業界リーダーに学ぶ、セキュリティ強化、レジリエンス向上、イノベーション推進のためのデータ活用法
世界規模で感染症対策に取り組む私たちを支援してくれるSplunkは心強いパートナーです
データを手動で処理していたため、顧みられない感染症の研究を支援する事業を拡大できず、国連が定めるSDGs (持続可能な開発目標)に寄与することが困難になっていました。
医療が十分に行き届かない患者は世界中で数十億人に上りますが、Splunkを導入し、時間のかかる作業を自動化して少ないリソースを有効活用することにより、そうした患者を救う一助となるAIモデルの開発を強化しました。
医療と科学研究へのアクセス格差は世界全体で非常に大きな課題であり、特に発展途上国に不公平をもたらしています。世界保健機関(WHO)によると、低所得国の死因トップ10のうち6つが感染症に関連するものであるにもかかわらず、感染症を対象とする新薬開発の割合は全体の15%にとどまります。また、これらの国々が発表する科学論文数は世界全体の5%にも届きません。その結果、生物医学研究が遅れ、命を救えるはずの治療薬が手に入らず、途上国に暮らす数十億の人たちのニーズがほとんど顧みられないという悪循環に陥っています。
Ersiliaオープンソースイニシアティブは、この課題の解決に取り組んでいます。技術NPOとして、マラリアや結核をはじめとする感染症の蔓延を阻止しようと活動する人たちのために、使いやすいデータサイエンスツールを開発し無料で公開することで、グローバルヘルスの公平性向上を目指しています。ErsiliaのオープンソースAIモデルは、実験期間の短縮と創薬コストの削減に貢献し、リソースの少ない環境で働く研究者を支えています。
しかし、Ersiliaは無駄のない組織であり、2人の創設者と外部の貢献者によって運営されています。貢献者の数は増えているものの、リソースの制約は厳しく、AIモデルの開発は手動プロセスに頼っていたため、規模の拡大に苦心していました。この状況を変えたのがSplunk Global Impactです。世界中の非営利団体や教育機関にソフトウェアライセンス、トレーニング、サポートと教育を無償で提供するこのプログラムの対象にErsiliaが選ばれたことで、突破口が開けました。
現在は、Splunkを活用して開発規模をかつてないほど拡大し、ErsiliaのAIモデルを利用する世界中の医療研究者を今後2年間で10倍に増やすという短期目標の達成に向けて邁進しています。まずは、サハラ以南のアフリカの問題に重点的に取り組み、その後、対象地域を南米に広げていく計画です。Ersiliaの共同創設者兼最高科学責任者であるMiquel Duran-Frigola氏は次のように話しています。「グローバルサウスの生物医学教育における世代交代を待つ余裕はありません。入学してから博士号を取得するまでには長い時間がかかります。しかし、データサイエンスを活用すれば今日から未来に飛躍できます」
Ersiliaは、誰もが科学の恩恵を受けられるようにするという壮大なミッションを掲げています。しかも規模を拡大する必要があります。鍵は、Ersiliaのオープンソースプラットフォームにあります。このプラットフォームでは、科学者や臨床医がツールを独自に開発したり高価なソフトウェアを購入したりしなくても適切な予測を行えるように、幅広いAIモデルを提供しています。Ersiliaのプラットフォームを使用することで、異なる研究所、さらには異なる国で仕事をする研究者間でデータベースを一元化して、予測モデルの研究に利用できます。これにより、たとえば、従来の選定方法や臨床試験では10年近くかかっていたようなハイリスク患者の特定を数日で行えます。
Splunkの導入前は、AIモデルに必要なデータをErsiliaのチームが手動で分析、管理していました。この作業には多大な時間とコストがかかり、技術的な知識も必要なため、限られたリソースでは規模拡大は望めませんでした。そこで、Splunk Enterpriseを導入し、その価値を早期に引き出せるよう、ハンズオントレーニングを受けて使い方を習得しました。これにより、データモデル開発の生産性が一気に向上し、導入後6カ月で100以上のモデルを開発できるようになり、1年で約500のモデルを開発する目途が立ちました。これは、世界中の医療機関から集められたデータを手動で分析、管理する時間を節約できたことの直接的なメリットです。
「Splunkのおかげで、データの取り込み、分析、処理プロセスが効率化され、Ersiliaの開発力と拡張性がかつてないほど向上しました」とMiquel Duran-Frigola氏は評価します。
地域ごとの事情に配慮しながらベストプラクティスを取り入れることで、健康格差の解消が加速するはずです。それは最終的に、国を問わずより安全で、より健康で、よりレジリエントな社会を構築することにつながるのです
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という格言があります。飢えている人に魚を与えても1日で食べてしまうが、魚の釣り方を教えれば一生食べていけるという意味です。この考え方は、「一時しのぎの支援を提供するのではなく、ベストプラクティスを共有することで自立可能な研究所の構築を手助けする」というErsiliaのコミュニティ支援の基本方針に通じます。この方針は、Ersiliaのミッション達成に不可欠です。
ErsiliaモデルハブをSplunkプラットフォームに移行するにあたっては、bitsIO社が無償で支援を提供しました。同社とSplunkの協力によって、Ersiliaチームはより多くのコミュニティに対応できるようになりました。「Splunkプラットフォームに移行したことにより、感染症の治療に必要なツールを研究者に届ける能力が劇的に向上しました」とDuran-Frigola氏は説明します。「Splunkソリューションのおかげで、年間700時間分の手動作業を削減できました。節約した時間をコミュニティのトレーニングに費やすことで、私たちの『データモデル・アズ・ア・サービス』は成長し続けています」
Ersiliaのチームは、Splunkの直感的なダッシュボードとアラートを活用してAIパイプラインの運用を維持し、Ersiliaのモデルを使用する世界中の何百人もの学生、教授、臨床医がAIパイプラインを利用できるようにしています。このことも、リソースに乏しいコミュニティの支援強化に迅速かつ持続的な効果をもたらしています。たとえば、南アフリカ共和国ケープタウンのH3Dセンターでは、Ersiliaの支援により、100人の研究者がそれぞれ10のAIモデルを管理して感染症対策に取り組む独自の研究所を設立しました。
Ersiliaの共同創設者兼CEOであるGemma Turon氏はこう話しています。「何年も続く新型コロナウイルス感染症のパンデミックから、私たちは、感染症に国境はないという大切な教訓を学びました。しかし、科学的知識には国境があります。今日の研究所では顕微鏡が活躍していますが、将来の研究所ではAIが活躍することになるでしょう」。Ersiliaは、国境を越えた知識の共有を促進することにより、研究者や医療機関が感染症例を監視し、コミュニティが感染の急拡大に事前に備えるとともに、感染症に対するレジリエンスを強化できるようにするための支援も行っています。
2人の共同創設者は今も、発展途上国にすべての負担を押し付けることなく、世界中の国々が世界レベルの研究を行える仕組みを整えることに精力を注いでいます。Ersiliaは、100人を超えてなお増え続けるオープンソース貢献者のグローバルなコミュニティを育んでいます。そこで貢献者らは時間と知識を共有して独自のAIモデルを開発、展開しています。こうしたAIモデルを利用することで現場の医療研究者は研究自体に専念できるのです。
Splunkの支援により、Ersiliaはこのコミュニティを拡大し、感染症や顧みられない病気の研究にすぐに使えるAIモデルの種類をどこよりも多く提供することで、世界的な健康の公平性向上に向けて着実に成果をあげています。「地域ごとの事情に配慮しながらベストプラクティスを取り入れることで、健康格差の解消が加速するはずです」とDuran-Frigola氏は期待します。「それは最終的に、国を問わずより安全で、より健康で、よりレジリエントな社会を構築することにつながるのです」