インターネットが登場する前、トレンドはどのように起こっていたのでしょうか。トレンドを記録している人がいなければ、そのトレンドはなかったことになるのでしょうか。今日、トレンドは画面上で起こり、一瞬にして現実の世界に広まります。インフルエンサーやグローバルブランド、そして皆さんや筆者のような普通の人々がソーシャルメディアに集まり、次の最先端のトレンドを見つけ出しているからです。
その中で、20年以上にわたって、インターネットのトレンドという概念に深く関わってきた人物がいます。それがMary Meeker氏です。
Mary Meeker氏は「インターネットの女王」と呼ばれるベンチャーキャピタリストです。綿密な調査に基づくインターネットトレンドレポートを公開しており、そのボリュームは年を追うごとに増し、インターネットに関するあらゆるトレンドが網羅されていました。
たとえば、1990年代半ばにオンラインサービスを利用していた米国人の数、ごく一般的な家庭で利用されているインターネット回線サービス、携帯電話サービス、Webブラウザのニーズなどです(ダイヤルアップ接続でネットサーフィンをしていたことを覚えているでしょうか)。彼女のレポートや投資は、徐々にさまざまなマスコミの注目を集めるようになり、TechCrunch、Vox、Barron'sなど、多くの有名メディアで取り上げられました。
では、彼女はどのようにして、ここまでの成功を収めたのでしょうか?
Meeker氏のキャリアは、Merrill Lynch社のブローカーとして働き始めた1980年代初頭にスタートしました。コーネル大学で金融関係のMBAを取得すると、アナリストとして働き始めた彼女は、急成長するテクノロジー業界に注目しました。数年後、彼女は自分の専門領域を、台頭しつつあったパーソナルコンピューターと消費者向けソフトウェア業界の調査というニッチな分野に移しました。
モルガン・スタンレー社で多忙な日々を過ごしていたMeeker氏は、1995年にNetscape社の新規株式公開(IPO)を担当すると、その翌年に、同僚のChris DePuy氏とともに『The Internet Report』を初公開しました。このレポートは、Meeker氏がその後、eコマース、検索エンジン、モバイルインターネット、中国のインターネットといったトピックについて同様の調査に取り組む土台となっています。
一連のレポートは当初から驚くほどのページ数がありましたが、彼女は大量の情報を集めるだけでなく、集めたすべての情報の中から注目すべき点をわかりやすく提示したり、予測を展開したりしていました。2006年には、Andrew Serwer氏がFortune誌で次のように述べています。
"Meeker氏は大局的なトレンドを注目が集まる前に見つけ出せるという点で、超一流の能力を持っている。彼女が膨大な量のデータを集めてまとめ上げた分厚いレポートは、ときに内容がとりとめのないものになったり、話が壮大になり過ぎたりすることもあるが、議論の出発点になるような要素が数多く盛り込まれている"
最終的に、Meeker氏はモルガン・スタンレー社を離れてクライナー・パーキンス社に入社し、数年間勤務した後、2018年に自身のベンチャーキャピタル、BOND Capital社を設立しました。現在、BOND社のパートナーには、Daegwon Chae氏、Noah Kauf氏、Mood Rowghani氏、Jay Simons氏、Paul Vronsky氏が名を連ねています。もちろんMeeker氏自身もです。
そしてMeeker氏は、最後のレポートとなる『Internet Trends Report』を公開しました。以下の動画は、同氏がそのレポートについて講演したときのものです。
最後の公式レポートがリリースされたのは、2019年のことでした。驚くべきことに(少なくとも私たちにとっては)、それ以降に同様のレポートは一切発表されていません。そこで、過去に公開されたレポートの内容を振り返るとともに、2024年のインターネットのトレンドを反映したSplunk独自の調査結果をいくつかご紹介しましょう。
まずは、Meeker氏のレポートがいまだに多くの人の記憶に残っていることを確かめてみましょう。そこで利用するのが、特定のトピックの検索関心度を確認できるGoogle Trendsです。このサービスで、「internet trends」と「mary meeker」という2つの検索語の関心度を、20年近くさかのぼって調べてみました。
「mary meeker」を示す赤い線が、何度か急上昇しているのがおわかりいただけるでしょうか。Mary Meeker氏に対する検索関心度は、毎年6月に急増しています。これは、同氏の年次レポートの公開を心待ちにしていた人々によるものです。このレポートは数年以上にわたり、毎年6月に公開されていました。そして今でも、彼女のレポートを探している人々がいます。検索数は確実に減ってはいますが、このレポートが大きな話題になっていた時代を覚えている人々が、依然として存在しているのも確かです。
Meeker氏が初めて公開したインターネットトレンドレポートは、最初から322ページもある大作でした。しかし、簡潔ながらも、ときに鋭い切り口で書かれた予測と、必要な情報だけを掘り下げられるように編集された何ページにもわたるデータが盛り込まれたレポートに、読者は魅了されていきました。
目次を見るだけでも、懐かしさが感じられます。当時の目次には、以下のようなセクションがありました。
このレポートのとりわけ素晴らしい点は、読者の知識や経験、あるいは読者が知りたいこと(または人)に応じて、どのようにレポートを読めばいいのかをガイドする「トレイルマップ」が最初に掲載されていたことです。
試しに、いくつか例を見てみましょう。1995年のレポートで、Meeker氏とMcPuy氏はテクノロジーアナリストが適応していくべき変化について記しています。具体的には、ミニコンピューターと初代Macintoshの発売、PCの登場、「スプレッドシートの普及とATMの拡大」、Windowsの「急速な普及」について指摘していました。
(Meeker氏とMcPuy氏は市場機会を、「Less Than」(~%未満)と「More Than」(~%超)という観点で示しました。上の例は1995年半ばのものです。インターネットにリアルタイムでアクセスできる人が非常に少なかった時代に、在宅勤務に意義を見いだせたでしょうか)
インターネットの台頭について、著者たちは次のように記しています。
“社会的な価値観、社会政策、プライバシーなどの法的問題をはじめ、他にも社会問題が発生するでしょうか?確固たるルールが確立していない新しいメディアの出現は、社会にどのような影響を与えるのでしょうか?政府はインターネット設備への平等なアクセスにどう対処するのでしょうか?法律でインターネットの「監視社会」的な側面にどう対処できるでしょうか?”
実際、30年近く経った今でも、これらの疑問のほとんどに明確な答えは出ていません。
では、時計の針を25年ほど進め、今に近い時代を見てみましょう。2019年のレポートは合計333枚のスライドで作られており、無料でダウンロードできます。構成は以前とほぼ同じで、膨大な数の統計データの合間に、背景状況に基づく有益な予測が散りばめられています。
目次に目を通すだけでも、インターネットが、家庭、職場、教育、移民、医療にどれほど浸透してきたのかがよくわかります。また、地政学的なトピックにも触れています。
さまざまなメディアが、このような大規模なレポートをくまなくチェックし、オーディエンスにとって最も関連性の高い事実をピックアップした記事を掲載することがよくあります。たとえば、VoxのRani Molla氏はMeeker氏のレポートをまとめた記事で、今日のインターネットと非常によく似たとても興味深いトレンドについて伝えました。
2019年には、世界の過半数がオンライン化しました。データによれば、2017年のオンライン人口は世界全体の半分以下(49%)でした。その後、伸びが鈍化し始めたものの、2019年には約51%(つまり38億人)がインターネットユーザーとなっています(現在の割合については後述します)。
当時、時価総額の上位10社のうち、7社がテクノロジー企業でした(どの会社かおわかりでしょうか)。「非テクノロジー」企業は、バークシャー・ハサウェイ社、ジョンソン・エンド・ジョンソン社、Visa社でした。
Splunkが2019年の予測でとりわけ注目したのは、「医療のデジタル化が着実に進んでいます。遠隔医療やオンデマンド診断が増えることが予測されます」という部分です。
現在の私たちは、新型コロナウイルスの感染拡大が全世界に影響を及ぼし、遠隔医療とオンデマンド診断にようやくスポットライトが当てられたことを知っています。そして多くの人々が、今もこうした診療方法を選択しています。
では、Splunkが独自に調査した現在のデータの一部を見てみましょう。2024年のインターネットトレンドについてご紹介します。
Splunkは今年、新しいカテゴリを追加しました。それは、すべての技術者が大いに期待を寄せているトレンド、すなわちAIです。この長く待ち望まれていたテクノロジーは、過去16か月間でようやく本格的に頭角を現し、業界全体で急成長に向けて準備を整えています。
そのため、長い歴史を振り返ることはできませんが、Statista社による初期のレポートと予測をいくつかご紹介します。
これまで公開されたインターネットトレンドレポートは全部で22件*あり、以下から閲覧したりダウンロードしたりできます。
*注:1998~2000年までのレポートはありません。また、以下の特別レポートもご覧いただけます。
ぜひご自身でチェックし、新たな発見につなげてください。
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