IDE (統合開発環境)は、あらゆるソフトウェア開発者にとって必須のソフトウェアアプリケーションです。多種多様なIDEがありますが、近年ではブラウザベースのIDEが開発チームの間で大きな人気を博しています。理由はその利便性と直感的な使い心地にあります。
このブログ記事ではブラウザベースのIDEを取り上げ、その機能、現時点で利用可能なブラウザベースのIDEトップ5を紹介します。また、ソフトウェア開発チームにとってのメリットを詳しく考察するとともに、IDEの制約に関する重要な考慮事項を説明します。
(ソフトウェア開発の最新の事情については、Splunkのイベントと取得すべき重要な認定資格(トレーニング)をご覧ください)
IDEはソフトウェア開発に必要なすべてのツールを1つの環境に集約したソフトウェアアプリケーションであり、ソフトウェアアプリケーションの作成、コンパイル、デバッグ、テスト、ビルド、導入をスムーズに進めることができます。IDEはソフトウェア開発プロセスを合理化し、最終的には開発者の生産性を高めます。
多くのIDEが無償で提供されていますが、高度な機能を利用するために商用ライセンスが必要になる場合もあります。つい最近まで、IDEの多くはデスクトップアプリケーションであり、ユーザーが自身のローカルマシンにダウンロードしてインストールしなければなりませんでした。そして、IDEが適切に動作するためには、ソフトウェアやハードウェアが一定の要件を満たす必要がありました。
最近では、ブラウザベースやクラウドベースのIDEが登場し、開発者はWebブラウザでIDEにアクセスできるようになりました。通常、ブラウザベースのIDEはサードパーティの企業が提供し、クラウドコンピューティング環境でホストされます。ユーザー側で高性能のコンピューターを用意する必要がなく、ダウンロードとインストールが不要です。
ブラウザベースのIDEはオンラインで共同開発するのに最適なツールであり、特にチームが複数の拠点に分散している場合に有効です。ただし、ブラウザベースのIDEはまだ進化の途上にあり、制約もあることを念頭に置いておく必要があります。
ブラウザベースのIDEは数多く存在します。最適なIDEを選ぶには、以下に挙げる重要な点を考慮することが大切です。
コードエディターの機能:コーディング速度を上げるコード編集機能について確認してください。たとえば、自動コード補完や自動インデント、シンタックスハイライト、コードのリファクタリングといった機能です。
サポートしている言語:使用するプログラミング言語がサポートされているか確認してください。使用するプログラミング言語のプラグインや拡張機能についてもチェックしましょう。
デバッグのサポート:コードのデバッグ機能(ブレークポイントやステップ実行でのデバッグなど)が標準で用意されているか確認してください。
テストのサポート:単体テストやその他のテスト自動化タスクを実行できる一般的なテストフレームワークがサポートされている必要があります。
プラグインと拡張機能:ソフトウェアアプリケーションの機能を拡張するために、多彩なプラグインがサポートされていることが非常に重要です。リモート開発やコード整形の拡張機能など、一般的な拡張機能やプラグインがエディターでサポートされているか確認してください。
価格:ブラウザベースのIDEには有料のものもあります。IDEの機能が予算や要件に合致しているかよく確認してください。
ドキュメントとサポート:IDEには使い方を示す手順書が必要です。必要な全機能を順番に解説する自動ガイド機能付きのIDEもあります。また、問題のトラブルシューティングに役立つオンラインサポート、チュートリアル、動画など、IDEについて詳しく学べる機能があると便利です。
スマートなツール:開発タスクを支援するAI(人工知能)ツールが利用できるかを確認してください。たとえば、コードのデバッグを支援するAIツールや、改善策をわかりやすく提案してくれるAIツールなどがあります。
ブラウザベースのIDEは、ローカルマシンにインストールするIDEと比べて、いくつかの点で優れています。
デスクトップ型の場合は、必要な依存関係もダウンロードしてインストールする必要があります。また、IDEを使用するには、ハードウェアおよびソフトウェアの要件を満たし、適切な設定を行わなければなりません。
ブラウザベースのIDEではこうした作業が不要なため、開発者の時間短縮につながります。また、アップデートのインストールや、マシンの切り替え時の再設定について心配する必要がありません。
デスクトップIDEは、使用しているプラットフォームに依存します。つまり、Windows、macOS、LinuxなどのOSを切り替えるたびに、対応するパッケージをセットアップする必要があります。一方、ブラウザベースのIDEは、マシンで実行しているOSに依存しません。
ブラウザベースのIDEは、オンラインでのコラボレーションとコード共有のツールとして最適です。ブラウザベースのIDEは、高度なソフトウェア、ハードウェア、その他の依存関係を必要としません。ライブコーディング面接やペアプログラミングなど、リモートワークのユースケースにも適しています。
ブラウザベースのIDEでは、クラウドインフラストラクチャを利用しているため、開発者は十分なリソースを備えた拡張性の高い環境でコードの実行、ビルド、テストを行うことができ、拡張性や効率性の要件について心配する必要がありません。
ブラウザベースのIDEは、GitHubやプロジェクト管理ツールなど、その他のツールとの統合をサポートしています。そのため、開発作業がシンプルになり、迅速化されます。
デスクトップ型とは異なり、ブラウザベースのIDEには、アカウントを介してどこからでもアクセスできます。どのマシンでも作業が可能なため、移動の多い人にとっては特に便利です。
これらの要素すべてが、DevOpsチームの成功を左右すると言えます。
業界ではブラウザベースのIDEが注目を集めていますが、特定のIDEに投資する前に知っておくべき制約も存在します。
ブラウザベースのIDEはインターネットを介して使用するため、接続速度の低下やネットワークに関連するさまざまな問題によって、作業が中断されるおそれがあります。
ブラウザベースのIDEは、クラウド環境でホストされ、Webブラウザ上で実行されます。IDEをホストしているサイトのセキュリティやプライバシー機能が不十分だった場合、使用しているシステムやデータが不正アクセスに対して脆弱になる可能性があります。
ブラウザが最新のSSL証明書や安全なログイン機能などのセキュリティをサポートしているかどうかを事前に確認してください。
ブラウザベースのIDEの中には、特定のWebブラウザしかサポートしていないものもあります。また、ブラウザのアップデートに伴って問題が生じる可能性もあります。そのため、互換性のあるWebブラウザを使用すること、およびアップデートによって互換性の問題が生じた場合には別の対応ブラウザに切り替えられるよう準備しておくことが重要です。
ブラウザベースのIDEの中には、開発者が必要とするサードパーティのインテグレーション、拡張機能、ライブラリをサポートしていないことがあり、その場合はソフトウェアアプリケーションのカスタマイズが制限されます。
AWS Cloud9は、Amazonが提供しているブラウザベースのIDEで、Webブラウザ上で直接コードの記述、実行、トラブルシューティングができます。開発環境は、LinuxサーバーまたはEC2マシン上で実行できます。以下をはじめ、アプリケーションのビルドに必要なものがすべて揃っています。
このIDEでは、JavaScript、Python、PHP、Ruby、Go、C++をはじめ、40以上のプログラミング言語がサポートされています。また、組み込みのイメージエディターで画像を効率的に編集できます。AWS CodeStarとシームレスに統合されていて、アマゾン ウェブ サービス(AWS)プラットフォームにアプリケーションをすばやく展開できます。
このブラウザベースのIDEには、他にはない機能が搭載されています。たとえば、Ghostwriterのような革新的なAI機能が、Java、Python、Scala、Ruby、C/C++などさまざまなプログラミング言語でのコーディングをサポートしています。基本的なIDE機能が利用できる無料バージョンと、高度な機能が利用できるサブスクリプションプランが用意されています。
このIDEはエディター、コンソール、出力エリアから構成され、開発者はアプリケーションを記述してすぐにその実行結果を見ることができます。また、モバイルデバイスでもシームレスに使用できます。さらに、gitとの統合、チャット、ディスカッションスレッドなどの便利なコラボレーション機能も多数用意されています。
Glitch IDEは、ドラッグアンドドロップのように直感的に操作できる機能を備えており、さまざまなビルトイン支援ツールが統合されています。コードエディターでは自動補完やシンタックスハイライトなどの機能が利用できます。GlitchはHTML、CSS、JavaScriptなどのテクノロジーに対応しており、最新のプログラミング言語とフレームワーク(JavaScript、Node.js、React、Vue.js、Expressなど)をサポートしています。Glitchの無料バージョンは、フルスタックのアプリ開発を全面的にサポートしており、必須のコーディング機能、上限なしの静的サイト、GitHubとの統合が利用できるほか、美しいコード整形が標準で利用できます。
さらに、チャット、共同編集、プロジェクト共有などのリアルタイム機能も利用できるので、大規模なチームでプロジェクトを協力して進めることができます。
JSFiddleは、フロントエンドのWeb開発に最適です。HTML、CSS、JavaScriptをサポートしており、React、Bootstrap、TypeScriptといった最新のJavaScriptフレームワークにも対応しています。ユーザーはコラボレーションが可能な双方向の環境で作業できます。さらに、この無料ツールには開発プロセスを始める際に役立つボイラープレートコード(定型的なコード)も用意されています。
このIDEは特に、コーディングを学習中の初心者プログラマーに適しています。それ以外にも、多くの開発ユースケースで役立ちます。たとえば、Stack Overflowでコードの解決策を示したり、さまざまなドキュメントで使用するデモ用コードを作成したりできます。
JSFiddleには、コラボレーションやコードスニペットの機能もあり、ライブ面接を実施できます。
CodePenは、フロントエンドのWeb開発に特化したブラウザベースのIDEです。HTML、CSS、JavaScriptに対応しており、関連するライブラリが使用できます。コードエディターでは、コードの自動補完、シンタックスハイライト、エラーチェックなどの機能が利用できます。ユーザーは、コードの出力結果をリアルタイムでプレビューできます。
CodePenでは、Babel、CoffeeScript、TypeScript、LiveScriptなど、JavaScriptのさまざまなプリプロセッサが利用できます。さらに、JavaScriptパッケージを構成して利用できる機能もあります。CodePenではコラボレーションとコード共有の機能も利用できます。
ブラウザベースのIDEとは、Webブラウザを使用してオンラインでアクセスできるIDEです。その利便性の高さから、開発者の間で人気が高まっています。プラットフォームに依存せず、各種のコード編集機能、テスト機能、デバッグツール、導入オプションを提供します。また、サポートしているプログラミング言語の幅も広く、最新の開発ワークフローに必要な拡張性と効率性を備えています。特に人気の高いものに、AWS Cloud9、Repl.it、Glitch、JSFiddle、CodePenがあります。
ブラウザベースのIDEは、組織にさまざまな利点を提供します。ただし、ネットワーク接続の問題が発生する可能性、カスタマイズの限界、各種Webブラウザとの互換性の問題などの制約についても考慮する必要があります。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳です。
この記事について誤りがある場合やご提案がございましたら、ssg-blogs@splunk.comまでメールでお知らせください。
この記事は必ずしもSplunkの姿勢、戦略、見解を代弁するものではなく、いただいたご連絡に必ず返信をさせていただくものではございません。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。