Splunkは2023年7月11日、年次のプライベートイベント「Splunk Experience Day 2023」を都内・目黒雅叙園において開催しました。コロナ禍を経て、オフラインでの開催は4年ぶりになります。会場では、Splunkが技術提供するF1チーム「McLaren Racing」のシミュレーションマシンでのタイムアタックコーナーが設けられるなど、講演会場の外でも盛り上がりました。長く開催を待っていただいていた数多くのユーザーさまにご来場いただき、来場者数は約500人となりました。
基調講演に登壇した日本法人 社長執行役員 野村 健は2021年7月に現職に着任して約2年、Splunkにはコロナ以前から在籍していますが、社長として自社の大規模イベントにお客様を迎える初めての機会です。講演の冒頭では、次のように事業の状況を紹介しました。
「4年前のイベントで、私たちは10億ドル企業を目指すと表明しました。それがいまやARR(年次経常収益)が37.25億ドルを達成するまでになりました。フリーキャッシュフローは4.86億ドルで前年の253%増。急速に成長しています」
成長の背景には、社会全体がデータの信頼性・安全性に注目するようになったことが挙げられます。CEOのGary Steeleが参加したダボス会議では、国・地域をまたいだ安全なデータ流通についてさまざまな議論が交わされました。さらに、広島サミットでは「人間中心の信頼できるAI」を構築するために、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を具体化させるべきであるという意見が議長国である日本から発信されています。
それを実現するために不可欠な要素が「デジタルレジリエンス」です。レジリエンスは、弾力、回復力を意味し、デジタルレジリエンスは、システムに障害や問題が起こった際に、素早く回復させる能力を指す言葉となります。「絶対に事故を起こさない機械」はありません。システムにも、障害は起こります。障害を起こさないように努力することはもちろん大切ですが、障害は起こるものだという意識を持ち、その際に素早く対応することで、被害を最小限にとどめる努力こそ、データの信頼性・安全性を担保する原動力になります。
Splunkのセキュリティとオブザーバビリティの統合プラットフォームは、まさにこのデジタルレジリエンスの実現に貢献できる製品です。また、社会課題として現在最も注目度の高い環境問題に貢献できるソリューションでもあります。システムのクラウド移行がCO2削減に有効であるという事実も、Splunkの躍進に貢献しました。Splunkでは、この分野にSplunk Sustainabilityを投入。これはITインフラのクラウド移行をサポートし、移行後にクラウド上のシステムを監視・管理できるようにするツールです。監視すると同時に、クラウド上にあるシステムの物理的な位置を把握した上で演算処理量などを計算し、CO2排出量分析も可視化できることが特長です。
Splunk Well-beingも注目の製品です。ニューノーマル時代の新しい働き方として、テレワークが注目されていますが、世界中のさまざまな場所で、好きな時間に、自由なスタイルで働く従業員のデジタル上の行動をリアルタイムに可視化できます。監視することによって内部不正を抑止するという側面もありますが、これを生産性やエンゲージメント、さらにはビジネスパフォーマンスの向上という視点からダッシュボードに可視化できます。
「Splunk Sustainabilityは、よりクリーンな電力を使える地域にアプリを移動し、そこで稼働させる、という使い方ができます。Splunk Well-beingは、働き方を可視化することでアクションにつなげるヒントを数多く提供できます。より安全でレジリエントなデジタル世界を作る、という私たちのミッションに向けて、これらのようにユニークな機能を備えた製品をラインアップしています」(野村)
DXが加速する現在、ビジネスにおけるレジリエンスとデジタルレジリエンスは表裏一体の関係になりました。デジタルサービスをビジネスの現場で当たり前のように使うようになったことで、デジタルサービスのトラブルは、ビジネス機会の損失やブランド既存に直結してしまうためです。たとえば、ECサイトでなくリアル店舗でも、レジシステムがクラウド化されていれば、システムやネットワークにトラブルがあれば決済できません。このように、デジタルは仕事の隅々にまで行き渡っています。Webサイトの改ざんや情報漏洩といった直接的な被害がメディアに報じられるような重大インシデントだけでなく、SNSに顧客が不満を書き込み、それが周知されることなどによっても、ブランドは傷ついてしまうのです。
一方、エンタープライズのIT環境は複雑で、サイロ化しているケースがほとんどです。優秀な人材は確保しづらく、規制の数は増え、コンプライアンスは強化しなければなりません。これらはデジタルレジリエンスの実現を困難にさせている主な要因です。そして、この複雑な状況をシンプルに解決し、セキュリティの担保とシステム運用、および開発業務の効率化を統合的に強化できるソリューションとして、Splunkを採用いただくお客様が増えています。
野村に続いて壇上に立った執行役員 技術統括本部長 瀬島 一海は、「エンタープライズITは、以前に増して複雑化しています」と会場に語りかけました。
「ITインフラはオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドに分散し、それらをセキュリティ、システム運用、およびシステム開発という別のミッションを持つチームが、それぞれの視点から管理する現状があります。私たちは、セキュリティとオブザーバビリティ(可観測性:システム内部の詳細なモニタリング)を統合し、包括的な管理と可視化を実現するプラットフォームを提供することで、お客様のデジタルレジリエンス高度化を支援しています」
優れたデジタルレジリエンスを実現するためには、すべてのインフラから生成されたデータを集約し、チーム横断で情報を共有することが必要です。単一のツールを使って状況を可視化することで、各チームが共通言語で会話できるようになります。問題が発生した際には、スムーズに共同で調査することが可能になり、迅速にチーム横断で行うアクションや個別のアクションへと落とし込めます。
Splunkは、セキュリティ運用を高度化するSIEM、UBA、SOARなどの機能と、インフラ、アプリケーション、デジタルエクスペリエンスなどを監視するオブザーバビリティの仕組み、およびそれらを包括的に管理する統合プラットフォームを提供しています。同時に、ユーザー独自の環境に最適なセットアップを支援するコンサルティングサービスや、業種別のユースケースおよび豊富なプリセットKPIが含まれるテンプレート提供などで、定着化を支援する活動も行っています。
そして、Splunkを使う最大のメリットは、Splunkの使用範囲を広げる構想をすることで、デジタルレジリエンスを高度化する展望を描けることです。引き続き、レポートの後編では、SplunkユーザーのZOZO様の事例講演を取り上げ、ZOZO様のデジタルレジリエンスの今と未来について紹介します。「Splunkを使えば何がどう良くなるのか」についての具体的な話になりますので、ぜひ後編もお楽しみください。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。