopは、人気のあるビッグデータ分析ソリューションです。Javaフレームワークで構築されており、オープンソースの分散環境で大規模かつ複雑なデータを処理できます。さらに、Hadoopの知識は、ビッグデータ全般の理解を深めるのにも役立ちます。
シンプルなオープンソースのデータレイクプラットフォームで、予測分析、データエンジニアリング、機械学習に役立ちます。アマゾン ウェブ サービス(AWS)、Microsoft、Google Cloudなどのプラットフォーム向けのクラウドサポートシステムを備えており、クラウドコストを最大50%削減できます。また、セルフサービス型であるため、データ専門家それぞれのニーズに合わせてカスタマイズできます。
MongoDBは、構造化データと非構造化データを処理するためのオープンソースのクラウドベースNoSQLデータベースです。MongoDBでは、データを通常の行や列ではなく、コレクションに分類し、バイナリ型JSON (BSON)形式でドキュメントとして保存します。堅牢なストレージ性能と拡張性を備え、Python、PHP、C++といった複数のプログラミング言語をサポートしているため、開発者や企業のデータ管理部門にとって頼りになるソリューションです。
SAS (Statistical Analytics System)は、SAS Instituteがデータ管理および高度な分析のために開発した製品スイートです。ビッグデータのアナリストはこれを利用して、マイニング、レポート、さらにはデータソースの更新のためのデータモデルを作成できます。
Tableauは、ビジネスインテリジェンスとビッグデータ分析のためのデータ可視化ソフトウェアです。最大の強みはユーザーフレンドリーなインターフェイスにあり、ユーザーは大量のデータを簡単に可視化し、その意味を理解することができます。このソフトウェアを使用すると、複数のデータウェアハウスのデータをコーディングせずに保存、準備、分析、利用することができます。
上記の例とは異なり、Rは統計プログラミングとデータの可視化のためのプログラミング言語です。無料で利用できるオープンソースの言語で、データアナリストの間では最もよく利用されているプログラミング言語の1つとされています。R言語はデータのクリーニング、レポートの作成、定量分析に役立ちます。さらに、C、C++、Fortranといった他の言語によるデータレポートの操作にも対応します。
ビッグデータ分析を導入しない組織は、多くの詳細な情報、機会、インサイトを見逃すことになります。さらに悪いことに、間違った方法で進めると、データの品質に悪い影響を与え、ROIが低下するおそれもあります。ビッグデータ分析のメリット、課題、最適なツールをしっかりと検討することで、組織は情報に基づいた意思決定を行い、すべてのデータを有効に活用できるようになります。
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Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。