
デジタルレジリエンスを強化するAIの理念
今後の製品戦略にAIを取り入れてサイバーセキュリティとオブザーバビリティの成果を向上させるための、Splunkの3つの戦略をご紹介します。
AI(人工知能)は日を追うごとに私たちの生活に溶け込み、働き方、楽しみ方、世界とのつながり方を変えています。AIの可能性を最大限に引き出すためには、その基盤となっているAIフレームワークについて理解する必要があります。
AIフレームワークとはどのようなもので、AIの開発に欠かせないものなのでしょうか?
人間の認知機能を再現できる複雑なニューラルネットワークであれ、予測分析のために作られたシンプルな機械学習モデルであれ、AIフレームワークはすべてのテクノロジーの基礎を形作っています。
この記事では、現在普及しているAIフレームワークについて説明します。また、今日の重要なトピックであるAIに特化したリスク管理フレームワークについても詳しく見ていきます。
学習、適応、進化が可能で、高度かつインテリジェントなAIシステムを構築する際の基礎となるのがAIフレームワークです。AIフレームワークは、AIアルゴリズムの開発と実装をシンプルにする一連のライブラリであると定義できます。
AIフレームワークに用意されている事前構築済みの機能やライブラリを活用することで、複雑なアルゴリズムの構築と実装が効率化されます。開発者は、基盤となるシステムをゼロから構築する代わりに、特定のタスクに適したAIモデルをカスタマイズすることができます。
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AIフレームワークを活用すれば、開発プロセスを標準化できます。つまり、どのAIプロジェクトでも、使用するツールや手順を統一することができます。ツールや手順を統一することで、さまざまなプラットフォームやアプリケーションにAI機能を統合できます。
たとえば、TensorFlowには開発時間を短縮する大規模なライブラリが用意されています。このフレームワークがさまざまな業種で広く採用されているのはこのためです。
AIフレームワークを選定する際は、パフォーマンス、コミュニティサポート、柔軟性、学びやすさなどの要素を考慮して、プロジェクトの要件とスキルレベルに合致したフレームワークを選ぶようにしてください。ここでは、オープンソースとベンダー固有の両方のフレームワークをいくつか紹介します。
オープンソースのAIフレームワークは、柔軟性、適応性、コスト効率に優れています。開発者は、多様なアルゴリズムを試し、さまざまなデータタイプに対応し、他のテクノロジーとスムーズに統合できます。
オープンソースの主要なAIフレームワークは以下のとおりです。
GoogleのBrainチームによって開発されたTensorFlowは、機械学習モデルを構築でき、言語の翻訳や顔認識などのタスクに有効です。これは、複雑な理論的概念から実用的なアプリケーションや重要な機能を生み出す装置のようなものと考えることができます。
インタラクティブに操作できるTensorFlowのユーザーインターフェイス(UI)は、複数のプラットフォームで使用できるため、モデル開発の各要素を視覚的に確認しながら開発を進められます。こうした機能により、機械学習アルゴリズムの複雑性が緩和されます。
さらに、TensorFlowはCPUやGPUに対して高い適応性および互換性があるため、さまざまなコンピューティング環境でモデルの学習と開発を容易に実行できます。こうした柔軟性を生み出している要素として、そのモジュール性と運用性が挙げられます。ユーザーは、さまざまなプロジェクト要件を満たすようにライブラリをカスタマイズできます。
Meta AIが開発したユーザーフレンドリーなPyTorchでは、効率的なモデル開発において重要なプロトタイプを迅速に作成できます。これを実現するために、ボイラープレートコードを最小限に抑え、モデル構築プロセスが合理化されています。
汎用性と迅速なパフォーマンスに定評があるPyTorchでは動的計算グラフがサポートされており、モデルの開発中に柔軟に調整できます。また、自動微分によりコードのテストとデバッグをリアルタイムで実行できるため、ディープニューラルネットワークの構築とトレーニングを効率的に行えます。
Kerasは、Pythonで記述された高度なニューラルネットワークライブラリです。直感的に使えるよう設計されているため、理解しやすく簡単に使用できます。Kerasライブラリの構造は非常にわかりやすく、一般的にはKerasの機能を強化するためにTensorFlowと組み合わせて使用されます。Kerasではデバッグ機能によって洗練された管理しやすいコードを維持できるため、コードベースの複雑さが軽減され、メンテナンスしやすくなります。
また、さまざまなニューラルネットワークモデルをサポートしており、すぐに導入できるレイヤー、活性化関数、最適化手法を網羅した包括的なライブラリを備えています。こうした高度な機能を持つKerasは、適応性と柔軟性が高いだけでなく、ニューラルネットワークにおける高度な研究にも適した優れたツールです。
オープンソースのほかに、高度な機能と能力を備えたベンダー固有のAIフレームワークもあります。その一部を紹介します。
上に挙げたオープンソースとベンダー固有のフレームワークを活用することで、データサイエンティスト、開発者、研究者は、AIモデルを構築、トレーニング、検証、導入することができます。最先端の研究や効率的な生産ソリューションなど、具体的なニーズに応じて適切なAIフレームワークを選定することができます。
AIモデルに内在するリスクについて、おそらく皆さんも聞いたことがあるでしょう。AIのリスクフレームワークは、ビジネスにAIを利用したことで生じるさまざまな課題を克服するのに役立ちます。
組織内でAIに特化したリスクフレームワークを導入することは、以下の理由から賢明な方針と言えます。
AIのリスクフレームワークで注目すべきものをいくつか紹介します。
NIST (米国国立標準技術研究所)が開発したAI RMFは、AI関連の製品、サービス、システムを設計、開発、評価する際に、信頼性を組み込むことを重視する無償のフレームワークです。
このフレームワークには、以下の4つの機能があります。
国際標準化機構は、さまざまな業界の多種多様なビジネスおよびテクノロジーの運用について標準規格を策定しています。最近の標準化のひとつに、2024年1月に発行されたISO 42001があります。
ISO 42001は、AI管理システム(AIMS)の確立、実装、保守、継続的な改善を検討しているすべての組織にとって有用な基準となります。「AIを利用した製品やサービスを提供または活用している個人や組織」を念頭に策定されたこの基準は、AIシステムの利用と開発に責任を持つためのものです。
ペンシルベニア大学ウォートン校が開発したこのフレームワークは、金融サービス業界におけるAIのリスクに焦点を当てています。リスクは以下の4つの主要なカテゴリーに分類されます。
大規模なテクノロジー企業では、AIを使用するビジネスオペレーションの各段階にこれらのリスクフレームワークを導入することで、リスクを軽減できます。
Googleも、エコシステムの安全性向上を目的としたSAIFモデルで、リスクフレームワークの世界に参入しています。SAIFには、以下に挙げるような役割があります。
AIのリスク管理フレームワークを導入することで、AIテクノロジーに起因するリスクをより適切に管理できるようになり、不測の事態を最小限にとどめることができます。
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Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。