今回のブログには、下記の多くの同僚に協力してもらいました。
Ewald Munz (製造、自動車、サステナビリティ)、Charles Adriaenssens (金融サービス)、Gaurav Gupta (リテール、電気通信)、Sean Price (行政・公共機関、医療・ヘルスケア)、Ian Wells (オブザーバビリティ)、Linda Gröbel (ビジネスバリュー)、Luke Beare (ビジネスバリュー)、Sophie Dockstader (サステナビリティSME | PSセキュリティ)、Marc Thomas (シニアセールスエンジニア)、Maria McCann (シニアマーケティングリーダー)、Frank Nebgen (CDA&サステナビリティ担当カントリープラン実行リーダー)、Tripta Gulati (エンジニアリングサステナビリティオフィス製品&戦略担当ディレクター)、Varun Kapur (サステナビリティ担当シニアプログラムマネージャー)
2024年12月、ドイツでは産業用電気料金が過去最高値の936ユーロ/MWhに急騰し、産業界に衝撃が走りました。Statista社によると、この価格は過去数カ月間の平均の6倍にのぼります。その結果、生産コストが極度に増大し、特にエネルギー集約型の企業は大きな打撃を受けました。ハンデルスブラット紙によると、電磁鋼板製造設備を保有するFeralpi社は、コストの高騰から会社を守るために2日間の生産停止を余儀なくされました。
あらゆる業界にとってエネルギーマネジメントシステムが最優先課題であることが、こうした数々の事例によって示されています。エネルギーマネジメントシステムにはさまざまな取り組み方があります。このブログ記事では、エネルギーコストの低減、エネルギー効率の向上、オフィスビル、データセンター、工場の二酸化炭素排出量の削減を通じてレジリエンスを構築するための、あらゆる業界に共通するデータドリブンのアプローチをご紹介します。
エネルギーマネジメントシステムにおいては、エネルギーコスト、エネルギー効率、二酸化炭素排出量という、互いに連携する3つの指標が重要になります。最優先課題であるエネルギーコストの低減を実現するには、エネルギー消費を効率化する必要があり、エネルギー効率の向上は、二酸化炭素排出量の削減と密接な関係にあります。二酸化炭素排出量の削減は、後述のEU規制要件でもあります。
規制当局が重視する領域の1つが、環境サステナビリティに関する情報の開示と透明性の向上です。こうした規制の例をご紹介します。
CSRD - 企業サステナビリティ報告指令
EUのCSRD (企業サステナビリティ報告指令)は、社会問題や環境問題への取り組みについて企業が開示すべき情報を定めた既存の規制を最新化および強化することを目的としています。より幅広い企業にサステナビリティに関する情報開示を義務付け、ESRS (欧州サステナビリティ報告基準)に従って報告を行うことを求めています。たとえば、エネルギー使用量が大きい企業には、その報告が求められます。
EED - エネルギー効率指令
EUのEED (エネルギー効率指令)は、産業組織やデータセンターを中心にEUのエネルギー転換を促進する主要な規制の1つです。エネルギー消費の大きい産業組織には、エネルギー効率を監視および最適化するためのエネルギーマネジメントシステムの導入を義務付けています。また、エネルギー消費の大きいデータセンターには、エネルギー性能とウォーターフットプリント(水の総使用量)の報告および開示を求めています。
EPBD - 建築物エネルギー性能指令
EUで最もエネルギーを消費しているのは建物であり、2023年には全エネルギー消費量の40%を占めました。そこで、改正EPBD (建築物エネルギー性能指令)などの規制により、新築の建築物に対してエネルギー性能のさらなる向上を義務付けています。たとえば、EPBDでは、新築の建築物と大規模改修中の既存の建築物のエネルギー性能に関する最低要件を定めています。
ISSB - 国際サステナビリティ基準審議会
世界レベルでは、複数の国や地域が、ISSB (国際サステナビリティ基準審議会)のIFRS® サステナビリティ開示基準(SDS)の適用義務付けに向けたロードマップや具体計画を検討および整備し始めています。 管理の基本原則と言える次の言葉は、エネルギーマネジメントシステムを促進するこれらの新しいコンプライアンスに対応する際にも当てはまります。
GHG:温室効果ガス
つまり、「管理」するためにはまず「計測」する必要があり、そこでオブザーバビリティが重要になります。
先進的なオブザーバビリティプラクティスを構築してデジタルレジリエンスを強化することは、今日、あらゆる業界の組織にとって不可欠です。Splunkは、ガートナー社による2024年オブザーバビリティプラットフォーム部門のマジッククアドラントでリーダーに認定されました。ガートナー社は、オブザーバビリティプラットフォームの定義として、ログ、メトリクス、イベント、トレースを含む幅広いソースからテレメトリ(運用データ)を取り込む機能を持つ製品としています。オブザーバビリティプラットフォームは、重要なアプリケーションやサービスの可用性、パフォーマンス、レジリエンスを測定および改善するために使われます。
このアプローチに基づくSplunkオブザーバビリティポートフォリオの新たなユースケースが、IT (情報技術)環境とOT (オペレーショナルテクノロジー)環境を横断したインフラ監視です。すべての環境を包括的に可視化することで、トラブルシューティングの迅速化とコスト抑制につなげることができます。この考え方をエネルギーマネジメントシステムに応用すれば、製造、エネルギー・公益事業、リテール(小売)、金融サービス、行政・公共機関、電気通信などの業種を問わず、データセンター、オフィスビル、工場のエネルギー消費を監視できます。
エネルギーマネジメントシステムにおける優先順位は業種によって異なります。製造、自動車、およびエネルギー・公益事業では、オフィスビル、データセンター、工場の3つの領域すべてが対象になるため、エネルギーマネジメントシステムのメリットが大きくなります。一方、金融サービス業や行政・公共機関では、データセンターをクラウドに移行するよりもオンプレミスで運用することを選ぶケースが多いため、データセンターのエネルギーマネジメントシステムがより重要になります。
金融サービス企業や行政・公共機関にとって、オンプレミスのデータセンターの二酸化炭素排出量は全体の中で大きな割合を占めます。リテール企業の場合、店舗などの物理的な拠点が多いことに加えて、冷凍食品などを扱う場合は効率的でコスト効果の高いコールドチェーン(低温物流)を維持する必要があるため、エネルギーマネジメントシステムが不可欠です。
オフィスビル、データセンター、工場のエネルギーマネジメントシステム指標に重点を置いた統合的な環境サステナビリティソリューションを導入することは、可視性の向上と主要なビジネス成果の達成に効果的です。エネルギーマネジメントシステムはデータの問題でもあるため、IT環境とOT環境を包括的に可視化するには、両環境の複数のソースからエネルギーデータを収集、分析することが欠かせません。統合ソリューションでは、カスタマイズ可能な視覚オブジェクトで構成されるダッシュボードでメトリクス、ビジネスKPI、技術KPIを監視したり、内蔵のAI/機械学習を活用した外れ値の検出、障害の予測、クラスター分析、対応策の提案機能を利用したりできます。
次の図に、Splunk Sustainability ToolkitとElectricity Mapsを利用した統合サステナビリティソリューションの例を示します。Electricity Mapsは、世界各地の電力調達状況や炭素強度のリアルタイムデータと予測値を提供しています。
エネルギーマネジメントシステムの主要なビジネス成果には、エネルギーコスト、エネルギー効率、二酸化炭素排出量の可視化と最適化に加えて、異常なエネルギー消費に基づくハードウェアの問題の検出やセキュリティ対策の補強もあります。さらに、専用のエネルギーマネジメントシステムソリューションを利用して前述のコンプライアンス規制に対応すれば、株主、投資家、消費者からの信頼が高まり、最終的に、競争力の強化や就職先としての魅力の向上につながります。
Bosch Rexroth社は、エネルギーマネジメントシステムプロジェクトにより、シスコのEMEA Customer Awards 2025でIndustry Innovator部門のファイナリストに選ばれました。
Bosch Rexroth社をはじめとするさまざまな組織での導入事例や、各業界でのエネルギーマネジメントシステムソリューションの導入方法についてご興味がある場合は、ぜひ以下のセッションにご参加ください。エキスパートや業界リーダーから直接話を聞くことができます。
アムステルダム
2025年2月10~14日
BITKOM社データセンターワーキンググループ
デュッセルドルフ、2025年2月12日
注:このイベントに参加するにはBitkomメンバーシップが必要です。
データセンターのエネルギーマネジメントシステム | Splunk
データセンター向けのサステナビリティダッシュボードとデモ | Computacenter社
Splunk Immersive Experience Center (SIE) (ロンドン)
製造、金融サービス、リテール、行政・公共機関、医療・ヘルスケア向けの業界別ガイド付きツアーで、エネルギーマネジメントシステムによるレジリエンスの構築にデータを活用する方法を実践的に学べます。まずはご予約ください。
エネルギーマネジメントシステムによるレジリエンスの構築について詳しくは、こちらからお問い合わせください。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、前園 曙宏によるレビューです。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。