アムダールの法則は、55年以上にわたってコンピューターサイエンティストに使用されている法則であり、今日のコンピューティングシステムの設計と最適化の方法にも依然として影響を与えています。この法則は、特に並列コンピューティングの領域で、システムパフォーマンスの最適化に関する意思決定を行う際の指針として使用されています。
この法則の基本的な考え方は、プログラムやシステムの速度向上の可能性は最も影響の大きいボトルネックによって制限されるというものです。ボトルネックとは、システムやプログラムの中で最も時間がかかる部分を指します。
アムダールの法則は、システムパフォーマンス向上における上限を判断するためのシンプルかつ効率的な方法を提供するため、開発者に広く支持されています。プログラムやシステム内のボトルネックを特定することで、開発者はそのコンポーネントの最適化に注力でき、効果が薄い部分に無駄な時間を費やさずに済みます。
アムダールの法則は、米国のコンピューターサイエンティストであるジーン・マイロン・アムダール氏にちなんで名付けられました。同氏は並列処理を含むさまざまな方法を使用してコンピューターのパフォーマンス向上に取り組んでいましたが、1967年の米国情報処理学会連合会(AFIPS)春季合同コンピューター会議において、並列コンピューティングの制約を予測する方法を発表しました。
並列コンピューティングとは、複数のプロセッサ、コア、そしてコンピューターを使用して、多くのタスクや計算処理を同時に実行することを指します。並列処理することで、データ処理や計算速度が向上し、従来の方法よりも拡張性が高くなります。
ただし、システムにプロセッサを追加しただけで、並列コンピューティングによって自動的に高速化されるわけではありません。まず、システム全体の制約を把握する必要があります。アムダール氏が1967年の発表で紹介したのが、まさにその方法だったのです。これが後に「アムダールの法則」として知られるようになりました。
アムダールの法則は1967年に発表されたものですが、現在でも多くのコンピューティング原理やテクノロジーの基盤として重要な役割を果たしており、広く利用されています。
アムダールの法則とは、ワークロードを一定に保ったままシステムリソースを改善した場合にタスクの完了速度をどれくらい向上できるかを予測する公式です。理論上の速度向上は、タスクの中で改善の恩恵を受けられない部分によって常に制限されます。
アムダールの法則は、問題のサイズまたはワークロードが固定されている場合にのみ適用されます。
アムダールの法則の基本的な公式は、S = 1 / (1 - p + p/s)で表されます。
この公式は、プログラムの中で並列化可能な部分の割合によって、プロセス高速化の上限が決まることを示しています。
つまり、プロセッサの数や各プロセッサの速度に関係なく、システム全体の速度向上の上限は、最も影響の大きいボトルネックによって常に制限されるのです。
では、この法則をいくつかの例を通して見てみましょう。
会社で朝一番に3人のチームメンバーが出席する会議を予定しているとします。各メンバーは各自でオフィスに向かいますが、全員が到着するまで会議を開始できません。
2名のメンバーは車でオフィスに向かい、残りの1人は自転車で向かいます。
アムダールの法則によれば、チームが会議を早めに開始したい場合は、自転車で移動するメンバーのパフォーマンスに注目する必要があります。車で向かうメンバーの1人が普段より速く運転しても、自転車で来るメンバーを待たなければならないという事実は変わりません。この場合、自転車で来るメンバーがボトルネックとなります。
オンラインストアで新製品がリリースされたばかりで、Webトラフィックの急増が予想されています。需要の増加に対応するために、この会社はシステムにサーバーを増設することにしました。サーバーの増設は増加するトラフィックを処理する上で役立ちますが、各ページを表示する速度によって制限されます。これがシステムのボトルネックになります。
アムダールの法則によれば、トラフィックの急増に対応するためには、単にサーバーを増設するだけでなく、Webページの最適化に取り組む必要があります。
アムダールの法則にある主な欠点の1つとして、問題のサイズやワークロードが増加する可能性がある状況には適用できない点があります。これは、アムダールの法則の公式では、ワークロードと問題のサイズが一定であることを前提としているためです。したがって、システムパフォーマンスの向上は、システム内のコンポーネントの最適化によるものに限定され、その範囲が限られる場合があります。
さらに、アムダールの法則では、最適化プロセス中に発生する可能性のある予期しないボトルネック(自転車で会議に向かうメンバーが途中でパンクするなど)は考慮されていません。このため、得られるパフォーマンスの向上が必ずしも最適であるとは限らず、システムの最適化に投入した労力やリソースに見合うほどの効果が得られる保証もありません。
アムダールの法則はコンピューティングにおける重要な原則であり、システムパフォーマンスを最適化する際の指針となります。プログラムやシステム内のボトルネックを特定することで、開発者はそのコンポーネントの最適化に注力でき、効果が薄い部分に無駄な時間を費やさずに済みます。この法則を理解することで、開発者は効率的にシステムパフォーマンスを最大化し、並列コンピューティングの潜在的なメリットをしっかりと引き出せるようになります。
コンピューティング技術が進化を続ける中で、アムダールの法則は、システムを最適化して最大のパフォーマンスを実現する際の指針として、今後も重要な役割を果たすことになるでしょう。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳です。
この記事について誤りがある場合やご提案がございましたら、ssg-blogs@splunk.comまでメールでお知らせください。
この記事は必ずしもSplunkの姿勢、戦略、見解を代弁するものではなく、いただいたご連絡に必ず返信をさせていただくものではございません。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。